Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

詳細な板書、毎回の質問、やや難しめの演習問題。学生の理解を深め、意識を勉強に集中させるための3つの工夫

2019年度秋学期ティーチングアワード受賞
対象科目:数学A1(線形代数) 電生(1)


「数学A1(線形代数)」は、理工系3学部の全1年生の必修科目だ。
福島先生が担当するクラスでは

春学期と秋学期を通じて、「微分積分」と並び大学数学の基礎となる「線形代数」を学ぶ。

まだ大学の学びに慣れていない1年生に、授業の内容をしっかり理解させ、緊張感をもって勉強させるには

どうすればよいか。詳細な板書、学生への質問、全体のレベルアップを図る演習問題という、

福島先生の授業の「3つの工夫」を聞いた。

 

そのまま書き写すだけで理解が深まる詳細な板書と、それを可能にする綿密な講義ノート

福島先生の「数学A1(線形代数)」の授業の工夫としては、まず詳細な板書と丁寧な説明が挙げられる。そこには、先生自身が事前に準備した綿密な講義ノートの存在が欠かせない。授業では、講義ノートに書いた内容をそのまま黒板に書き写しながら解説をしていく。学生がノートに書き写すときのことも考慮して、講義ノートを作成する時点からレイアウトを工夫し、さらに最も重要な箇所とその次に重要な箇所で色分けもしている。講義ノートの分量は、春学期・秋学期を合わせてA4判で120ページにも上る。事前に準備した講義ノートがあるからこそ、授業では整理されたスムーズな板書が可能になる。

「詳細な板書や色を使い分けるやり方は、もともと私が大学時代に恩師からアドバイスされたことです。私自身、それがとてもわかりやすかったので、自分が教壇に立つようになってから同じ方法を取っています」。この科目を担当した2008年から、「講義ノート+板書」のスタイルは変わっていない。最初の数年は、説明の追加や書き換えといった講義ノートのブラッシュアップを毎年していたそうだが、ここ数年は特に変更はしていないという。「今は、学生の成績などから教育効果が十分に出ているので、特に修正は必要としていません。ただし、受講生の高校時代の学習内容が変われば、それに応じて微調整はしますが」。

学生には、黒板に書かれた内容をすべてノートに書き写させている。「レジュメを配るという方法もありますが、大学1、2年生くらいまでは、数学は書いたほうが理解できるというのが私の考えです。板書は読めばわかるような書き方をしているので、後で復習したいときやテスト勉強のときにも必ず役立ちます」。ちなみに、最近はパソコンのワープロソフトやタブレットを使ってノートを取りたいという学生もいるそうだ。「パソコンやタブレットも、自分の手を使う場合は認めています。ただし、スマホでの撮影は禁止です」。

学生をランダムに当てて質問することで、緊張感が生まれて勉強への意識が高まる

一方的に講義をするだけでなく、学生を当てて質問をする機会を頻繁に設けているのも、福島先生の授業の大きな特徴であり、工夫の一つだ。「毎回、5~10名程度の学生に質問をしています。最初の頃は、前のほうに座っている学生だけを当てていましたが後ろがだらけてしまうので、引き締め策として現在は出席票を使ってランダムに当てています。当てられるかもしれないということで学生に緊張感が生まれ、授業に集中します。『勉強しなくてはいけない』という意識を学生に持たせることができます」。

当てられた学生は必ず答えなくてはいけないというのも、この授業でのルールとのこと。間違っていても構わないが、「わかりません」という答えは認められない。「答えられなくて黙っている学生にはヒントを出すなどして、私もなんとか答えさせるように誘導しています」。たとえ誘導されてでも答えることができれば、学生は達成感を得られるはずだ。また、1年間の講義期間の後半になると、当てられたときに備えて、授業が始まる前の教室で先週の復習に取り組くんでいる学生もいるという。

「本当は、こちらが何も言わなくても学生が自主的に勉強するのがいちばんですが、今はある程度厳しくしないと勉強しない学生のほうが多い。『数学A1(線形代数)』で学んだ数学的な発想・考え方は、将来それぞれが進む分野で生かせるはずです。できるだけ多くの学生にしっかり学んでほしいと考えているので、このようなやり方をしています」。

教科書より少し難しい演習問題へのチャレンジで、全体の学習レベルの底上げを狙う

3つめの工夫は、授業に演習を取り入れている点だ。たとえば、2019年秋学期には全14回の授業のうち、9回ほど演習問題を解く時間を設けた。学習内容の理解度を高めることが主な目的だが、全体の学習レベルを引き上げることも狙っている。「授業で使用している教科書はやや易しめなので、演習プリントの問題は少し難易度を高めに設定しています。明確な根拠まではありませんが、少し高めのレベルに設定しておいたほうが、みんなが頑張るので全体の底上げにつながると考えています」。

演習プリントは、授業中に20~25分かけて解答させて回収。次回までに採点して、多くの学生が間違った箇所など重要なポイントを中心に次の授業の冒頭で解説する。さらに、演習問題にはもう一つの目的があるという。それは、真面目に授業に出席している学生へのアドバンテージだ。この科目の成績は、春学期と秋学期の2回の期末テストのみで評価している。極端に言えば、期末テストさえできれば単位は取れるが、逆にテストの成績が少々振るわなくても、授業に毎回出席して演習問題にもきちんと取り組んでいる場合は、その分を評価に加算している。

詳細な板書と学生への質問は、どちらも対面での授業を前提としている。オンライン授業となった2020年度は、今までとは少し違う方法を工夫しているという福島先生。「板書の代わりに、講義ノートをPDF化してiPadで表示。重要なところをペンで囲むなどして、オンラインでもなるべくライブ感を出しています。演習問題も、実際の時間割に合わせて締め切りを設定して、すぐに提出してもらうようにしました。ただ、オンデマンド授業だったのでリアルタイムで学生に質問はできないし、学生の反応も見られない。その点は、来年以降の検討課題ですね」。

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