Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

杉本 大輔 准教授 WasedaX講座 公開記念
~須賀副総長×杉本准教授による対談~

WasedaX対談
須賀副総長×杉本准教授
<新規講座>Sports Injury Prevention

早稲田大学では2015年9月より、大規模公開オンライン講座(MOOC:Massive Open Online Course)の提供機関であるedX(米国ハーバード大学とMITが創設)を利用し、さまざまな講座を世界に向けて配信しています。

スポーツ科学学術院 スポーツ科学部の杉本 大輔 准教授は、2021年より「Sports Injury Prevention」という講座を担当されています。この講座で伝えたい思いについて、須賀晃一副総長にお話を聞いていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場の声を聞き、実際に役立ててもらえる研究を目指す

須賀:杉本先生はどんな経緯で今のご専門に進まれたのですか?

杉本:最初は、怪我をしたスポーツ選手を助けたいという思いでアメリカの大学に留学しました。卒業と同時に、現地でアスレティックトレーナーの資格を取り、10年ほどあちらで仕事をしているなかで、大きな怪我が原因で引退したり成績を残せなくなってしまうアスリートを、本当にたくさん見てきたんです。それで、そもそも怪我を予防することはできないのかと考えるようになりました。

怪我の予防には、競技や性別、年令などによって違いがあります。それぞれの状況で予防策も少しずつ変えていく必要があるというのが、最近の研究の流れですね。細かく見れば見るほど対策の立て方もいろいろあるので、研究を通してそれを探って見つけて、そして実践していくというところに、やりがいを感じています。

須賀:先生の研究は、体の仕組みなど多様な知識が必要になりそうですよね。他の領域の方々とも一緒に研究を進めていくのですか?

杉本:もちろん、この研究はひとりではできません。それぞれの競技で、どういう怪我が、どのタイミングで、どこの部位に、どのぐらいの頻度で起きるのか。現場のスタッフや選手達からさまざまなインプットをいただきながら進めていくことが多いですね。研究して論文を書いてジャーナルに投稿して終わりではなくて、それを現場のコーチや選手に使ってもらうところまで持っていきたいという思いがあります。アメリカにいた頃はそれができていたんですが、帰国して2年足らずの状況でまだ十分ではないので、今後力を入れていきたいところです。

女性は特に、精神的ダメージが強いケースも

須賀:特に研究の対象とされている競技はあるんですか?

杉本:女性の膝、特にサッカーやバスケが多いですね。女子の場合、怪我をするのは膝か足首が圧倒的に多いんです。足首は治って復帰する選手が多いんですが、膝の場合は手術が必要になるほど大きな怪我になってしまうこともあります。それで、選手としての活動を諦めざるを得ない選手達をたくさん見てきました。

須賀:怪我の回復後に同じ競技を続ける場合、また怪我をしないための予防というのは、最初の段階の予防と何か違いがあるんでしょうか?

杉本:女子選手は膝など一度大きな怪我をして手術をすると、同じレベルに復帰できるのは半分ぐらいです。残りの半分は復帰を諦めるか、頑張っても同じところには到達できないということです。男子選手は、プロスポーツを扱った最近の研究によると、復帰まで2年かかると言われていますが、プロで2年かかると仕事を失ってしまいます。ですから「この選手は復帰してちゃんと同じレベルでまた活躍できます」と言えるようにするためにも、再発防止がとても大事です。

それと、メンタルのケアも大事です。特に女性の場合、精神的にもすごく傷ついてしまうケースが多いです。個人差もあってもあって難しいのですが、そこをどうケアしていくかも今後の課題ですね。

メンタルをケアするには、怪我した選手を孤立させないこと

須賀:メンタル面を支えるには、どんなことが有効なのでしょうか?

杉本:病院などの施設でリハビリをしている間、怪我をした選手が、病院や施設でリハビリをしている間に、練習や試合が進んでいくので、怪我をした選手はひとりぼっちになり孤独を感じてしまいがちです。できるだけ練習や試合に顔を出したり、仲間が練習をしている横でリハビリをするとか、バスケの選手ならバスケットボールを使ってリハビリをするとか。まわりができることとしては、ミーティングや食事などに呼んであげるのもよいでしょう。最近はSNSでやり取りもできるので、昔ほど孤立することもないのかなとは思いますが、そんな工夫をしてなるべくひとりになる場面を作らないように心がけています。

須賀:もう一度仲間といっしょに頑張りたいという励みにもなるでしょうし、仲間の一員として何かサポートできるという自分の存在意義みたいなものも、大きいのでしょうね。

杉本:そのとおりです。奨学金をもらっていたり、五輪を目指せるレベルだったり、そういうステイタスの高い選手ほど、怪我によって自分のアイデンティティ自体も危うくなってしまう。「自分ってなんだろう」「どうやって生きていけばいいんだろう」と自分に問いかけて哲学的になっていく選手もいます。本当にメンタルケアは体のケアと同じぐらい大事です。

「スポーツの怪我や障害は予防できる」と伝えたい

須賀:この講座を作るにあたって、どんなことに留意されましたか?

杉本:今回作った6つのセッションすべてに、世界の現場で活躍されているエキスパートの方の方達に協力をお願いしています。早稲田という学術的なところから偉そうに理論を言っているだけではなくて、現場の声としての予防の価値が伝わるようにという意図です。6名の方は私とつながりのある仲間のような方なので、快く引き受けていただけました。

須賀:現場を知る方だからこそ予防の重要性を強く認識し、知識を広めることの意義を強く実感されているのでしょうね。最後に、この講座を受ける方に伝えたいメッセージをお願いします。

杉本:まず、スポーツの怪我や障害は、予防できるんだということですね。この講座では、その背景にある科学を学んでいただきます。普段こういう分野と遠いところにいる方にも興味を持って最後まで学んでいただけるように、できるだけ専門的になりすぎず、丁寧に親切に作ったつもりです。とても大変ではありましたが、今はやってよかったと感じています。

須賀:edxの紹介ビデオで「I have a solution.」と語っている先生のたのもしい笑顔が印象的でした。ぜひ、多くの方に学んで役立てていただきたいですね。

 

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Sports Injury Prevention | edX

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