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いい講義は入念な準備から。
学生たちの理解度を確認しつつ行う講義での丁寧なフィードバックが高評価

2019年度秋学期ティーチングアワード受賞
対象科目:新機能メモリ

 

ほぼ全員が中国からの留学生という特殊な環境で、英語で講義が行われる「新機能メモリ」。

毎回小テストとそのフィードバックを行うことによって教授が学生たちの理解度を把握し、

講義スライドにも微調整を加えるという丁寧な姿勢が、学生授業アンケートで高評価を得た。

準備には十分な時間をかけるという大澤教授に、講義準備や講義中に心がけている具体的な工夫について伺った。

 

常に学生たちの反応を受け取り、説明の仕方を変えるなど細かく対応

北九州キャンパスの大学院情報生産システム研究科で講義が行われている「新機能メモリ」。2019年秋学期は受講生が30名強いたが、全員が中国からの留学生。そのほとんどが修士課程の1年生であった。9月入学の学生が多いため、1年生の学生にとっては早稲田大学の大学院で受ける最初の授業の一つとなっていたそうだ。講義の前半では、世の中で現在活躍しているSRAM、DRAM、NANDフラッシュメモリなどの既存メモリの性能限界と問題点を理解し、中間試験を挟んだ後半では、まだ実用化されていない今後有望であろうと思われている新機能メモリに焦点をあて、その特徴などを理解することを目指している。

日・英併用が前提だが、大澤教授が担当することになった2017年以降、実際には留学生がほぼ全員を占めていたため、英語のみで講義を行っている。また、この分野の基礎知識を学んでいない学生がいることもあり、常に彼らの理解度を確認しながら授業を進めているそうだ。「学生たちの顔を見ながら『分かっているかな』と常に気にかけています。英語は私にとっても学生にとっても第二外国語なので、その分正しい英語を話さないと伝わらない。さらに、『正しい』英語を使ったとしても中国の人たちがそれをきちんと理解するかというのはまた別問題ですよね。そこで、『伝わってないな』と思ったら専門用語だけでなくデバイス動作の仕方の表現方法なども、別の言い方に言い換えるなどの工夫をしています」。

準備を怠るといい講義はできないと大澤教授。「英語での講義ということもあり、準備には時間を十分使わないといい講義ができません。スライドの作成や修正は当然ですが、正しい英語を流暢に話さないと彼らの集中力が落ちてくるのが目に見えて分かるんです。90分の授業に対して、平均すると半日程度は準備に使っているかもしれないですね。専門用語はもちろん、表現の仕方の英語の用例なども調べておきます」。

また、講義の間も仲間内などで話し合う雰囲気があるそうだ。例えば学生同士でなにか話しているときは、教授はそれをレスポンスとして受け取り「何が分からないの?」といった具合に聞き、教え方を変えているのだそうだ。

スライドを基本に、重要なポイントでは実際に手を動かして説明も

講義に際しては、パワーポイントの講義スライドを基本として使用している。元になるものは3年前に大澤教授が作成し、微調整を加えて授業で使用している。講義スライドを作成する際心がけているのは、直観的な理解を助けるような絵やグラフを多用し、文字だけのページはなるべくないようにすることだそうだ。さらに、著作権の問題を考慮して、オンラインで配信するものに関してはすべてオリジナルの図やグラフを用いて作成しているという。

この講義スライドはCourse N@viにアップロードされ、学生は毎週、授業前にダウンロードして予習をしてくることが求められる。講義中、重要なポイントに来たときには大澤教授はスライドを離れて、実際に白板に図を書いたり、手を動かして計算式を書いてみたりするようにしているのだそう。「15回の授業を聞いたくらいでは内容の真の理解にまで到達できないと思います。本当の学問というのは独学なのだと思います。教科書を読むだけだったら授業はいらない、授業はあくまでのちのち勉強するためのきっかけを作るものです。ですので、計算式を書いたといったエピソード記憶は記憶に残りやすいと思うのです。あるとき、白板に計算式を書き始めたら途中で分からなくなってしまいました。あとで間違いに気づきそこに戻って、結局できたことがあるんですが、そういうことがあると強く印象に残ると思うんです」。

また教授は、電気メーカーでの勤務経験をふまえ、講義内容に関連した開発の経験談も話すことがあるという。「そういう実社会の話も彼らにとっては印象的だろうなと考えています」。

学生へのフィードバックをすることで教える側にもメリットが

2019年度は毎回授業時に紙に印刷した課題(小テスト、レポート)を配って家で解いてもらい、次回の授業で集めることにした。採点後、その次の講義で返却。採点の際にはTAに補助をしてもらい、コメントを入れることもある。この方式を導入したきっかけは、毎回の理解度を知りたかったからだそう。この結果、2つの効果があったそうだ。1点目は、学生たちの理解度が判定できるので、理解が足りないと思ったらそれ以降の授業に反映させられるということ。2点目は、教える側の立場から「これだけは理解してほしい」という中心テーマの再確認ができるようになったという点。この小テストの採点や、学生たちの理解度を把握して次回以降の講義内容に微調整を加えるという対応が、フィードバックを受けられたという学生たちの満足感に繋がっているのではないかと大澤教授は話す。

「人間が理解する方法に興味があって、人それぞれに合った理解の仕方がある。学生たちは学問という道にこれから入っていくところで、そこで興味を失って挫折してしまったらかわいそうだなと思うので、大学院とはいえ、丁寧な指導は必要だと思っています。大学院生は、まだまだ研究の入り口に入ったところですが、彼らが研究を続けたいと思うきっかけの一つになってくれることを願います」。

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