公開講演会「ドイツ刑法解釈学の方法について」
主 催:早稲田大学比較法研究所
日 時:2023年4月7日(金)16時00分~18時00分
場 所:早稲田キャンパス3号館 401教室
講演者:ルイス・グレコ(ベルリン・フンボルト大学教授)
通 訳:天田 悠(香川大学准教授)
世話人:松澤 伸(早稲田大学法学学術院教授、比較法研究所員)
参加者:15名(うち学生6名)

松澤法学学術院教授が講演の趣旨を説明
2023年4月7日、ベルリン・フンボルト大学のルイス・グレコ教授は、早稲田大学において、「ドイツ系法解釈学の方法について」と題する公開講演を行いました。
ルイス・グレコ教授は、2001年にドイツ・ミュンヘン大学のLLM・博士課程を経て、2008年に博士号、2010年に教授資格をそれぞれ取得後、2017年からベルリン・フンボルト大学教授に就任して、現在に至りました。グレコ教授は現在、ドイツの刑法学者、クラウス・ロクシンの体系書の改訂を担当しています。
今回の講演会において、グレコ教授は、ドイツ刑法の解釈論の内側・外側から俯瞰し、一人のブラジル人でありながらも、ドイツで法律を勉強した研究者としての彼だからこそ体験できることを語っていただきました。

講演中のルイス・グレコ教授
グレコ教授は、まず講演の趣旨を伝え、教授がドイツに留学することを決意し、ロクシン教授の門下に入る経緯を紹介しました。続いて、グレコ教授は、修士論文において扱った「特別知識」の問題についてロクシン教授と会話した経験から、あることについて気づきました。それは、ドイツ刑法が少数の偉大な思想家の間での一連の個人的な争いに尽きるものではなく、ドイツの刑法学者が常に構造化、差別化された、事例に関連する議論をしているうちに発展されてきたことです。
また、ドイツの刑法学界の外部と内部の視点のギャップをさらに敷衍するために、グレコ教授は、攻撃的緊急避難の正当化の基礎と限界を例に説明しました。グレコ教授は、ロクシン教授の教えを踏まえて、いくつかの架空の事例を検討しながら、あらゆる演繹は、現実世界の事案でテストされなければならないと指摘しました。

通訳を担当する天田准教授
最後に、グレコ教授は、混沌の背後にある秩序と根拠を解明する法解釈学には、法理論家と実務家の共同な努力が必要であることを述べ、講演を締めくくりました。
質疑応答において、ロクシン教授の目的合理主義的解決との関係、ドイツの犯罪論の体系の普遍的価値と他国においてその体系の受け入れ方、比較法考察を行う際に法制度の違いによる影響、立法者の視点と裁判の視点との関係、宗教的価値観が解釈に及ぼす影響などについて、奥深い議論がされました。
(文:周洪騫・比較法研究所助手)