Waseda Institute for Sport Sciences早稲田大学 スポーツ科学研究センター

その他

所沢地区 スポーツサイエンス研究会(2012年度)

第118回 3月14日(木) 16:30より

演題

Recovery of immune function after exercise

演者

Dr. Jonathan Peake (Queensland University of Technology)

内容

Exercise is accompanied by various physiological demands that influence cells and soluble factors of the immune system. In particular, exercise increases circulating blood, body temperature and the rate of metabolism. Many of these responses are dependent on stress hormones (e.g., catecholamines, cortisol and growth hormone), and to a smaller extent, cytokines (e.g., IL-6, TNF-alpha). These factors not only influence immune changes during exercise, but can also affect more prolonged immune changes in the hours after exercise. Most studies in exercise immunology have investigated changes of immune cell counts and function and circulating cytokines up to 2 hours after exercise, with comparatively few studies extending beyond this time point. Recovery of immune function in the hours after exercise is potentially important, because this period has been termed ‘the open window’ during which athletes may be more susceptible to infection. Although this theory is appealing, there is currently relatively little evidence to support it. Several studies have assessed the effects of repeated bouts of exercise and the short- versus long-duration recovery on immune cell counts and function and circulating cytokines. Other studies have evaluated the cumulative effects of consecutive days of exercise on the immune system. In this presentation, I will review the findings of this research and present new data, with reference to the concept of restoration of immunity following exercise.

第117回 兼 2012年度 修士論文発表コンテスト  2月18日(月) 13:30より

演者

試合場面における円陣行動が持つ有用性とその機能の解明-大学女子バスケットボールを対象として-  /日比 千里(岡研究室)
大学生アーチェリー選手における心理的競技能力の特徴-性別、競技レベルの影響から-  /岡村 静香 (奥野 研究室)
スクワット実施条件が腰部挙動及び体幹筋活動に与える影響  /九十歩 和己(金岡研究室)
大腿部の圧迫が膝関節伸展トルクに及ぼす影響  / 松本 奈々(川上研究室)
中学校体育における外部指導員導入の有効性―現代的なリズムのダンスを事例に―  / 望月 拓実(木村研究室)
大学ラグビー場の地域共同利用に向けた管理システムに関する研究  / 李 鍾基(作野研究室)
わが国における「スポーツ浄化」運動に関する研究:戦前期日本の学生運動との関連に着目して  / 下山 竜良(友添研究室)
プロレスの社会学的考察-スポーツと文明化/興奮の探求より-  / 斎藤 文彦(トンプソン研究室)
健康成人における血中ビタミン D濃度と体力との関連  / 張 玉萍(樋口研究室)
バスケットボール選手のジャンプ能力の発達  / 星川 精豪(広瀬研究室)
事象関連電位を用いた運動学習研究  / 對間 直也(正木研究室)
プロスポーツクラブにおける組織間構造の固有性に関する理論的考察:スポーツマネジメント領域への組織間関係論の適用可能性の検討  / 足立 名津美(武藤研究室)
ライフセービングにおけるボードパドリング動作中の筋活動  / 山地 智仁(村岡研究室)
野球のバントにおける打速速度を最小化させるインパクトパラメータ  / 安藤 義人(矢内研究室)
中学校体育授業における疾走能力向上のための短距離走の学習指導プログラムの開発  / 鈴木 康介(吉永研究室)
国内水球競技選手における発育および競技経験による身体的特徴の変化  / 飯塚 哲司 (鳥居 研究室)

入賞者

1位:鈴木 康介(吉永研究室) 中学校体育授業における疾走能力向上のための短距離走の学習指導 プログラムの開発
2位:安藤 義人(矢内研究室) 野球のバントにおける打球速度を最小化させるインパクトパラメータ
3位:足立 名津美(武藤研究室) プロスポーツクラブにおける組織間構造の固有性に関する理論的考察: スポーツマネジメント領域への組織間関係論の適用可能性の検討
4位:對間 直也(正木研究室) 事象関連電位を用いた運動学習研究

第116回 1月9日(水) 16:30より

演題

空間における「上下」の認識-重力、外界、身体情報の相互作用-

演者

和田佳郎 先生 (奈良県立医科大学生理学第一講座 講師)

内容

空間における「上下」について考えてみる。上下は、①重力方向(物が落下する方向)、②外界の上下(天井と床、空と陸)、③身体軸(頭と足)によって決まり、それぞれ耳石器、視覚、深部感覚が関与している。①②③の関係が正しく認識されない状況をパイロットの世界では空間識失調、臨床医学の分野では平衡障害と呼んでいる。演者は空間職失調や平衡障害のメカニズムを明らかにする目的で、健常人、トップアスリート、平衡障害者などを対象に、過重力、微小重力、身体傾斜、直線運動など各種直線加速度条件下における上下の認識や眼球運動を測定している。例えば、左右に20度傾いた視覚情報により健常人では上下の認識に2~4度の誤差が生じるが、体操のトップアスリートは正確であった。この上下の認識に対する視覚効果は健常人では重力(μG~2G)の影響を受けなかった。また、頭部を左右に傾斜させると傾斜感覚や回旋性眼球運動が生じるが、健常人では耳石器入力が85%、頸部深部感覚入力が15%関与していた。現在、これらのデータを基にして平衡障害者を対象とした臨床研究への応用を目指している。本研究会ではこれまでの研究内容を紹介するとともに、スポーツ科学への展開について議論したい。

第115回 11月15日(木) 16:30より

演題

運動指導者の効果的な相互作用行動のあり方

演者

深見 英一郎 先生 (早稲田大学スポーツ科学学術院 准教授)

内容

スポーツ教授学は、学校の体育授業だけでなく、教育的に行われる運動部活動や地域でのスポーツ活動も対象として、青少年を体育・スポーツに動機づけ、その能力を習得させるための指導のあり方を究明することを目的としている。具体的には、「カリキュラム研究(いつ、どのような運動・スポーツを取り上げ、何を学ばせることにより、どのような人間を育成するのか)」と、「学習指導研究(どのようなゲームや練習メニューを与え、どのように働きかければ学習者が意欲的に取り組み、技術を習得できるのか)」という二つが中心的な研究課題となる。 ここでは後者の学習指導研究に焦点づけて、より多くの青少年に運動・スポーツを指導する機会を提供する「体育授業」を対象に、次のような2つの研究課題について紹介する。①単元過程で生徒から高く評価される体育授業を実践するために、教師は授業をどのように組織し、生徒に対してどのような働きかけをする必要があるか? ②授業中、教師がどのように賞賛やアドバイスを与えれば生徒により伝わりやすいか、また生徒の学習成果により肯定的な影響を及ぼすか? これらの結果をふまえて、運動指導者の効果的な相互作用行動のあり方について提案したい。

第114回 10月30日(火) 16:00より

演題

陸上短距離走選手における下肢骨格筋サイズの特徴

演者

杉崎 範英 先生 (早稲田大学スポーツ科学学術院 助教)

内容

身体運動は、身体の各関節の回転力によって引き起こされる。関節の回転力は、骨格筋の収縮力が関節のテコ構造を介して身体外部に発揮されたものである。したがって、身体運動の出来栄えは骨格筋の発揮張力の大きさに左右されることとなる。このことから、エリートスポーツ選手における各筋の発達度合いの特徴を明らかにすることによって、当該スポーツにおいてパフォーマンスの差に関わる筋、すなわちトレーニングの対象とするべき筋を特定することができると考えられる。また、筋の発達度合は、スポーツ動作中に身体内部に課される力―筋や腱の張力あるいは関節間力―の分析において不可欠な情報であるセグメント特性―セグメントの質量・質量中心・慣性モーメント―に影響を及ぼす可能性もある。現在、発表者は様々なスポーツ選手における下肢骨格筋サイズの特徴についての調査を進めている。本研究会においては、スポーツ選手における骨格筋の発達度合を調べることの意義を解説したうえで、測定例として、陸上短距離走選手における下肢骨格筋サイズの特徴に関する知見を紹介する。

第113回 2012年9月27日(木) 15:00より

演題

英語論文の書き方

演者

ミリンダ・ハル (カクタス・コミュニケーションズ株式会社)

内容

目的:
英語論文を書くにあたっての最も基本的かつ重要な技術と素養を学び、これまで「とりあえず」「なんとなく」英語論文を書いていた方が、正確な知識と体系的な考えのもと、自信を持って英語論文を執筆できるようにすること。

対象:

  • 英語論文の正しい書き方を基礎から学びたい大学院生や若手研究者
  • 英語論文の正しい書き方を大学院生や若手研究者にアドバイスする際の知識を獲得したい教員

内容:

  • 英語論文を書く前に必要な準備と心構え
  • 英語論文の構成方法
  • 日本人研究者による英語論文を用いた事例研究

※ 講演は日本語にて行います(講演時間: 2時間~2時間半程度)
※ 参加希望の方は9月20日(木)正午までに宮本までメール([email protected]) にて事前申込みを行ってください (事前申込み無しでの参加(当日参加)も可能ですが、資料が不足する可能性があります。)

第112回 2012年7月25日(水) 17:00より

演題

筋疲労の最新トッピクス

演者

森谷 敏夫 先生 (京都大学大学院人間・環境学研究科教授)

内容

最新のGated 31P NMR(核磁気共 鳴)では1ミリ秒の精度で筋エネルギー代謝反応が記録できる。新知見によると短収縮時のATP供給にクレアチン燐酸(PCr)の分解・再合成 が30ミリ秒以内で完了し、以前報告されている実に40倍以上もPCrが利用されることが明らかになった以前はPCrの利用率が顕著に低く見積もられたので、運動の開始初期のエネルギーはPCrが主体であるとされたが、これは嘘である(PCrの筋含有量ではまったく足りない)。筋収縮に伴う一連の化学反応は筋小胞体のカルシウムの動きに連動しており、ATPの再合成やPCrの分解・再合成はほぼ瞬時に筋グリコーゲンの分解によって成立している。つまり、筋グリコーゲン含有量がエネルギー供給のバッファとして存在し、これが消費されつつ、有酸素系のエネルギー供給機構で再合成されていくのである。筋をどれだけ肥大させても、水を押す力はほとんどいらないのに、なぜ、北島康介選手や他の短距離選手が筋トレをやるのか?それは、「筋力をアップさせることよりも、グリコーゲンの燃料タンクを大きくするためにやっている」のが正解なのである。

第111回 7月20日(金) 16:30より

演題

Muscle Damage and Adaptation

演者

Professor Kazunori Nosaka(Edith Cowan University, Australia)

内容

I have been studying muscle damage induced by eccentric contractions since 1989, but have not found answers to the questions that I had more than 20 years ago such as what causes muscle soreness perceived days after exercise, why eccentric contractions not concentric contractions result in muscle damage, and whether muscle damage and muscle soreness are necessary to become stronger. The more I study, the more I realise how much I do not know.I will review muscle damage studies in the last 20 years mainly based on our papers, and explain what we have clarified so far, and what remains to be investigated. I will particularly focus on our studies in the last 5 years, which will clarify what I am thinking and where I am heading to in the next 5 years.I will also talk about research in Australia. I look forward to challenging questions and fruitful discussion.

第110回 7月12日(木) 16:30より

演題

Energy metabolism and glucose metabolism in mice under late onset, short term dietary restriction

 

演者

Dr. Satomi Miwa(Newcastle University)

内容

Chronic dietary restriction (DR) has been shown to extend lifespan in a variety of laboratory animals and delay the onset of age-related diseases. It has also beneficial effects on glucose homeostasis and insulin sensitivity: these factors show rapid and robust improvements when rodents were crossed over from an ad libitum (AL) diet to DR in mid life.We aimed to determine the metabolic effects and the reversibility of glucose metabolism in late onset, short term DR in mice. DR mice displayed larger diurnal variations in physical activity levels and body temperature after 3 months of DR. The body temperature of DR mice was lower than AL mice especially late during the dark phase. Daily energy expenditure, determined by a doubly labelled water method, was lower in DR mice after 3 month of DR; however the effect was fully explained by the reduction in body mass.As for glucose metabolism, we examined whether the beneficial effects induced by short-term exposure to DR can be retained as a ‘metabolic memory’ when AL feeding is resumed (AL-DR-AL) and vice versa. In females, body and fat mass were proportional to the changes in feeding regime but plasma insulin and glucose tolerance were unaffected by the feeding. In contrast, in male mice, glucose tolerance and plasma insulin levels were reversed within 6 to 12 weeks after the change in feeding resumes. When AL males returned to original AL intake following 5 months DR (AL-DR-AL), glucose tolerance was significantly better compared to before the initiation of DR. This implies that some of the beneficial effects induced by a period of DR in adult life may be beneficial, even when free feeding is resumed at least in males. However, under continuous DR, lifespan extension was more prominent in females than in males.

第109回 6月28日(木) 16:30より

演題

Effects of Heightened Sympathetic Nerve Activity on Neuromuscular Activity, Memory Function, and Motor Learning

演者

Minoru Shinohara, PhD, FACSM (Georgia Institute of Technology)

内容

Sympathetic nerve activity is heightened acutely due to psychological and physiological stresses as a fight-or-flight response. What is the impact of heightened sympathetic nerve activity on motor function? How about cognitive function? What are the underlying physiological mechanisms if it influences neuromuscular and cognitive functions? To gain insights into these intriguing issues, we have been examining the potential effects of physiologically heightened sympathetic nerve activity on neuromuscular activity, memory function, and motor learning in healthy young adults. Specifically, I am planning to discuss recent data regarding the effects of acute physiological heightening of sympathetic nerve activity on motor unit discharge characteristics, spinal reflexes, corticospinal excitability, intracortical excitability, explicit memory, and procedural motor learning.

第108回 6月18日(月) 12:10より

演題

エックス線透視連続撮影を用いた足部・足関節の運動解析

演者

深野 真子 先生 (早稲田大学スポーツ科学学術院 助手)

内容

足部のアーチ構造は,多くの骨や靭帯組織からなり,力学的に優れた構造をなしているといわれている.特にスポーツの場面においては,アーチ構造が荷重負荷に対して機能的に変形することにより,衝撃を吸収したり接地面への適応を図ったりする働きを担うといわれている.そのため足部の構造や機能に関する運動学的なデータは,足部の機能の検討や外傷障害の発生メカニズムやその予防を考える上で重要な情報となりうる. 足部アーチの運動学的研究は,対象部位の動きが微細であること,足底に厚い脂肪組織があることなどから,動作解析手法として一般的になりつつある光学的手法では計測が技術的に困難であった.そのため近年,エックス線透視連続撮影により,足部を対象とした計測が試みられるようになっている. 発表者はこのエックス線透視連続撮影が足部アーチの運動学的な検討に適した方法であると考え,ここ数年,着地動作を行った際の足部縦アーチの変位挙動について詳しく解析を行ってきた.これまでに行った検討は1)内側アーチと外側アーチの変形様式の差異,2)アーチ変形の性差などがある.これらの実験によって内側アーチと外側アーチが異なる変形様式を有することや,男女によってアーチの変形度合いが異なることなどが明らかとなっている.さらに,距腿関節・距骨下関節を含む足関節複合体については,3D-2D model-based registration techniqueを用いた三次元解析を行い,それぞれの関節の動きの特徴を明らかにしている. 発表においては,これまでに我々が行った足部アーチ変形および足関節複合体のキネマティクスに関する実験の結果を紹介するとともに,これからの研究の展望として三次元解析の必要性についても紹介をする.

第107回 6月11日(月) 12:10より

演題

「身体を持つ」ということの不思議-「身体所有権」テーゼの再考から

演者

竹村 瑞穂 先生 (早稲田大学スポーツ科学学術院 助手

内容

イギリスの哲学者ジョン・ロックは、人間の身体に関しても私的所有権を認めた。いわゆる「身体所有権」テーゼである。 スポーツの場においても、身体所有の問題はいろいろな場面で顕在化する。たとえば、国によってスポーが管理されていた時代・場所においては、選手の身体は国家によって所有・支配されていた。一方、自由意志による身体改造(ドーピング含む)などは「自己による身体の所有」の問題と捉えられ、改めて「身体所有権」概念を問い直す必要性をもたらした。というのも、「自分の身体であれば何をしても自分の勝手」という見解が濫用されるようになったからである。 このような状況をふまえたとき、そもそも「所有の対象としての身体」とは、いったいどのような概念なのか深く問い直されざるを得ない。実際、「身体所有権」テーゼにおける「身体」の概念については、いまだ解決を得ていない疑問がある。この概念が明らかになることにより、「身体所有権」テーゼを深く理解することができよう。また、それによって、身体の所有をめぐる諸問題に迫ること、更に、スポーツ界に内在する具体的な諸問題について考察することも可能となろう。 そのための基礎的考察として、本発表では、ロックの「身体所有権」テーゼにおける「身体」とは何なのか、読み解くことを中心に据える。

第106回 6月4日(月) 12:10より

演題

ハムストリングスの機能分化を背景とした肉離れ予防への取り組み

演者

小野 高志 先生(早稲田大学スポーツ科学学術院 助手)

内容

ハムストリングスは大腿二頭筋長頭 (BFlh)・短頭 (BFsh)、半腱様筋 (ST)、半膜様筋 (SM)の 4 筋から構成される協働筋としてスポーツ活動において重要な役割を果たすとされている。しかし、演者らのこれまでの研究から、これらの筋は個々に異なる構造的・機能的特徴を有し、作用する関節や収縮形態に応じて異なる振る舞いをする機能分化が存在することが明らかとなってきた。一方で、ハムストリングスは自発的な筋損傷である肉離れが特にBFlhにおいて頻発し、スポーツ活動中に発生する急性外傷の中でも特に発生率が高く、また、一旦治癒してスポーツ活動に復帰しても再発するケースが多い。故に、ハムストリングス肉離れの病態から受傷機転や危険因子を抽出し、その発生に関与する身体の構造や機能を照らし合わせながら傷害発生の予防的アプローチを検討していくことが、受傷率の低下とスポーツパフォーマンスの向上につながると考える。本回では演者がハムストリングス各筋の機能分化を背景に近年取り組んでいる、肉離れが頻発する全力疾走動作における各筋の伸張性ストレスの推定に関する研究成果と、肉離れ発生リスクの低下と競技力向上に向けた筋力トレーニング介入の効果検証に関する研究成果について紹介する。

第105回 5月28日(月) 12:10より

演題

わが国における勝利志向のスポーツ思想に関する研究―スポーツにおける「根性」の成立および変容に着目して―

演者

岡部 祐介 先生(早稲田大学スポーツ科学学術院 助手)

内容

前世紀に中心的であった近代スポーツは、その論理・構造の限界と問題性を顕在化させていることが考えられる。なかでも、勝利志向の競技スポーツでは、勝利や名誉に多大な利益が付加され、ドーピングを例に競技者および関係者の倫理的逸脱が深刻化しているといえる。スポーツにおいて勝利に絶対的な価値を置き、勝利のためには手段を選ばず、勝利を最優先的に希求することをスポーツにおける「勝利至上主義」と規定したとき、それを克服していくための方策の提示が求められよう。発表者はこれまで、日本的スポーツの構造的特質を明確化することを課題とし、わが国において競技スポーツがもつ価値や勝利の意味といった、いわば競技スポーツの思想的営為に着目し考察を行ってきた。この一連の研究のなかで、根性(論)の成立に着目し、その内実の変容過程の明確化を試みた。1960年代における「根性」の変容には、スポーツとりわけ東京オリンピックが重要な役割を果たしたことを明示した。本発表では、その後スポーツ根性論が変容していく根底にはどのような問題が含意されていたのかを、スポーツにおける「勝利至上主義」との関係で考察している最近の取り組みについて紹介する。

第104回 5月21日(月) 12:10より

演題

下腿三頭筋の筋腱複合体長変化の推定における課題と新たな推定法提案にむけた試み

演者

岩沼 聡一朗 先生 (早稲田大学スポーツ科学学術院 助手)

内容

筋は腱を介して骨に停止しており、筋と腱から成る筋腱複合体の伸び縮みは関節運動と対応する関係にある。身体運動中の筋腱複合体長変化は、その際の筋や腱のはたらき(e.g. 力‐長さ関係)を理解する上で重要な解剖学的因子である。それゆえ、多くの先行研究において身体運動中の筋腱複合体長変化が示されてきた。歩行や走行といった基本的な運動において下腿三頭筋は重要な役割を担うが、その筋腱複合体長変化の評価には成人屍体の実験から作成された推定式が用いられ、独立変数には足関節角度と膝関節角度が採用されている。特に足関節角度の定義では、足部を剛体と仮定している。しかし、実際には足部は変形特性を有するため、その変形の程度が下腿三頭筋の筋腱複合体長変化に影響をおよぼすことが予想された。そこで演者らは、磁気共鳴撮像法を用い人間生体を対象に、受動底背屈時および底屈トルク発揮時の下腿三頭筋の筋腱複合体長変化を実測し、推定値と比較した。その結果、両者は一致せず、特に力発揮時にはその差が顕著であった。足部の変形は力発揮時に顕著であり、その変形の程度は筋腱複合体長変化と関連していることが示された。また、既存の推定式では、推定式作成時に成人より体格が小さい子どもについて考慮されていない。そこで演者らは、子どもから成人まで適用可能な新たな推定式の作成に取り組んでいる。当日は、演者らの最近の取り組みについても紹介したい.

第103回  5月10日(木) 16:30より

演題

小児肥満と脳の健康

演者

紙上 敬太 先生  (早稲田大学スポーツ科学学術院 助教)

内容

昨今、子どもの運動量は減少し、また食生活の欧米化が急速に進み、それに伴う体力の低下、肥満児の増加が懸念されている。慢性的な運動不足や肥満が、現代の主要な健康問題の一つである小児生活習慣病の引き金になることは周知の事実である。さらに、近年の研究では、肥満の子どもは標準体重の子どもに比べて、学力が低いことが示されている。つまり、標準体重の維持は子どもの脳の健康、脳の健全な発達に重要なのかもしれない。しかしながら、子どもを対象に肥満度と脳の健康の関係を検討する研究は端緒についたばかりであり、未だ不明な点が多い。発表者は、子どもを対象に、認知機能という側面から肥満度と脳の健康の関係に関して研究を進めている。概して、発表者の一連の研究は小児肥満と認知機能の間に負の関係があること、その負の関係は学力と密接に関わる前頭機能(実行機能)に対して顕著に認められることを明らかにしている。本研究会では、認知課題のデモンストレーションを交えながら専門外の人たちにも理解してもらえるように認知機能の評価方法を解説し、小児肥満と認知機能の関係に関する最新の知見を紹介する。

第102回 4月12日(木)13:00より

演題

工学者が見た神経・筋そして脳の科学と技術〜複眼をもてば研究が楽しくなる〜

演者

赤澤堅造 教授(大阪工業大学工学部 大阪大学名誉教授)

内容

スポーツ,ロボット,福祉に関わる学問を修め, 世の中で役に立つようにと,日夜,遊びと勉学と研究を行っている学生諸君を対象としてお話をします.ヒ トの動きの仕みを解き明かす科学や,不自由である機能を補う工学技術を紹介して、諸君の知的好奇心を刺激したいと思います.

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/fsps/rcsports/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる