Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

未解明の学問を学生とともに学ぶ。学生が「自分ごと」として捉え、「ツボにはまる」分野を見つける場に

2020年度春学期ティーチングアワード受賞
対象科目:脳神経生理・病理学
受賞者:坂内 博子

脳神経疾患の生理・病理学の基礎知識を学ぶこの科目は、

先進理工学部の電気・情報生命工学科の学生が多く履修している。

つまり、生命科学を志す学生のみならず、将来電気系、情報系に進む学生も多く、

教授は幅広い興味を持った学生に、自分なりの関心を持ってもらうことに工夫を凝らした。

複数のチャネルで質問・意見を受け付け、その内容を授業に反映させたことや、

身近な話題と結びつけたことなどが高評価を得た。  

脳神経疾患の病理と最新の治療法を自分ごととして考え、学ぶ授業

この科目は先進理工学部の電気・情報生命工学科に属する学生の専門選択科目であり、生命科学を志す学生のみならず、電気系、情報系を専門とする学生が多く履修している。そのため、学生の興味の範囲が幅広いことが大きな特徴である。2020年度春学期の履修者数は100名以上で、3年生が大半だった。学習する内容は、脳の「正常」(生理)と「病理学」(病理)という、脳神経生理・病理学の基本知識を学ぶ。履修者たちは、例えば将来、医療機器メーカーに就職して、診断の機器開発を担当する可能性もある。CTやMRI、X線などの技術も物理学の応用で可能になった技術なので、現在電気系の学問を学んでいる学生たちがいつか「あの知識、生命の測定に使えるかもしれない」と気づくことになるかもしれない。そのためには、現在どうやって計測しているかといった基礎知識を涵養することを目指した。Brain Machine Interfaceや再生医療などの最先端の脳神経治療に関しても紹介しながら、学生が自分ごととして考える授業であるよう工夫したことが大きな特徴である。

複数のチャネルで学生の意見を汲み取り、オンデマンドで授業を運営

授業運営にあたり、坂内教授が目指したのは「自分ごと」として捉える、常に「問い」を持つ、「最先端」が見えるという授業だった。自分ごととして捉えてもらうために、『8年越しの花嫁』『彼女が目覚めるその日まで』『宇宙兄弟』といった、学習内容に関連していて最近話題になった映画、漫画、ニュースを紹介して関心を引き出すように心がけた。「この作品は知っていた、とレポートで反応を返してくれる学生もいました。ですが、漫画などを例に出すまでもなく、脳はみんな持っていますので、自分はどうして考えるんだろうとか、脳を100%使ったらどうなるんだろうとか、私の授業のテーマが自分ごととして捉えやすいものではあったかと思います。課題の設定を広くとって『あなたはどう思う?』と問うことによって、まずは自分ごとにして『ツボにはまる』分野を見つけてくれることを目指しました」。

授業の運営はすべてオンデマンドで行った。2020年春の授業開始時点では、通信の負担など不明な点が多かったため、学生の声を聞き、スマートフォンからでも授業が受けられるようにとの配慮をした。具体的には、Waseda Moodle、LINEのオープンチャット機能、E-mailの3つを主なツールとして利用した。Moodleはアンケート機能を常にオープンにし、質問や要望を受け付けるとともに、公的な講義資料等を発信した。さらに、希望した学生はLINEオープンチャットにも登録した。これはMoodleの補完として用い、さらに「講義資料をMoodleにアップロードしました」といったお知らせを送るためにも利用した。学生側からは、どのツールでもいつでも連絡を、と伝えたところ、LINEオープンチャットを使って連絡してくる学生も想像より多かったそうだ。「学生からの質問のチャネルはなるべく多くしようと思いました。オープンチャットは大学教員の情報交換グループで教えてもらい試したところよかったので、今後も利用していくつもりです」。

授業の流れは、教授がMoodleに動画、資料PDFをアップロードし、学生はそれを閲覧したうえで、Wordファイルのワークブックを演習という形で行った。講義するうえでは、「常に問いを持つこと」、「問いを受け止める場所を複数作る」、「授業内で問いを共有」、「問いへの答えの見つけ方を授業で提示」などの点を心がけた。

オンラインだからこそのメリットもあったそうだ。「早稲田大学としてMoodleを用意してくれていたことと、著作権関連の件がクリアになっていたことはとてもありがたかったですね。紙で資料を配ったらURLをいちいち打ち込まなければいけませんが、オンライン上で資料を配ればハイパーリンクで閲覧できますので」。配布資料にはQRコードを載せたり、ハイパーリンクを貼ったりするなどの工夫を施したため、学生たちは容易に最新の研究資料にアクセスすることができた。

学生から教えられることも。未解明の分野を学生と一緒に学んでいきたい

この学問は、まだ答えが見つかっていない分野であることも、坂内教授が授業内で強調した点だ。「この先は崖なのよ、今、道を作っている途中なのよということを繰り返し伝えました。だからこそ、自分ならこんなアプローチができるという分野を見つけてほしいと願っています」。

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