RCLIPイブニングセミナー(Waseda RCLIP Evening Seminar)
『データ・ガバナンスに関する欧日比較』
- 主 催:早稲田大学知的財産法制研究所
- 共 催:早稲田大学比較法研究所、早稲田大学法学部、早稲田大学法学研究科
- 日 時:2025年6月9日(月)18:00-19:45
- 場 所:大隈小講堂
- 言 語:日本語・英語
- 講演者:Nari Lee(ハンケン経済大学・教授)
- 世話人:上野 達弘 (比較法研究所研究所員、早稲田大学法学学術院教授)
- 参加者:51名(学生10名)
Lee教授は、本年4月から6月まで本学に訪問学者として滞在されていましたが、今回その締めくくりに、データの共同利用や開示に係るデータ・ガバナンスに関し、欧州と日本の比較分析をテーマとする講演をいただきました。具体的には、現在執筆中の研究論文をもとに、データ共有における「公正性(fairness)」について分析したものです。すなわち、Lee教授は、欧州連合(EU)のデータ法は単一の法律ではなく、複数の法制度(GDPR、Data Act、Digital Markets Actなど)からなる包括的な枠組みであるが、こうしたデジタル関連法規においては、「公正」(fair)という語が中心的な理念として頻繁に用いられており、Digital Markets ActおよびData Actでは、それぞれ90回以上・60回以上にわたって、「fair」や「unfair」という語が使用されていることを指摘した上で、これらを俯瞰することで、「データの公正なアクセスと利用」の理念が全体に貫かれていることが分かると述べました。
これを日本と比較すると、日本の法制度においても、EU法と比較可能な条文が見受けられるとしながらも、特に、データのガバナンスという点において、日本では明確な枠組みが未整備であることを指摘されました。
当日は、学内外の研究者や学生が多数参加し、活発な議論が行われ、非常に有益なひとときになりました。
(文:上野 達弘・比較法研究所研究所員)