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自身が出演した戦争に関する報道番組を通じて、メディアを捉え直す授業

2024年度開講科目早稲田大学ティーチングアワード
総長賞受賞
対象科目:メディア実践講座 II (E)

受賞者:三浦 俊章


本授業は、戦争という極限状況を手がかりに、メディアとジャーナリズムの役割や限界を多角的に考察することを目的とした講義である。シラバスでは、第一次世界大戦以降の戦争報道を軸に、政治・社会とメディアの関係性を歴史的にたどりながら、現代の報道が抱える課題を捉える構成が示されている。理論や概念を一方的に学ぶのではなく、具体的な事例を通して、メディアがどのような条件のもとで情報を伝えてきたのかを理解することが到達目標とされている。

授業では、NHK のドキュメンタリーや海外のノンフィクション映画などの映像資料を用いながら、戦争報道のあり方を検討していく。加えて、三浦先生自身の記者経験を踏まえた解説が随所に加えられ、報道がどのような判断や制約のもとで成立しているのかが具体的に示される。映像視聴後には問いかけや意見交換の時間を設け、表現の違いや立場性について考える機会が用意されている。理論・歴史・現場の経験を往復しながら、学生がメディアを受け取る側としての自分の姿勢を問い直すことを目指した授業である。

戦争という極限状況から、メディアを捉え直す授業設計

三浦先生の授業では、メディアを抽象的に定義するのではなく、戦争という極限状況を通してその本質を考えさせる構成がとられている。三浦先生は、「私がワシントンにいたときに、ちょうど 9.11 という非常に劇的な事件があって、それと政治とメディアの関係が鋭く問われた」と振り返り、「やっぱり戦争とジャーナリズムという極限状況のことを中心に話した方が、メディアの全体の問題がわかるかなと思いました」と授業設計の背景を語る。

授業では、第 1 次世界大戦から現代までを射程に入れ、「それぞれにおける戦争の歴史と、それをジャーナリズムがどう報道してきたか」を扱っている。加えて、三浦先生自身が記者として取材・出演したテレビ討論番組やラジオ番組の映像を提示しながら、「自分がどうやって何を考えて、どう報道したかということを学生に伝える」形で授業を進めている。

三浦先生にとって戦争は「メディアをどう教えるか」を考えるための入口である。極端な状況を扱うことで、報道の構造や立場性が浮かび上がり、学生はメディアを自分自身の問題として捉え直すことになる。実体験と歴史的事例を手がかりに、メディアの役割と限界を考えさせる点に、この授業の大きな特徴がある。

自身が関わった報道を教材化し、メディアを読み解く視点を育てる授業設計

三浦先生の授業では、自身が関わった報道をそのまま教材として用い、メディアを多角的に捉え直す設計がなされている。三浦先生は、「私自身の経験した、当時撮っていた、私が出たテレビの討論番組とか、あるいはラジオの番組の録画録も残っていました」と語り、それらを授業内で提示している。

これらの映像や音声資料は、「自分がどうやって何を考えて、どう報道したかということを学生に伝える」ための素材として位置づけられており、完成されたニュースとしてではなく、判断や思考の過程を含むプロセスとして報道を捉える視点を学生に提供している。

三浦先生は、こうした自身が出演した報道番組を用いた授業によって、学生の反応に変化が生まれていると語る。「このフィルムを見せた途端に、もう一気に和んで、雰囲気が非常に変わりました」と振り返り、「映像は先生と学生の距離を縮める」と、その効果を実感しているという。実際、「ただこの映像を見ることによって、先生に対してすごく親しみを持って、いろんなことを話しかけてくる」ようになったと述べており、自身が出演した報道番組を学生との関係性を柔らかくほぐす教材としても、継続的に活用している。

新聞記者としての技法を生かし、学生の注意を引き続ける授業設計

三浦先生の授業には、新聞記者として長年培ってきた「読ませる工夫」が色濃く反映されている。三浦先生は、「新聞記者の仕事は読者の興味をひく工夫が大切です」と語り、「書き方とか、導入部とか、話の運びとか、そういうものがひょっとしたら授業に活きたのかもしれません」と振り返る。

授業設計において特に重視しているのが、学生の注意を引きつけ続ける構成である。三浦先生は、「パワーポイント、印刷して配る教材、映像、講師自身の語りという、この 4 つがどういうふうに組み合わせたら学生の関心を引くかっていうところが一番の工夫のしどころです」と述べ、複数の要素を意識的に組み合わせている。

とりわけ重要なのが、口頭での語りである。三浦先生は、「結構肝になるのは、やっぱり口頭で話す部分なのです」としたうえで、「疑問を発して、ちょっと考えさせておいて進める」と説明する。また、その語り方を「一種謎かけみたいなこと」と表現し、「落語の枕みたいな形で」注意を集める工夫をしているという。

さらに、「トピックセンテンスというか、キーワードや決め台詞みたいなものがちゃんとあった方がいい」と語り、「まずはっきりシャープに伝えることが大切です」と強調する。新聞記者として身につけた導入や要点提示の技法が、学生の記憶に残る授業づくりを支えている。

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