Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

話しやすい雰囲気と身近なテーマ設定で、
オンラインでも議論中心の授業を実現

2020年度春学期ティーチングアワード受賞
対象科目:Social Development in East Southeast Asia I
受賞者:コーワタナサクン ウッパラット


2020年度春学期、早稲田への着任と同時にオンライン化という予期せぬスタートとなったウッパラット講師。  

そんな逆風のなかで、ディスカッションを導入した満足度の高い授業を行い本賞の受賞に至った。

「想像力豊かな学生たちに恵まれたおかげ」と謙遜するが、オンラインという状況下でも

有意義な議論に導くことができた秘訣はどんなところにあったのだろうか。

 

学生に身近なトピックを取り入れ、より分かりやすい講義を心がける

この授業は、社会科学部の「ソーシャルイノベーションプログラム」として、すべて英語で開講される科目のひとつで、10人程度いる履修生の半数はアジアを中心とする留学生だ。SDGsをキーワードに、特に東アジア・東南アジアの社会問題や社会開発に焦点を当てて、社会開発を促進・阻害する要因や条件を探ることを目標にしている。

参加する学生にはあらかじめその回のテーマに関する資料を読んでくることを課し、授業の前半で講義を行った後、後半は2つのグループに分かれてディスカッションを行う。最後に各グループでの話し合いの内容を報告してもらった後、教員からの補足を添えて終了するというのが授業の流れだ。講義もディスカッションも、すべてリアルタイム配信を採用。ZOOMのほか、Moodleのコラボレート機能も利用した。

オンラインでの講義は初めてということもあり、当初は「壁と話しているよう」で違和感もあったと笑う。「自分の接続に問題ないかを確認するためにも、何か質問はありますかという形で10分おきぐらいに学生に呼びかけるようにしました」。質問がない場合でもチャットボックスを使って「ありません」と返してくれるなど、学生からは何かしらの反応が得られたという。

学生のビデオはオフにしている場合もあれば、オンになっていても資料が映っていると顔が見えない。「学生の様子が見えないので、どのぐらい理解しているのかを対面のときのように感じ取ることができません。そこで、できるだけ彼らに身近なトピックや話題を選んで話すようにしました。特にオンラインでは、自分に関係ないと感じる話題が続くと集中力が落ちてしまいますから」。

学生の理解度が把握しにくい分、説明もより分かりやすく話すよう意識した。「事前に友人を相手に試行し、分かりにくいなと感じる部分を修正するなど、3倍の時間をかけて準備しました」。結果的に、学生が講義を真剣に聞いて理解していたことは、後に続くディスカッションの様子からも感じられたという。

ディスカッションのモニタリングはするが、基本的には介入しない

ディスカッションの間は、教員が適宜各グループに入り、どんな話をしているかモニタリングしていた。「ディスカッションがうまく進んでいないときには、こういうのもあるよという形で方向性を助言することはありましたが、基本的には私は口を出しません。私から答えを出すのではなく、学生たち自身に考えてもらいたいからです」。

学生からは、講義での説明がとてもていねいだったことに加え、「ただ話を聞くだけでなく、参加し、議論し、分析するという態度を求められた」「多様なバックグランドを持つ学生同士で、互いの価値観などを共有することができた」など、ディスカッションによる学びへの満足度を挙げる声が寄せられた。

ディスカッションを重視するのは、将来仕事をしていくうえで大事な、リーダーシップや他者を受け入れる力、チームとして働く能力などを身につけるための練習の場になると考えるからだ。「海外に出ると、ディスカッションを通して文化の違いから学ぶことも多いので、私自身の留学体験を伝えて学生たちにも奨励しています」。

授業を離れても人生について語り合えるような関係を築きたい

試験は行わず、中間と期末に行った2回のレポートと、平常点とを成績に反映した。「みんな積極的に発言してくれたので、平常点はほぼ満点でした」。

学生のレポートには必ずフィードバックを返す。提出されたレポートに対して個別に返すだけでなく、事前に下書きを見せてくる熱心な学生に対してはその段階でも助言を与え、修正を加えてから提出してもOKとした。「せっかく書いたレポートを書きっぱなしで終わらせてしまうのは良くないので、フィードバックは大事にしています」。

今回は選ぶ余地なく臨むことになったオンライン授業だが、画面共有などの機能を使って学生がアイディアをシェアできるなど、便利な点もあったと感じている。「それでも、やはり私は対面の授業がいいですね。講義をするときも、スライドを使うより黒板に書きながら話す方が好きです」。

オンライン化による学生の心理面にも配慮し、授業の際は30分前に入室し、早く入ってきた学生に「今はどんな感じ?」などと声をかけた。「すべての授業でレポートが課されて大変だという声も聞いたので、負担をなるべく減らせるようにしたり、彼らのやりたいテーマを取り入れたりなどの調整もしました」。

学生との関係を大事にしているウッパラッド講師。理想の教員像は「勉強だけでなく人生のことについても語り合えるようなコミュニケーションを持てること」だという。「私自身の恩師が人生相談をできるような存在だったので、自分も学生とそういうつながりを持てるようになりたいですね」。

初年度でもあり「改善点はたくさんある」と振り返るが、学生に対してフランクで正直に話すよう心がけた点が良かったのではと感じている。「学生が発言しやすい環境を作れたことで、授業をおもしろいと感じ、教員からだけでなく級友からも学びを得られたのではないでしょうか。変化し続ける世界では、授業で得た内容もすぐに古くなってしまうかもしれないので、学生たちには今後も常に学び続けてほしいと思います」。

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