Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

2つの授業で実践的に日本語教育を学ぶ。
自らの学びを深めつつ、学習者の「支援者」を目指して欲しい

2020年度秋学期ティーチングアワード総長賞受賞
対象科目:日本語教育実践研究(6)
受賞者:小宮 千鶴子


日本語教育実践研究(6)は、日本語教育における語彙指導を実践的に学ぶ「実習クラス」と
セットで

受講するという特徴的な科目である。2020年度秋学期はいずれもオンライン授業で行ったため、

実習クラスは従来実施していたグループ活動や発表の具体的な手法は変えざるを得なかった点あったが、

オンラインならではのメリットもあり、総合的に本科目の履修者から高い評価を得た。

実習クラスの日本語学習者と交流しながら、本科目の履修者それぞれが主体的に学べる授業を目指している。

実践研究と実習クラスを並行して受講。実際の教育活動を通じて指導法を実践的に学習

今回受賞対象となった本科目は、大学院日本語教育研究科の設置科目(水曜4限)であり、2020年度秋学期は9名の院生が履修した。9名の内訳は元日本語学習者の留学生5名と日本語母語話者4名で、日本語教育経験のある者もない者もいた。日本語教育研究科のカリキュラムは、「理論科目」「実践研究」「演習」の3本柱で構成され、「実践研究」の履修には、実習クラスへの参加が義務づけられている。本科目の実習クラスは、早稲田大学日本語教育研究センターの「使えることばの増やし方5-6」(火曜3限)で、履修生はそれぞれが学習者のグループを担当することにより、実際の教育活動を通じて語彙の指導法を実践的に学んでいく。2020年度秋学期は、いずれのクラスもオンライン形式で行った。実習クラスの学生は、本学に在籍する留学生で、日本語レベルは中級後半~上級初めに相当する。学生数は日本語教育プログラム生と学部大学院生の30名であった。コロナ禍により来日できなかった学生も多く、日本のほか中国各地やシンガポールなど多様な環境からオンライン上のクラスに参加することとなった。

グループ活動や発表の手法の工夫により、院生および実習クラスの学生の学びをサポート

院生はオリエンテーションを受けて履修登録したあと、火曜3限の実習クラスに参加し、Zoomによる同時配信のオンライン授業で毎週メンバーが異なる学生グループを担当して、「家族を守る/森を守る」など連語による動詞学習の支援をする。実習クラスに参加した後、授業参加レポートを作成し、Moodleのフォーラムに提出して共有する。水曜3限の実践研究のクラスでは、実習クラスで担当した学生からの質問や担当者としての気づきなどを中心に話し合う。実習クラスの第6回からは院生が担当する動詞の用法説明や練習問題などスライド教材を作成し、各人4回教壇実習も行った。担当者は本科目のクラスで教材案を発表して質問やコメントを受け、週末を利用してMoodleに修正案を発表してさらにコメントを受けて教材を確定する。実習クラスで教壇実習した後は、本科目のクラスで振り返りを行う。このように週2回、2つの授業に参加して実際に学生を担当しながら中級動詞の教え方や授業運営の手法を学んでいく。

同科目は2016年度秋学期のティーチングアワードも受賞しているが、当時とは大きく変わった点がある。

1点目は実習クラスのグループ構成の仕方である。従来は、学期の前半と後半のグループが固定で、後半グループは院生と学生に興味のあるテーマを調査し、その結果に基づいて決定した。固定グループのため、院生は担当する学生の学習の状況や性格などをじっくり観察し、後半は「音楽」などのテーマについて学生の連語収集やグループ発表の支援をした。しかし、2020年度は、オンライン授業になったので固定グループによる学習支援が困難になり、毎回Zoomのブレイクアウトルームでランダムにグループを作り、3~4人の学生を1人の院生が担当した。グループ構成は毎回異なることになったが、院生からは「いろいろなタイプの学生を担当できて勉強になった」との声があり、学生からも「さまざまな学生と知り合うことができた」「会話に自信が持てた」など好評だったという。

2点目は実習クラスでの発表方法である。以前は教室で対面してグループごとに好きな連語を発表したが、2020年度はオンライン授業でグループ発表が困難になったため、個人発表に切り替えて一人4分で発表をしてもらった。院生は発表まで学生の発表準備を支援した。以前は教室内で行っていたため、実物を持ってくる、音楽を流す、視線を合わせる、といったその場で見ている人に分かりやすい工夫が行われたが、オンライン授業になり、工夫するポイントが変わったという。学生は発表スライドを作成する際に院生の教壇実習の教材スライドを参考にし、院生も教材作成の経験をもとに、イラストや文字などについてアドバイスし、オンラインならではの注目の集め方を教え始めたそうだ。

語彙学習の主体は学習者。その支援をする「ファシリテーター」を育てたい

当初は教授も院生も「オンラインで会話できるのか」と心配していたそうだ。例えば、授業中に配布する予定だった資料が共有できなかったというような小さなトラブルも経験した。院生からの意見に応じる形で小宮教授が改善を加えていき、事前に資料を共有しておくなどのトラブル回避のための工夫をしておく余裕も出てきた。「今では何千キロも離れていることを忘れてしまいそうになるくらい滑らかに会話が進むようになりました」。

「語彙学習は学習者にとってどうしてもつらい、苦しいと捉えられがちです。教える側にとっても同じです。ですが、本来『表現できる』ことはとてもうれしいことのはず。日本語学習の主人公は学習者です。それぞれが自分に必要な表現を自分で集めて主体的に学んでいってほしい。教える側には『学習者に考えさせなさい』、『教える人』ではなく『支援者』『ファシリテーター』を目指すように、といつも言っています。履修生も理論では分かっているのですが、実際にやってみて初めて実感するのです」。

語彙学習におけるオンラインを利用するメリットとして、何度でも見られる、練習問題に取り組めるという自力で効率的に学習できる部分も多い。それをふまえ、学習者が、自分が何が分からないのかを分かった状態で授業を受けられるようになると、その先伸びる余地が大きいのではないかと教授は語る。「今後コロナ禍前の状態に戻ったとしても、オンライン授業を経験して得た長所を活かし、対面でないとできないこととのメリハリをつけていくのが理想ですね」。

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