Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

多様なツールで質問を受け付け、学生のニーズを把握。
試験の先にあるハイレベルな学びの機会を提供

2020年度春学期ティーチングアワード受賞
対象科目:管理会計Ⅰ(1)
受賞者:目時 壮浩

公認会計士試験突破を目標とする履修者が集う「管理会計Ⅰ(1)」。

会計のプロを目指す熱意ある学生が多いこともあり、

実務での適用事例や最新の研究動向を踏まえた講義を展開し、

管理会計についての深い学びの機会を提供したいと考えている。

オンラインでの授業となった2020年は、さまざまなツールで質問を受け付けるとともに、

Moodle上での講義資料・動画等の配信、課題添削などを実施し、学生から高い評価を得た。

公認会計士を目指す意欲の高い学生たちに、高い質の学びの場を提供

管理会計は、公認会計士試験の主要科目である会計学の一領域であり、会計情報の測定、分析、報告を通じて、経営(管理)者の意思決定や組織のマネジメントをサポートする情報提供を目的としている。予算管理、原価管理、業績評価、投資意思決定など組織をマネジメントするうえでの必須の知識を扱う学問領域であることから、公認会計士受験者のみならず、社会人経験を持つ学生や、企業、公官庁から派遣されて学びに来ている学生も多く履修している。

目時准教授は2020年春学期から早稲田大学大学院会計研究科に着任し、この科目を担当することになったのだが、着任早々コロナ禍によりすべての授業をオンラインで実施することになり、試行錯誤をしながらの学期となったそうだ。そのような状況下でも、准教授の創意工夫と献身的な学生へのサポート、さらには学生たちの熱意により、学びの質を落とすことなく授業が行われた。学生授業アンケートでは「総合的にみてこの授業は有意義だった」の項目で6点満点中5.87点、「この授業の内容をよく理解できた」で5.63点を獲得したことからも、学生たちの満足度が非常に高かったことが伺える。

複数のツールで質問を受け付け、授業後の課題はMoodle上でフィードバック

オンライン授業を実施するにあたり、最初に試みたのがSNSを活用して幅広く質問を受け付けるということだった。利用したツールはLINE、Waseda Moodle、メール、Zoomで、授業資料の冒頭に連絡先を明示し、どのツールでもよいので質問があったら連絡するように促した。結果としてはLINEでの質問が多かったそうだ。「質問の数は大変多かったです。意欲の高い方が多く、『実務ではどうなのか』『研究ではどうなのか』といった、公認会計士試験の範囲を超えた質問もありました。また、質問をいただいたもののうち、重要なものは授業のなかで取り上げて履修者全員に共有しました」。Zoomは「質問したいけれど質問事項がうまくまとまらない」といった場合に、他のツールで日時を決めておいてZoom上で会話をしながら疑問点を確認しながら説明をした。「質問を受けるツールとしてはLINEが多かったです。Moodleは『Moodleでのオンライン試験が途中で切断されてしまった。再受験したい』など、公式の連絡ツールとして使用する学生が多く、授業内容や関連する質問はLINEが多かったですね。オンライン授業では、対面に比べて授業後の質問がしづらい環境になってしまうので、SNSをうまく活用して、可能な限り質問に答えていくつもりです」。

毎回の授業の流れとしては、以下のように行った。准教授が授業1週間前にMoodle上にパワーポイントで作った講義資料をアップロードする。学生はそれを自習したうえで、資料の最後に提示されている「重要な論点」について考えをまとめておく。授業当日に准教授は「講義動画」をアップロード。これは90分の授業2コマ分なので最長の場合約180分に及ぶ。学生はこれを1週間以内に視聴し、授業後の課題をMoodle上で提出する。准教授はMoodle上で課題を読んでフィードバックを返す。これで1回の授業をオンライン上で実施したことになる。「課題は全員がもれなく回答してくれました。こちらからのリアクションは学生の解答を読んで、足りないポイントを指摘するなどして、なるべく具体的にアドバイスをするようにしました」。

また、この科目は「基礎管理会計」の知識があることが前提となっているが、管理会計初学者から公認会計士試験合格者まで多様な学習歴を持った学生が在籍していることに配慮して、准教授が作成した「基礎管理会計」の講義内容の動画もMoodle上で閲覧できるようにしたという。このようなきめ細かい配慮も、学生の理解を深める一助になっていたと考えられる。

受験のためのテクニックだけではなく、管理会計の本質を考えるきっかけを提供したい

この科目の履修者の多くは公認会計士試験受験者ということもあり、大学院と同時に公認会計士受験予備校に通っている学生も多い。大学院の授業では、試験問題を解くためのテクニックだけではなく、管理会計理論の歴史的背景や実務での適用事例、さらには最新の管理会計研究についても紹介し、管理会計をより深く理解してもらうことを目指したそうだ。「管理会計についての表面的な理解だけでなく,本質的な理解をしていただくために、事例や研究論文を活用して、管理会計理論の背後にある「なぜ?」を考えていただきました。実務では、組織の状況にあわせて管理会計は様々に変化します。会計の専門家を目指す学生の皆さんには、管理会計の本質を理解し、実務への応用力を身に着けて欲しいと考えています」。

問題演習にくわえて、文献紹介、論文紹介を数多く行うことから、学生は数多くの課題をこなすことになるが、学生からは、LINEなどを通じて「理論の背景が理解できた」「なぜそういう考え方が生まれてきたかという本質的なところがわかったことがよかった」などの感想を受け取ったそうだ。

「自分が学生だったときと比べて、現在の学生さんは、勉強の仕方がうまいなぁと感じています。膨大な課題を要領よくこなしているだけでなく、SNSを有効に活用しながら疑問点を早期に解消しています。オンライン授業は授業の質や学生の理解を低めてしまうように思われがちですが、SNSをうまく活用することで対面授業以上に授業の質を高めることができることがわかりました。オンライン授業では今後もSNSを活用しながら質問を受け付けていきたいと思っています」。

准教授は、オンデマンド型の授業では学生間でのディスカッションの機会を十分に提供できないことが課題であると認識している。今後はオンデマンド型であってもSNSを活用してディスカッションの機会を設けるなど、さらなる工夫をしたいと考えているそうだ。

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