Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

オンデマンド化と小テストで知識が定着し全体を底上げ。
ディスカッションの取り入れ方が今後の課題

2020年度秋学期ティーチングアワード受賞
対象科目:社会心理学Ⅱ
受賞者:膳場 百合子

 

2020年度春学期にも本賞を受賞した膳場教授。前回は大人数クラスの科目だったが、

今回は少人数を対象にした別の授業での連続受賞となった。未だ対面授業が行えないなか、

ディスカッション中心で運営していた授業スタイルは若干変更を余儀なくされたものの、

講義のオンデマンド化や小テストの実施で、知識の定着には効果的との手応えも得られた。

 

講義の前に、用意した課題を考えさせる

理工学部で選択必修科目として行われているこの科目は、春学期の受賞対象となった「社会心理学Ⅰ」を履修した学生のみが受講できるものだ。「社会心理学Ⅰの授業は通常でも250名程度(オンラインとなった2020年度は300名以上)とかなり履修生が多いのですが、秋学期に行うこの社会心理学Ⅱの授業は少人数で行うことを想定しています」。

これまで対面で行っていたときは受講生が20~30人程度で、ディスカッションを中心として授業を組み立てていた。「たとえば、<部活の合宿先を3つの候補地から決める場面で、メンバーが揉めた場合、あなたがとりまとめる立場だったら意見をまとめるためにどんな工夫をしますか?>など、学生にとって身近で具体的な状況を設定した問題を提示します。配布した用紙にまず自分の意見を書いてもらってから4人程度のグループ内でシェアしてもらいます。そして、意見交換してもらった後、グループ内でどんな意見が出たかを代表に発表してもらうという形で進めていました」。

このアクティビティは授業の冒頭で行うことに意味があると考えている。「講義を聞く前に各自で考えて意見を出し合ってもらうことで、自由な意見が幅広く出てきます。特に理工の学生は学んだ内容を重視し、それを応用して考える傾向が強いので、先に講義を聞いてしまうと、思いつくはずだった考えが出にくくなってしまう可能性がありますから」。

ディスカッションに入る前に、一人ひとり自分の考えを文章で書かせるのも工夫点のひとつだ。「心理学の比較文化研究では、東洋人が西洋人に比べ、文脈全体に注意を向けやすく、要素間の関係性にも注意を向けやすく、思考が複雑で、思考しながら同時に言語化するのが苦手であることが知られています。この授業の履修者は東洋人なので、少し時間を与えてまず自分で考えをまとめてから人に伝えるプロセスが必要ではないかと思い、このスタイルにしました」。

フルオンデマンドとなった今回は、ディスカッションの代わりに一度動画を止めてひとりで考えてもらう時間を設けた後、続く動画で昨年度までの学生が答えたデータを紹介する方法を取った。「次のステップに進むタイミングは任意になるので、あまり深く考えずに進めてしまう可能性はあります。それでも、過去の学生の意見を参考に自分の考えを発展させていける面もあるので、一定の効果はあると考えています」。

ディスカッションをできなかったデメリットはあるものの、講義をオンデマンド化したことにはメリットもあったと感じている。「今回学生からは、情報をもれなく得られてうれしいという反応がありました。教材は同じなのに対面授業のときにはなかったこと。何回でも巻き戻して聞いたりできることで、すべてを消化できたような満足感があったのかもしれません」。

Moodleの小テストで学生は自分の理解度を確認できる

小テストを行ったことも好評だった。「従来も学生から小テストをやってほしいとの声はありましたが、ディスカッションもやっているし最後に一度試験をやれば十分と思っていたんです。今回はオンデマンドとなったことで学生のペースメーキングの必要性を感じ、2、3週に1回小テストを行いました。学生は、点数がつくことで自分の理解度がわかり安心するようです。結果的に、個人のモチベーションに関係なく全体を底上げする効果があったように思います。Moodleで行う小テストはまったく負担ではないので、今後対面授業に戻ったとしても、続けて行くつもりです」。

学期末の試験は行わず、代わりにレポートを提出させた。普段教場で行っていた試験は、事前に提示した9つのテーマの中から2つの出題とし、事前に準備をさせたうえで何も見ずに論述させることで、習得した知識を使える形で獲得できているかを見る内容だった。一方、今回課したレポートは「若者の反社会行動について自分の経験や見聞きしたことを取り上げ、授業で学んだ理論に関連した考察を行う」というものにした。「身近でありながら深刻で考え甲斐のあるテーマだったので、学生たちはより充実感を感じたことが、高評価につながったのかもしれませんね」。

オンデマンドを取り入れた反転授業は以前から関心があったが、前回本賞を受賞したことで、その気持ちを後押しされたと振り返る。「自分でもこれでいいのかなと迷いながらやっている部分もありましたが、とりあえず講義の部分はこれで大丈夫と思えることで、学生たちをもっと能動的に参加させることに時間やエネルギーを向けていけます」。

ディスカッションで交流できる時間をつくっていきたい

今後は、オンライン授業を強いられる状況が長引いたとしても対応できるような、オンラインの良さを活かす授業を模索したいと考えている。「ディスカッションは楽しいし学生も好きだと思うのでぜひ取り入れたいです。基本はオンデマンドでも、間にリアルタイムでディスカッションの回を設けるというのもありかもしれません」。

教養科目であるこの授業では、学部学科を超えてさまざまな学生が集まる。「早稲田の理工という特殊な場で共に学ぶ者同士だからこそ分かち合える思いがあるはず。それで励まされるところもあると思うので、できるだけ交流してもらえる時間を作りたいです。私自身も、パソコンに向かってひとりで話すよりは、学生と一緒に考えたり交流したりする時間を増やしていきたいですね」。

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