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個人の思考からディスカッションへとつなぐ大学院授業    ー学生との対話を軸にした継続的な授業改善

2024年度開講科目早稲田大学ティーチングアワード
総長賞受賞
対象科目:環境共生・地域社会システム論

受賞者:野津 喬

 

本授業は、大学院生を対象に、環境問題や地域課題を多角的に捉える視点を育むことを目的としている。環境と経済、社会を切り離して考えるのではなく、それらが地域の中でどのように関係し合い、地域の課題として現れ、それに対してどのような解決策が必要なのかを考える授業である。具体的には、地域循環共生圏といった政策的な枠組みを手がかりに、再生可能エネルギーや資源循環、食と農など、地域社会と環境共生を両立させる上で重要なテーマを取り上げている。

授業では知識のインプットにとどまらず、学生自身が考え、自分なりの意見をもち、言語化するプロセスを重視している。このため、講義に加えてディスカッションやリアクションペーパーを取り入れている。野津先生が「授業での学びを踏まえて、研究テーマを見直す学生も多い」と言うように、修士学生の研究テーマを検討・深化させるための土台づくりとしても位置づけられている。

 

学生が話す前に考える時間を取り入れ、活発なディスカッションを実現

野津先生が工夫している授業設計の特徴の一つに、ディスカッションの前に学生が一人で考える時間をつくる点がある。野津先生の所属している研究科は文理融合を標榜しているため、この講義も文系・理系を含む多様なバックグラウンドを持つ学生が履修している。このような背景もあり、「多様なバックグラウンドゆえに、テーマによってはディスカッションで共通の前提が揃わず、学生の議論が深まりにくいことがあった」と野津先生は語る。野津先生は、この点に対応するには、教員側のファシリテーションスキルを高めるしかないのかと悩んでいたという。

転機となったのが、大学総合研究センターが提供するFD研修「Oxford EMI」への参加である。研修では、「ディスカッションは、先に学生に個人ワークをさせた方が良い」「学生が文章の形で自らの考えを事前にアウトプットして整理することにより、その後のディスカッションがスムーズになる」という授業設計を学んだ。これを受けて、野津先生はディスカッションの前にGoogleフォームで、ディスカッションテーマについての学生個人の考えを書かせる時間を設定するようにした。なお、この講義ではディスカッション後、Googleフォームの回答結果を全体で共有し、教員からのフィードバックも行っている。

授業設計を見直した結果、「どのようなトピックであっても、教員からの細かい介入なしに、ディスカッションが円滑に進むようになった」と野津先生は話す。この点については授業アンケートにおいても学生から、「30人程度と通常であれば一方向になりがちな講義の人数であっても、ツールを適切に用いることで双方向の対話が可能となる講義形式であった」というコメントが寄せられている。

Moodleを効果的に活用した、効率的な授業内外でのフィードバック

野津先生は、Moodleを活用しながら、学生の学びを支えるフィードバックの在り方を工夫している。野津先生は以前、提出されたリアクションペーパーに対して、提出者全員にMoodleで個別のフィードバックを行っていた。この取り組みは学生からの評価が高かった一方、教員の作業負担が大きく、継続の難しさを感じていたという。このことが、学生へのフィードバックの方法を見直すきっかけとなった。

現在は、リアクションペーパーを①講義で得た学び(必須)、②教員への質問等(任意)の2段階構成に変更している。②教員への質問等(任意)があった学生については、従来通り、Moodleで個別のフィードバックを行っている。

その上で野津先生は、①、②の両方を匿名化した上で、フィードバックペーパーに一括してまとめて、次の回の授業冒頭で履修者全体に共有している。履修者からは、前の週の内容を振り返ることができるとともに、他の人の捉え方や考え方に触れることができるため、好評だという。

なお、野津先生は上記のフィードバックペーパーを作成する際、教員の作業負担を減らす観点から、Moodleの機能を積極的に活用している。以前は、学生にリアクションペーパーをファイルで提出させていたが、ファイルを一つ一つ開いて、さらにそれをフィードバックペーパーにまとめる労力が大変だったという。このため現在は、提出形式をオンラインテキストに限定し、CSV形式で一括してダウンロードすることにより、効率的なフィードバックペーパーの作成を実現している。この方法は、教員の作業負担を抑えながら学生へのフィードバックの質を維持・向上させる点で効果を上げている。

学生との対話を重ね、継続的な授業改善を行う

野津先生は、これまでの取り組みに満足することなく、学生の声を手がかりに毎年少しずつ授業改善を継続する姿勢を大切にしている。野津先生は、「学生授業アンケートの結果は全部目を通していて、可能な要望があれば次年度の講義に反映している」と語る。

野津先生は学期末だけでなく、学期中にも授業改善を行っている。「授業の進め方で気になる点があったら、リアクションペーパーに書いてくれていいよ」と学生に伝え、出された要望については、可能な範囲で次回以降の授業運営に反映している。対応が難しい場合でも、対応が難しい理由を学生に伝えるなど、学生との対話を重ねる姿勢を強く持っている。

こうした授業改善の背景には、「学生が快適に受けられない授業では、自分自身も快適に授業を行えない」という野津先生の個人的な思いがある。学生との対話を起点に授業を育て続ける姿勢こそが、野津先生の教育実践の核となっている。

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