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【実施報告】2018年度 教育に関する懇談会「大学院生が参画する大学教育の質向上の取り組み~カリフォルニア大学バークレー校の事例より~」

◆ワークショップ実施報告:
【実施報告】2018年度 教育に関する懇談会
「大学院生が参画する大学教育の質向上への取り組み~カリフォルニア大学バークレー校の事例より~」

2018年12月11日、カリフォルニア大学バークレー校の渡邊有樹子氏(Center for Teaching and Learning, University of California, Berkeley、Senior Consultant on Assessment and Evaluation)をお招きし、教育に関する懇談会を開催しました。

今回の懇談会は、教育・総合科学学術院の三村隆男教授が昨年度サバティカルでUCLAバークレー校へ行った際、渡邊氏の取り組みに出会ったことが契機となり実現しました。この日は、大学院生の参画によって大学教育の質向上に取り組んでいるという同校の事例を渡邊氏よりご紹介いただき、自分たちの大学でできること、そのために必要な支援やシステムについて参加者全員で考え、意見交換を行うワークショップとなりました。

◆講師 渡邊有樹子氏のプロフィール
・教育評価のシニアコンサルタントとして、Center for Teaching and Learning (CTL), University of California, Berkeleyにて、キャンパス内の様々な学位プログラム並びに学習・学生支援センターの教育評価・改善・開発に従事。
・大学教員・大学院生を対象としたカリキュラム評価に従事する人材育成も行っており、CTL 独自のトレーニングプログラムの他、教育学部にて、院生を対象とした教育プログラム評価の授業も担当。
・ハワイ大学第二言語研究科、Ph.D. 取得。

◆参加者

・本学教員:9名
・本学関係者(職員・院生):11名
・学外関係者:8名

◆共催

早稲田大学 大学総合研究センター・教務部・大学院教育学研究科 三村隆男研究室

◆プログラム

【1:グループワーク】5~6名のグループで、現状について意見交換をする。

(1) 学部の授業や学科・全学のカリキュラムに関して常日頃、疑問に思っていること(例:学部生の学びの視点と学習活動が噛み合っているのか、入学から卒業の過程において、どこでつまずいているのか)。
(2) 学位終了までに、専門での研究知識・能力以外に、大学院生にどのような能力を培って欲しいと願っているか(身に付けたいと思っているのか)。

出てきた意見を各グループ内でイーゼルパッドにリストアップした上で、他のグループではどんな意見が出たかを共有しました。大学院生に身に付けてほしい能力として複数のグループで共通して出てきたのは、「コミュニケーション」「コラボレーション」など。教員グループからは「聞く力」や「知識」「技能」を身に付けてほしいという意見が多かった一方で、院生グループからは、身に付けたいものとして「発信力」「伝える力」、および「外部との連携」や「視野の広さ」が挙がったのが対照的でした。

【2:事例発表】渡邊氏より、UCLAバークレー校での取り組みをご紹介いただく。
院生には卒業前にどんなことを学んでほしいのか?

同校における大学院の管理組織は、教員で構成されるGraduate Councilと、職員、教員を含めたGraduate Divisionという2本立てとなっています。Graduate Divisionには、Professional Development、Mentoring 、Graduate Writing Center と並んで、Graduate Student Instructor Teaching Resource Center という機関があり、ここでは授業構成やシラバスなどの教育設計を学ぶ院生向けワークショップを行っています。「それぞれの分科会には数人の大学教員がアドバイザーという形で入っており、職員だけではなく教員と職員が連携して関わる体制を取っているのが特徴です」。
アメリカの大学では、どの学位もプログラムレベルで学生の達成目標を立て、それがきちんと達成できたかどうかを検証することが求められています。同校においては、2015年の大学認証評価の際に「大学院での目標が明確ではない」という問題が分かり、卒業までに院生に学んでほしいことについて、全学的な話し合いが持たれました。その結果、学科、専門を問わずに達成すべき領域として6つの領域からなるガイドラインが設けられました。

「教える」ことを学ぶための多様なプログラム

その6つの領域にはPedagogy(教育学)も含まれています。「教えるときに達してほしい目標をいかにクリアにするか、フィードバックをどう与えるか。チーム力をどう育てるか、学生を引き込む教え方とはどんなものか。これらは、教員に限らず社会のどこにいても必要なスキルであるという認識から、同校では<教える>ことが必修とされ、最高12セメスター、 6年間教えることが可能となっています」。
院生が教えることを体験する場としては、日本でのTAにあたるGraduate Student Instructor(GSI)以外にも、学生の質問などに対応するTutorや、ペーパーの採点を行うReader、より教員に近い立場のActing Instructorなど、さまざまなポジションを用意。「GSIとなる学生は、年に1回のカンファレンスに出席するほか、ティーチングやメンタリングなどさまざまなことを学ぶコースがあり、これを履修することが必須とされます」。

大学院生が教員といっしょに授業を改善していく

一方、「カリキュラム改革や授業連携への興味はあるが、時間やリソースがない」という教員の声を受けて生まれたのが、Assessment Fellows Program。これは、渡邊さんが所属するCenter for Teaching & Learning(CTL)によって実施されているプログラムで、授業改善を望む教員が提案するプロジェクトに、教員志望の院生が応募。選抜された院生は各種のトレーニングを受けた上でカリキュラム評価を行うというものです。「授業改善という教員へのメリットだけでなく、将来教員となる院生にカリキュラムという視点で授業を評価し、それを改善する力をつけてもらうという意味では、教員、院生に双方にとって”Win-Win”なプロジェクトですね」。
プロジェクトは1月から5月の1セメスターで遂行され、参加する院生は事前に2週間のワークショップに参加し、そのプロジェクトに必要なスキルを学びます。教員はプロジェクトのリーダーとして、何をしてほしいか、どんなデータが必要かなどを指示し、協力してプロジェクトを進めていくという流れです。参加した院生には2500ドルの給金と修了証明書が授与されます。
プロジェクトで院生が作成したレポートやプレゼンテーションのビデオクリップはWebなどで公開され、全学向けのリソースとして提供されている点も注目です。「このプログラムを通じて、院生のみならず教員側も、カリキュラム評価について学ぶ機会になったという声が報告されています」。

【3:質疑応答と意見交換】

<渡邊氏>ここまでバークレーの取り組みをご紹介しました。それを踏まえて、早稲田大学、あるいは自分たちのところではどんな機会を作れそうでしょうか?

<参加者>早稲田でも2018年度から「高度授業TA」(※注参照)という制度が立ち上がっています。そのためのオンラインのコースやワークショップも行いました。ただし、現時点では、教員がTAをどう使えばいいのか分からない、あるいはTAがカリキュラムを理解していないなど、いくつかの問題があります。GSIのようなものがうまくいけばいいのですが、予算が足りないという現実もあります。さらに、院生が参加するインセンティブという意味では、日本の学生は研究しか評価されないという状況を変えていく必要があるように思います。

<渡邊氏>基本的には小さいところから始めるのがいいと思います。教員にとっても、教育を効率的、効果的にできれば、その分研究の時間を捻出できるというメリットがあります。授業がうまくいかないのはストレスですから、そこから脱するための改善活動というアプローチは、ひとつフックになるのではないでしょうか。

<参加者>理工学部では博士課程に行く院生は少なく、多くが修士課程だけで卒業してしまうこともあり、教員になるわけではないからティーチングは不要だと考える学生は多いです。ただ、社会に出れば教えたり教わったりという場面は必ずあるので、教員にならないとしてもTAを体験してほしいと私は思います。就活にアピールできるようなものを大学から提供し、TAを体験した卒業生が評価されるようになれば、ひとつのインセンティブにはなるのかなと思います。時間はかかると思いますが、そういう意識を持ってもらいたいです。

<渡邊氏>ティーチングのスキルを、社会力、職業力としてどんな言葉に替えられるかということですね。パーソナル・マネージメントとかチーム・マネージメントとか、あるいは授業計画はプロジェクト力につながるとか。いかに院生が興味を持つ言葉にできるかというトランスレーションの問題もありますね。

<大学総合研究センター副所長森田先生より>

大総研で高度授業TAのプログラムを担当する責任者として、今回のお話は非常に参考になりました。ある意味私たちがやりたいと思っていることのイメージがとても具体的に、すでに実現されているということを、心強く思いました。博士課程に行かずに卒業してしまうケースが多いため、大学院生がとても少ないという早稲田の現状もあり、TAをうまく回す仕組みがありません。今後それを作っていきたいので、関係者の皆さんにはぜひご協力をお願いしたいと思います。

※高度授業TA
「Waseda Vision 150」の中でも宣言されている「対話型、問題発見・解決型教育への移行」を実現するため、2018年度より導入された。事前に担当教員と指導方針を共有した上で、より深く踏み込んだ学修支援・授業運営に携わる立場として位置づけられている。

 

◆お問い合わせ先:

早稲田大学 大学総合研究センター
ches-staff@list.waseda.jp

Dates
  • 1211

    TUE
    2018

Place

早稲田キャンパス 3号館2階203教室(3-203 CTLT Classroom 3)

Tags
Posted

Wed, 12 Dec 2018

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