シンポジウム「アメリカ最高裁とロバーツ・コート」
主 催: 早稲田大学比較法研究所アメリカ最高裁研究会
同志社大学アメリカ研究所第Ⅱ部門研究会
アメリカ法判例研究会
共 催: 早稲田大学比較法研究所・同志社大学アメリカ研究所
日 時: 2022年3月26日(土) 13:00~17:15
場 所: オンラインによる開催
参加者: 約65名(うち学生約10名)
比較法研究所では、2022年3月26日にシンポジウム「アメリカ最高裁とロバーツ・コート」をオンラインで開催しました。
このシンポジウムは、合衆国最高裁判所の半世紀ぶりの重要な先例変更として、今年6月にも予測される妊娠中絶の権利に関するRoe v. Wade判決(1973年)の変更をめぐる動向を共通の問題意識として、6つの論題についての報告と、指定討論者によるコメントを組み合わせた企画です。
第一報告では、小竹聡拓殖大学教授が、中絶規制立法が全米諸州で広がり、最高裁判所の裁判官の人的構成の変化から、中絶規制法を憲法違反とする先例の維持が困難とされている状況下で、先例変更がどの範囲まで及ぶかについての検討を報告し、紙谷雅子学習院大学教授から判例分析の視角として裁判官の政治的傾向が重視されることの問題点についてコメントがありました。
第二報告では、松本哲治同志社大学教授が、コロナ禍における個人の自由制限の事件において、シャドウ・ドケットの手法によって、口頭弁論もなく最高裁裁判官の過半数以下の不十分な検討で、重要事件が処理されている問題について論じ、水谷瑛嗣郎関西大学准教授から最高裁のドケット管理の傾向についてコメントがありました。
第三報告では、原口佳誠関東学院大学准教授(比較法研究所招聘研究員)が、ジョン・ロバーツ首席裁判官の司法観について、アンパイア論や司法ミニマミズム論の観点から分析し、松井茂記ブリティッシュ・コロンビア大学教授(比較法研究所招聘研究員)から司法府の公正と信頼の問題についてコメントがありました。
第四報告では、桧垣伸次同志社大学准教授が、アメリカ社会における批判的人種理論をめぐる世論の二分と最高裁の判例動向についての検討を行い、森口千弘熊本学園大学准教授(比較法研究所招聘研究員)からアメリカ社会における批判的人種理論への理解の問題点についてコメントがありました。
第五報告では、御幸聖樹同志社大学教授が、アメリカの行政組織における執行府と独立行政委員会の関係に関する最高裁判例の変容について検討し、沼本祐太京都大学特定助教から大統領交代による執行権の位置付けの変化についてコメントがありました。
第六報告では、宮川成雄研究所員が、合衆国最高裁の歴史的に重要な判例変更と比較して、ロバーツ・コートにおける銃規制、信教の自由、選挙権等の分野における判例変更の質的異同について検討し、金澤孝研究所員から判例拘束原理の表層的なレトリック化についてコメントがありました。
締め括りに、総合司会の秋葉丈志研究所員が総括コメントを述べ、質疑応答では活発な議論が展開され、有意義なシンポジウムになりました。
参考
開催案内