比較法研究所の共同研究会の一つである「英米刑事法研究会」の長年にわたる地道な判例研究の成果の第一弾が、このたび成文堂より刊行された。
本書は、2003年10月開廷期から2008年10月開廷期に至るまでの、米国連邦最高裁の刑事関係の判例の動向をまとめたものである。
編者の田中利彦によれば 、日本は第二次大戦後、米国を範とした刑事手続を採用したが、運用の実態は「対極にある」。ゆえに「わが国の刑事手続を再点検するためにも、アメリカの制度の実際の姿を正確に理解することが不可欠」である(本書・はしがき)。
本書は、序説で連邦最高裁の制度的な位置づけ、同裁判所に係属する刑事関係事案の類型、本書が扱う期間の刑事判例の概観を行う。その後、第1章以下、開廷期ごとに主要な判例を、逮捕、捜索・押収、証拠開示など論点ごとに整理している。
概観および簡にして的確な判例の要約と整理を示す本書は、米国の刑事手続法の実際の運用像をくっきりと日本の読者に示すものである。