Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

念願の反転授業に向け、
オンデマンドコンテンツ導入の好機となった

2020年度春学期ティーチングアワード受賞
対象科目:社会心理学Ⅰ
受賞者:膳場 百合子

膳場教授は近年、反転授業に興味が芽生えてきていたものの、

時間が無くてオンデマンドコンテンツ作りが、なかなか進まなかったという。

思いがけずコロナ禍による全学オンライン化により、オンデマンドコンテンツ作りがはかどった。

まだ反転授業には至っていないが、オンデマン化の過程で、無駄を削ぎ落とし、教材を見直し、

改善したこともあり、学生も教員も従来よりも満足度の高い授業につながったという。  

 

大総研のサイトを参考に、教材をブラッシュアップ

2年次以上の選択必修科目として設定されているこの授業を担当し、12年目になる膳場教授。スライドを見せながら講義をする形式は対面でもオンデマンドでも同じだが、今回大きく変わった点は、オンライン化を前に大総研が公開した「Teach Anywhere」というサイトを参考に、スライドで提示する教材を改善したことだ。「今までも少しずつ手直しはしていましたが、ノウハウを学んで意識的な教材づくりに取り組んだのは初めてでした」。

「学生が飽きないように短いビデオに分割する」「授業内容にかかわる簡単なクイズを入れる」など、サイトで公開されていたポイントはほぼすべて取り入れた。

そのうえで、冒頭にその日学ぶ内容について問題意識を喚起するような話を入れ、締めの部分では「復習ポイント」として重要な事項を改めて意識させるような作りにした。「以前は、学会のプレゼンのイメージで作っていましたが、学生の視点でよりていねいに作り直しました」。

これまではあまりしなかった雑談も、オンデマンドではあえて盛り込むことにした。「学生がひとりで孤独に学ぶという環境を考慮し、そこに人がいるという臨場感を少しでも感じてもらえるように、実生活につながる具体的なエピソードなども話すようにしました。感触も良かったので、対面の授業に戻っても続けていこうと思います」。

オンデマンド授業は以前にスタジオで収録した経験もあったが、今回は自宅で自分のペースでできた分、負担感は少なかったという。「PC作業は好きではないですが、Teach Anywhereで配信されていたオンライン授業開始準備セミナーが、PC好きでない教員も想定した分かりやすい内容だったので、非常に助かりました」。

教員の顔も映すスタイルが、学生にも自分にもプラスになった

講義で使うスライド資料はダウンロードも可能とし、講義動画を視聴せずこの資料だけを見て学んでもよいこととした。「心理学はネット上でも概念や理論や実験などが紹介されていることがよくあるので、私の作ったレジュメをベースに、学生が自分でネット検索して学んでくれても構わないと考えています。学生には自分の好きな方法で学ぶよう奨励しましたが、視聴履歴を見る限り、ほとんどの学生が講義動画を見ているようでした」。

その一因としては、映像に教員の顔も入れた点があると考えている。「講義では古典的な研究の紹介が多いのですが、その内容が面白く、私自身がわくわくしていることがあります。多分、私の感覚が、私の表情を通じて学生にも伝染し、学生も、面白く感じながら学べたのではないかと思います」。

顔を映すことは、話している自分にとっても良い効果があった。「ただ画面に向かって話すより、自分とはいえ映っている顔を見ながら話すと、話す相手がいる感じがして話しやすかったです。顔を出さない形式でやっていたら、同じようにはできなかった気がします」。

一方的な講義を聞き続けることが苦にならないよう、やらされている感ではなく、自発的な学習意欲を引き出すことも意識した。「この授業を聞くこと自体が学生にとって楽しく、それでいてきちんと学ぶことができる、そんな講義を目指しました」。

Moodleの小テストを毎回実施。手間を掛けずに個別フィードバックが可能になった

対面で行っていたときは、学期末の試験と中間に小テストを1回入れていたが、今回は試験をなくし、毎回Moodleの小テストを行った。「オンデマンド化で一番心配だったのは、習慣的な学習が難しくなり、落ちこぼれる学生が出てくるのではないかということ。ためこまずにコンスタントに学んでもらうためにも、毎週小テストをやり、その積み重ねが成績につながるという形にしました」。

小テストは選択問題とし難易度は高くないが、10分間の制限時間を設けた。「時間制限がないと、先に問題を見ながら資料の該当する部分だけを探して終わらせてしまう学生が出そうなので、あらかじめ勉強していないと答えられないような時間を設定しました」。

従来この授業は履修生が多く(もともと250名程度)、対面授業で紙の小テストを実施していた時は、試験後、全員に同じ正解を示すだけだった。一方、Moodle上で行うと自動集計された結果が表示されるため、学生も自分の間違えたところが分かる。「今年は例年より受講者が多く、320名以上いましたが、私の負担を増やすことなく個別のフィードバックができ、学生にも歓迎されました」。

オンデマンドコンテンツの導入は、数年前から考えていた構想だった。「社会心理学はディスカッションがしやすい領域ですが、人数が多いと時間がかかってしまうため実現できていませんでした。そこで、講義部分をオンデマンド化して事前に視聴してもらい、教場はディスカッションに当てるという反転授業をやってみたいと考えていました」。

一般的な反転授業のデメリットとして、ディスカッションの時間を確保するために教育内容を削る必要が出てくる点が挙げられる。しかし、今回実際に収録をしてみると、教場で90分かけて話していた内容が、合計45分程度のビデオに収まった。資料配布などの時間がなくなったことに加え、自分の話し方も効率的になったと感じている。「この方法なら講義の内容を削らず、ディスカッションの時間を作れるという感触が持てました。オンデマンド教材の教育効果については、懐疑的なところもあったのですが、実際に使ってみて、問題なさそう、という感覚を得ました。反転授業の実現に近づく一歩として、私には良い機会になりました」。

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