Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

質的研究法を用いた研究論文の完成をゴールとした授業で、
ディスカッションと相互評価を重視。
学び合いの場を提供できた

2020年度秋学期ティーチングアワード総長賞受賞
対象科目:質的研究方法入門1 02クラス
受賞者:太田 裕子

 

質的研究法を用いた調査を行い、研究論文を完成させることをゴールとしたこの授業では、

学生同士のディスカッションや相互評価を重視して授業を進めている。違う分野を専攻する

修士課程・博士課程の学生たちが、お互いの論文を相互評価シートの評価基準に基づき評価しながら、

論文の書き方を学んでいく。この手法によって学生同士の自発的な学びが促進され、

准教授のコメントのきめ細かさもあり、学生からの高評価を得た。

毎回の授業で各章を執筆、最終的には研究論文を完成させることが目標

この科目は、グローバルエデュケーションセンターが設置する科目で、修士課程1年以上の学生を対象とする。質的研究法を学ぶことと論文を書くことを2本の柱として、授業が構成されている。学生は、質的研究法を用いた研究を実際に行い、研究論文(最終レポート)を作成することを通して、質的研究法の基本的な考え方や論文の書き方を学ぶ。論文の完成に向けて、毎週、章ごとの執筆と検討を進めていく。受賞対象となったのは「質的研究方法入門1 02クラス」であるが、「質的研究方法入門1」「質的研究方法入門2」を通して1つの論文をそれぞれの学生が完成できるように設計されている。2020年度秋学期の履修者は12名程度で、さまざまな分野を専攻する修士課程・博士課程の学生がおり、さらに社会人経験がある者や、コロナ禍で日本に来られず、母国から参加していた留学生など、多様なバックグラウンドを持つ学生たちが学んでいた。太田准教授は2009年に早稲田大学に着任して以来この授業を担当しているが、授業で行っていた活動や解説をまとめ、2019年に『はじめて「質的研究」を「書く」あなたへ-研究計画から論文作成まで』(東京図書)を出版した。2020年春学期からこの本を教科書として使用している。2020年度はオンライン化に対応するために、様々な変更を加えたが、学生たちから「総合的にみてこの授業は有意義だった」が6.0満点中満点の6.0点など、非常に高い満足度を得られた。

事前課題に基づくディスカッションと相互評価シートによるピアレビューを重視

太田准教授は、「1人で学ぶのではなく、相互に学び合う」ことを重視する。授業では、毎回、履修者同士がお互いの研究計画や論文に対してリアルタイムでディスカッションをする時間を多くとった。教科書を1章ずつ読むという事前課題を出したため、出版以前は授業中に説明していた内容を、学生たちは授業前にある程度理解することが可能になった。そこで、リアルタイム授業では、准教授による講義を、教科書の内容に関する質疑応答とディスカッションに置き替えた。講義の時間が減ったことで、各自の研究に関するグループ・ディスカッションやペアワークにたっぷりと時間を取ることができた。具体的には、Zoomのブレイクアウトルーム機能を活用して、グループで、提示された問いに答える形で、各自の研究の内容や課題を検討しあう。授業後の課題では、論文の指定された章を書き、Moodleのフォーラム機能を活用して投稿する。翌週の授業では、それをペアとなった学生同士でレビューをし合い、評価シートおよび口頭で評価を伝え合う。学生のグループやペアは特に固定せず、あえて毎回違う学生と組むように指示した。レビューでは、あらかじめ准教授によって評価項目が提示された「相互評価シート」(ルーブリック)を用いる。学生は項目ごとに〇・△・×で簡単な評価を行い、その後、口頭で対話しながら、書き手への質問や助言を行う。論文の各章には、履修者同士の相互評価だけでなく、教員からも個別フィードバックを行い、一人ひとりにあわせた助言を行った。「コメントが多く、細かくなると学生が消化しきれなくなるので、なるべくポイントを絞ってコメントしました」。

さまざまな背景を持つ履修者同士だからこそ、共に学び合うあたたかい雰囲気が生まれた

一部の学生間では、この授業は「厳しいけれど最後までやり遂げられれば論文の書き方がわかるから、修士の1年で履修するといい」と評価されているそうだ。「私自身が修士課程で学んでいた際、こういったことを知りたかったと感じたところから組み立てました。この授業をペースメーカーとして毎回の授業課題に取り組み、最終レポートまで完成できれば、一通り論文を書くという経験をすることができます。一本、論文を完成させた経験があるかないかで、修士論文を書くときに大きな違いがあると思うのです。この授業で完成できる論文を土台にして、次につなげていってほしいと願っています」。

オンライン授業になったことで、対面授業の効果を保てるか不安があったと太田准教授は語る。しかし、Moodleのフォーラム機能を活用することで、学生がペア以外の学生のレポートも参照できる、相互評価の履歴が残る、フィードバックをオンラインでできる等、オンライン化によって実現できたメリットもあったそうだ。特に、オンラインでの学びが主になったこの期間に、本授業を通してあたたかく支え合う仲間ができ、学生の心のよりどころとなったということが非常に大きな成果につながったのではないかと准教授は考えている。「履修者同士で15週間、建設的意見を交わし合ってきたので、最終レポートでは、お互いの論文の完成をみんなで喜び合いました。専攻も違い、さらには修士、博士とレベルも違う履修者が集まるからこそ、他者に分かりやすく伝えるために自分の研究を再吟味できますし、分野を超えた共通のテーマを見出し、共に学び合うこともできました。学期が終わった後も、学生同士で自主的な勉強会を開こうという話が出るほどです。学生たちは、それまでの人生で築いてきた深い経験を豊かに持っています。それをアカデミックな言葉で表現する手助けができるのは、私にとっても喜びです。今後もMoodle等のオンラインツールを活用して、事前に学習できるコンテンツも増やしながら、ディスカッションを重視した学び合いの場づくりに力を入れていきたいと考えています」。

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