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【開催報告】RCLIPイブニングセミナー「AI時代における著作者性(authorship)と著作者人格権」が開催されました

RCLIPイブニングセミナー「AI時代における著作者性(authorship)と著作者人格権」

主 催:早稲田大学知的財産法制研究所(RCLIP)
共 催:早稲田大学比較法研究所、早稲田大学法務研究科
日 時:2023年11月2日(木)18:00~19:40
場 所:早稲田大学3号館4階405教室& Zoomウェビナー
言 語:英日逐次通訳
講演者:Prof. Mira T. Sundra Rajan(米国カリフォルニア大学デービス校客員教授)
コメンテータ:上野達弘(早稲田大学法学学術院教授、比較法研究所研究所員)
参加者:45人(うち学生28人)

 

2023年11月2日(木)、早稲田大学にて、イブニングセミナー「AI時代における著作者性(authorship)と著作者人格権」が開催されました。今回のイブニングセミナーは、米国カリフォルニア大学デービス校客員教授Mira T. Sundra Rajan先生を数年ぶりに早稲田大学へお招きし、AI時代における著作権法の問題、特にAIと著作物性、著作者人格権に関わる問題について話をいただきました。日本側から、上野達弘先生(早稲田大学法学学術院教授)がコメントを行いました。

本講演において、Rajan先生は、以下の課題を中心に検討を行いました。すなわち、①著作者人格権とは何か、②AI生成物に著作者人格権及び実演家人格権が発生するのか、③もしそうであれば、誰が権利者となるのか、④著作者の視点から見て、なぜこの問題が今まで学会等で議論されてこなかったのか、⑤実務上、著作者人格権がどうなっているのか、⑥AIの発展と著作者人格権はどういう関係にあるのか、という6つの課題です。

まず、著作者人格権とは何かについて、Rajan先生は、1709年から1710年にかけて制定されたアン法及び1769年のMillar V. Taylor判決を取り上げて、著作権がイギリスで認められるようになった歴史的経緯及び著作者人格権が初めてイギリスの裁判所で認められた歴史的経緯を説明しました。しかし、後者については、その判断が1774年のDonaldson v. Beckett判決で覆されました。その後の19世紀頃、著作者人格権はフランスやドイツから世界へ広がっていき、1928年にベルヌ条約にも採択されました。

次に、AI生成物に著作者人格権及び実演家人格権が発生するのかについて、多くの国では、まだ明確とした法規範を定めていません。イギリスでは、こうした法律規範が存在しますが、そこでは、AIを1人の著作者と見なすか、それとも、AIを人間が創作する道具と見なすかについて、明確に区別をしていません。また、同規範は、AI開発者に対して50年の保護期間を与えますが、人格的権利は明確に除外されています(1988 年著作権、意匠および特許法)。

これに対して、アメリカ著作権局は、人間によって創作される作品以外は著作物として保護しないというスタンスを表明しています。同時に、AI生成物を著作物として登録しようとして失敗した事例(Zarya of the Dawn事件)も現れており、その登録が却下された理由は、創作のプロセスがユーザーによってコントロールされないからです。そこで、インセンティブを確保するために、アメリカ著作権局は、AI生成物の編集物を著作物として保護することを図っています。

それから、誰がAI生成物の権利者となるのかについて、Rajan先生は、機械に「精神」が存在することを証明できない限り、AIそのものが人格権を持つことはできないとし、AIを利用して作られた作品の作者及びAIの作者が人格権を持つ可能性があると主張しました。

最後に、AIの発展と著作者人格権の関係については、Rajan先生は、AIが、真実、歴史、想像力といったものを破壊するリスクがあると説明しました。Rajan先生は、新たな技術の進展に伴って新たな侵害も現れることが予想され、例えば、権利者のアイデンティティがどうなるのか、一般の人格権がどうなるのかといった問題が生じうると説明し、講演を終えました。

続いて、コメンテータの上野先生は、韓国及び日本の著作権法を焦点に、以下のコメントを行いました。韓国では、会社に著作者人格権が認められた裁判例は非常に乏しいのに対し、日本では、会社が原告として著作者人格権侵害を理由とする損害賠償請求が認められた裁判例は22件程があるとコメントしました。日本では、会社の著作者人格権は、誰のどんな権利なのかという議論もあると説明しました。

(文:譚天陽・比較法研究所助教)

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