Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

動画の中の教員と一緒に問題を解く、
特殊な解き方まで解説する。
各自のレベルに合った学びが得られる授業を工夫

2020年度秋学期ティーチングアワード受賞
対象科目:応用簿記(2)
受賞者:吉野 真治

 

会計研究科で簿記論の一つ「応用簿記(2)」を担当する吉野真治先生。

当初からフルオンデマンド授業のため、履修者と顔を合わせるのは最後の教場試験のときのみだ。

しかし、履修者と同じ目線で練習問題を解く、計算方法の基礎にある会計基準の考え方も

紹介するなど、動画の作り方を考えることで、顔を知らなくてもさまざまな履修者が

それぞれの学びを得られるような授業を展開している。履修者目線に立って構成する、

授業動画の工夫などを聞いた。

授業動画の内容を絞り込むことで、難易度が高くても付いて来られない履修者を作らない

新型コロナウイルス感染症の蔓延により、2020年度春学期の着任当初からオンラインで授業を行っている吉野先生。「応用簿記(2)」を担当するのは春学期に続き2回目で、秋学期は全部で45名が履修した。公認会計士試験の短答式試験免除科目になっていることから、公認会計士試験の合格を目指している人が大半だという。「ただ、人数は少ないですが留学生,企業でお仕事をされている方,官公庁等から派遣されている方もいて、さまざまな目的、レベルの院生が学んでいます」。

オンライン授業には、大きく分けてリアルタイム配信とオンデマンド配信があるが、吉野先生はフルオンデマンド形式での配信を選択した。「簿記論の授業は、オンデマンドと相性がいいからです。応用簿記は,簿記論の中では比較的難易度が高いと言われている論点を学習します。また、組織再編会計のように扱う資料が膨大な論点では、対面授業だと,教員が指示した資料をなかなか見つけられなくて、付いて来られなくなる学生もいます。オンデマンドなら,モニターを通して教員と同じ目線で資料を確認することができ,また,講義を繰り返し見ることができるので、簿記論が苦手な学生であっても,手も足も出ないような状況にはなりにくいと考えています」。

また、必要な資料だけを絞り込み、授業に盛り込む内容はなるべくシンプルにするよう心がけたという。「例えば、第5回の講義で扱う「ストック・オプション等に関する会計基準」や適用指針は分量が非常に多い。それらをすべて資料として配って解説すると全体像がぼやけてしまうので、本質を理解するのに必要な規定や問題だけをピックアップしました」。

「一緒に問題を解く」⇒「自分で解く」の繰り返しで、基礎力はもちろん応用力も身につく

授業では、まず毎回のテーマについて関連する会計基準や適用指針の解説をしてから、次に基本的な練習問題を一緒に解いていくという進め方をした。「画面に表示した資料を一緒に見ながら、効率的に財務諸表を作成するためにはどうすればいいのかなど、学生と同じ目線で問題に臨むように意識しました」。「一緒に解く」ことも、躓いたり付いて来られなくなったりという学生を作らないための工夫だ。

「その後、時間を空けずに、少し条件を変えた問題を今度は学生自身に解いてもらいました」。出題したところで動画を終了し、解説は次の動画で行うようにした。学生授業アンケートでは、最初の説明に加えて、練習問題を一緒に解くことで知識をインプットし、次は自分で解くことでアウトプットができる点を評価する声があった。「全ての論点を網羅するには時間が足りませんが、基本となる部分をしっかり押さえておけば、あとは少々ひねった問題が出てきても自分で対応できると考えてこの方法を取っています」

また、「履修者のレベル感」についてはかなり気を配ったという。すでに述べたように、会計士試験の合格を目指している院生が大半だが、「その中にも、論文式試験合格までスムーズにいくだろうというレベルの人もいれば、計算問題が苦手で短答式試験の勉強で躓いている人もいます。社会人の学生や留学生も、それぞれ違ったレベルです」と吉野先生。そこで、どんなレベルの履修者であっても、各々の学びがあるような授業を目指した。

計算問題が苦手な履修者には、前述のような「一緒に問題を解く」方法が学びになる。一方、講義の中では「別法」と呼ばれる別の解き方を紹介したり、会計基準の原文の解釈を示したりなど、レベルが高い履修者には一段上の学びを提供した。学生授業アンケートでは、「総合的に見てこの授業は有意義だった」や「この授業の内容をよく理解できた」という項目で高い評価を受けたが、どのレベルの学生にとっても学びがあったことが理由ではないか、と吉野先生は考えている。

メールで届いた質問と回答を共有するために、春学期⇒秋学期で動画をすべて再収録した

大学の常勤教員として教えるのは、2020年度春学期が初めてだったという吉野先生。しかし、以前から公認会計士試験の受験指導をしていたことがあり、何を教えるべきかで迷うことはなく、春学期のオンデマンド授業の動画収録はスムーズに行えたという。しかし、秋学期を始める前に、動画はすべて収録し直した。その理由は、春学期は授業後にメールなどで質問が数多く寄せられたためだ。

「春学期では,履修者からの質問に対しては,メールやメッセンジャーで個別に回答していました。ただ、質問が多かった論点は,講義における私の説明がわかりにくかったのだと思います。心理的なハードルが高くてメールでは質問をしづらいと感じる人もいるため、質疑応答の内容は講義動画の中で他の履修生にも共有すべきと考えました。」

動画の再収録の際には、他の学者の書籍なども参考によりわかりやすい説明を心がけた。秋学期は、講義の解説内容に関する質問は大幅に減ったということで、「動画を再収録した一定の効果はあったと考えています」。ちなみに、2021年度の春学期は、新しい会計基準など、最新のトピックに関わる部分のみを収録し直したそうだ。

今後については、「会計研究科の方針もありますし、講義のコマ数も限られていますが、可能であればもっと実務的な論点についても取り上げていきたいと思っています。会計士試験に出題されるかどうかだけではなく、財務諸表の数値を作り上げていく面白みを伝えられるような内容を増やしていきたいですね」。公認会計士試験を目指していない学生もいる中で、実務に就いたときに役立ち、この科目での学びをベースにさらに独学で学んでいけるような授業を目指している。

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