Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

当初想定していた文字コミュニケーションが中核をなす授業展開とは違っていたが、Zoomによるライブ授業やグループ活動の実施などにより、授業実践に一定の手応えを獲得。
学生からの高評価に繋がった

2020年度春学期ティーチングアワード受賞
対象科目:日本語教育実践研究(2)
受賞者:蒲谷 宏

この科目では、文字コミュニケーションが中核をなす授業実践、

特にMoodleのフォーラムでのディスカッションによって展開される授業を想定していたが、

実際にはZoomによるライブ授業が行われたこともあり、また、履修生たちの負担などもあったことで、

必ずしも想定どおりではなかった。しかし、ライブによる授業が行えたことで、

授業内容の説明や理解、グループ活動の活性化など、対面での授業以上の利点もあったという  

教育実習のような形で授業を行い、その内容をふりかえりながら実践的に研究する

この科目は大学院日本語教育研究科の設置科目(金曜4限)であり、授業では、「待遇コミュニケーション教育/学習」について、実際の教育活動を通じて学ぶ。GEC設置オープン教育科目である「敬語コミュニケーション論」クラス(金曜3限)を実習の場として、受講生の敬語表現・敬語コミュニケーション・敬意コミュニケーション・待遇コミュニケーションに関する意識や能力を高めるために、どのような教育/学習を行えばよいのかを実践的に研究した。それとともに、具体的な教案、教材の作成、教育/学習の方法論などについても、検討する。つまり「教育実習」のような形で金曜3限に大学生たちに授業をして、それについて続く4限でふりかえりながら学んでいくという、方法を採っているのである。

Zoomによる授業はライブ感覚で高評価、グループ活動も活性化できた

授業をオンラインで行うことが決まった段階で想定していたのは、Moodleの「フォーラム」を活用し、ディスカッションをしていくことだった。「文字」によるコミュニケーションとしての「やりとり・伝え合い」を促し、授業を活性化させていくことを考えていたわけである。それは、オンライン授業を行う環境がどこまで整えられるのかが不明であったことや、ライブ授業に参加することが困難な受講生たちもいると予想されたことなどに基づく判断であった。

また、従来以上に、事前に資料を提示しておくことや、授業に関する様々な事項を事前にアナウンスしておくことなどを心がける必要性を感じていたため、「実践研究」と「実習クラス」ともに関連する資料を事前に提示するなどして、通常のガイダンスで行っていた内容を補う方策を工夫した。

授業開始後、事前に想定していたことと最も大きく異なったのは、活動の中核を文字コミュニケーションで行う、という点であった。とはいえ、フォーラムには、すべての授業時間後に受講生ほぼ全員からの書き込みがあり、「実践研究」においては、毎週の授業実践の「ふりかえり」はフォーラムへの投稿によって行われていた。また、「実習クラス」においても、毎週の授業はZoomによって行われ、多くの受講生が受講していたのだが、そこに参加できない受講生のことも考慮し、授業参加度はフォーラムへの書き込みを中心に評価することにしたため、ほとんどの受講生が期待以上に投稿していた。その意味では、フォーラムが大いに活用されたわけで、想定どおりだったともいえるが、文字コミュニケーションが中核になって授業が展開していたかというと、必ずしもそうではなかったように教授は感じているという。

「思った以上に、書き込みによるやりとりには時間的な制約もあり、受講生たちも、他の授業と併せ、毎週の『書くという行為』にかけた時間が多かったのでしょう。『実践研究』の履修生も、『実習クラス』の授業担当者として、苦労しながらも『やりとり・伝え合い』を試みたと言えますが、必ずしもそれらの活動を中核として授業が進んだとは言えなかった。これは、もちろん反省点の一つでもあるのですが、一方で、今学期の状況からすると止むを得ないことだったと言えるのではないかと思っています」。

その他にも、さまざまな事態が立ち上がり、その時々の経験として調整や改善をしつつ対応してきたそうだ。ツールの操作上の問題から、コミュニケーション活動全体のあり方に至るまで、すべてが従来とは異なる事態であり、そこで生じた課題を解決しようとすること自体がすべて想定外の出来事だったと言えるのではないか、と教授は語る。

その一方で、教授は従来の授業が改善された点も多くあると感じているそうだ。Zoomでのライブ授業では、機能をできる限り活かし、共有したPPT資料での説明もわかりやすいものとなっていたように思えるし、Zoomの機能の一つであるブレークアウトセッションによるグループ活動も、細かい操作上の問題はありつつも、グループの組み替えが簡単に可能になり、従来以上にグループ活動が活性化したと思っているそうだ。

「実習クラス」の受講生たちからは、特に「実践研究」の履修生たちが「主担当」となって行った授業について、非常に好意的に受け止められ、ライブ感覚に溢れた授業に対する高い評価が得られたそうだ。その点では、「実践研究」の履修生たちにとっても、「実習クラス」での授業実践に一定の手応えはあったと感じているという。

オンラインだからこそ可能になった点も。今後は新たな授業形態を見出していきたい

教授はオンライン授業の可能性や課題を、授業実践を通じて確認してきた学期になったと考えている。「もちろん、オンライン授業では、対面授業でなくては味わえない交流が持てないことや、教室場面だからこそ見られる受講生・担当者の実際の活動などが体感できない、という問題点のあることは言うまでもありません。しかし、オンライン授業だからこそ可能になった点もあるわけで、現時点では、対面授業かオンライン授業か、オンデマンド方式かライブ方式か、あるいはハイブリッド方式なのか、どれが良いのかを問われたとしても、いずれにも一長一短があるという素朴な感想を述べるに止まりますが、今後、その一長一短を整理し、新たな授業形態を見出していくことが重要なのだと思います」。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/ches/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる