MaaSプラットフォームと自動運転事故の民事責任-日独比較-
【主 催】早稲田大学先端技術の法・倫理研究所
【共 催】早稲田大学比較法研究所、早稲田大学法学部
【日 時】2024年9月17日(火)13:00~17:00
【場 所】早稲田キャンパス 8号館B107教室 およびZoom聴講のハイフレックス
【報告者】クリスティアン・アルムブリュスター(ベルリン自由大学法学部教授)、山口斉昭( 早稲田大学先端技術の法・倫理研究所員・法学学術院教授)、吉本篤人 (沖縄大学経法商学部教授(Zoom))、肥塚肇雄( 早稲田大学先端技術の法・倫理研究所員・法学学術院教授)、前田太朗(中央大学法科大学院教授)
参加者:18名(うち学生4名)
2024年9月17日(火)、早稲田大学にてシンポジウム「MaaSプラットフォームと自動運転事故の民事責任-日独比較-」が開催されました。今回は自動運転車両による事故が発生した際の民事責任の在り方に関し、国内外で最先端の研究を行っている研究者の方々をお招きし、特にドイツ国内のMaaS (Mobility as a Service)プラットフォームにおける法的規制の在り方と、日本国内の法的規制の在り方を比較しつつ報告・議論が行われました。
開会挨拶は早稲田大学先端技術の法・倫理研究所の下山憲治所長が行い、先端技術に関する法的規制の重要性が強調されました。続いて、世話人の肥塚肇雄教授がシンポジウムの趣旨について説明しました。
シンポジウムでははじめに記念講演が行われ、ベルリン自由大学法学部教授のクリスティアン・アルムブリュスター教授がドイツのMaaSプラットフォームと自動運転に関する法令の動向が紹介されました。ドイツではノルトライン=ヴェストファーレン州などで先行してMaaSプラットフォームの構築が進んでいますが、ヨーロッパ全体では統一的な法規制が不足しており、事故時の責任や賠償について不明確な点が多いことが問題視されています。また、自動化された運転システムと完全自律運転システムの不法行為責任について焦点が当てられ、運転者や保有者の責任の所在についての説明がありました。
シンポジウムの第一部では、早稲田大学先端技術の法・倫理研究所員・法学学術院の山口斉昭教授が日本における自動運転の民事責任について報告しました。日本では「官民ITS構想・ロードマップ2017」や「自動運転に係る制度整備大綱」が策定され、自動運転についても運行供用者責任が重視されていることが説明されました。次に、沖縄大学商学部の吉本篤人教授がドイツ国内の自動運転事故の民事責任について報告されました。報告では、将来的に完全な自律走行車が導入された際にも保有者責任に重きを置くドイツの法規制の在り方は維持されるのではないかと指摘されました。
第二部では、日本とドイツのMaaSプラットフォームと自動運転事故の責任について比較が行われました。まず、当シンポジウム世話人である肥塚肇雄早稲田大学先端技術の法・倫理研究所員・法学学術院の肥塚肇雄教授がMaaSプラットフォームでの旅客運送契約に関する責任について説明され、また自動運転車事故が抱えるリスクの在り方を3つに分類して責任を考慮すべきと論じられました。第二部の2人目の報告は中央大学法科大学院の前田太朗教授が務め、ドイツの法規制における自動運転事故の責任について述べ、速度に基づく危険性の考慮がされていることの問題点について指摘されました。
質疑応答では、低速度車両に対する自賠責保険の適用や、MaaS事業者とシステム管理者の責任の区別についての質問があり、活発な議論が展開されました。最後に、比較法研究所幹事の大橋麻也教授が閉会挨拶をされ、シンポジウムの意義や自動運転に関する法規制の重要性について述べられ、盛況のうちに終了しました。
(文:小阪真也・比較法研究所助教)