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- 【著作紹介】『多様性と凝集性の社会学――共生社会の考え方(岡本智周 編著)』(文学学術院教授 岡本智周)
【著作紹介】『多様性と凝集性の社会学――共生社会の考え方(岡本智周 編著)』(文学学術院教授 岡本智周)
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- Tue, 21 Jul 2026

太郎次郎社エディタス、刊行日:2025/10/5、判型:四六判、ページ数:272ページ、ISBN:978-4-8118-0873-4
本書は、「共生」に関する議論の今日的な焦点を明確にし、その議論をもう一歩前進させることを目指しました。
著者たちの前著『共生の社会学』では、「社会的カテゴリの更新」という視点から共生を捉えましたが、本書では「凝集性(まとまり)をいかに確保するか」という問題に焦点を当てます。多様性の尊重と凝集性の確保を両立させようとするのが共生という現象であり、そのことの困難さを分析し吟味するのが共生社会論であるとするのが、本書の立場です。多様性の尊重のみが強調されれば、社会は分断され、個々の利害の対立が先鋭化します。一方で、既存の「まとまり」に固執するだけでは、新たな共生の形を生み出すことはできません。本書では、この「まとまり」の新たな創出についての理路を検討しました。
近年、多様性の尊重の重要性は広く認識され、社会的カテゴリの細分化が進められています。しかしそれを突き詰めた先にどのような社会を形成するのかという議論が手薄になっているのもまた現状です。「まとまり」についての無自覚さは、集団主義や全体主義と社会的凝集性とを容易に混同する事態を引き寄せています。あるいはまた、社会の秩序や制度を維持する方法を考える際に、「これまでなされてきたこと」に素朴に依拠する傾向を残すことになっています。しかしそれが多様性の尊重と凝集性の確保の両立なのでしょうか――本書ではこの問いを起点として、共生社会論を深めることとしました。
共生をめぐる議論がこのような状況に陥る要因としては、2つのことが考えられます。1つは、理念としての多様性の尊重がそのまま規範化されることで、むしろ対立を助長することです。世界は公正であるべきとする理念が原理主義的な信念に転化するだけでは、具体的な社会運営の実践には結びつきません。現実にはつねに理念との乖離が見られるものだからです。その結果、理想が実現しないことへの失望が広がり、シニシズムが蔓延します。共生を語ること自体を欺瞞だとするような言説を回避するためには、一歩ずつの漸進的な改善に耐える実直さを取り戻すことが求められます。
もう1つは、ナショナリズムへの回収です。ナショナリズムは分かりやすい「まとまり」として機能しやすく、結果的に共生の議論がその枠内に収まってしまいます。これは日本に限らず、アメリカ合衆国をはじめとする諸外国の社会に関しても顕著に見られる現象でしょう。「○○国民ファースト」「○○人ファースト」を声高に叫ぶ思考は、結局のところ、人と人のあいだに線を引き、概念化された社会的カテゴリのあいだに積極的に序列性を見出すことになります。
本書ではこうした状況を、社会学が問うべき課題として捉え、共生社会において確保されるべき凝集性のあり方についての検討を行いました。共生社会論をシニシズムとナショナリズムの双方から解放することに、本書のねらいがあります。
=目次=
本書のねらい──シニシズムとナショナリズムを掻い潜る
第1章 共生をめぐる論点──社会的凝集性を問う理由
第2章 社会的凝集性の系譜──社会学における概念史
第3章 「共生」の英語訳を考える──現実の人間社会に根差して
コラム① 共生社会と「対話」
第4章 多文化共生言説の構造──外国人の排除はいかにして生じるか
第5章 「国民」概念の見直しがもたらす共生の可能性──沖縄「先住民族論争」を事例に
コラム② 知識は他人と共有するからこそ意味がある
第6章 「選抜の機会」としての学校教育を問いなおす──メリトクラシーの諸問題
コラム③ 「学校選択の自由」と高校白書づくり運動
第7章 社会的凝集性をどう確保するか──公設フリースクールの事例から
おわりに──本書の結論と次なる課題
〈研究内容紹介〉
専門は、教育社会学、共生社会学、歴史社会学、ナショナリズム研究、社会意識研究です。研究の主軸は、①国民国家論と②共生社会論に据えています。
①においては、世界をネイション単位で認識しようとする観念自体を研究対象とし、現代社会におけるその生成・維持・変容に対して、学校教育をはじめとする人間の社会的行為がいかに関与しているのかを理解することを目的としています。②においては、ナショナリズム・エスニシティ、ジェンダー、身体、世代、階級・階層の相違をめぐる社会的葛藤・対立の分析と、社会的共生のための理路と資源の探索を行っています。
近年は、文献調査によって戦後日本における「社会についての学び」の変容を、また意識調査によって現代日本における「共生を志向する社会意識」の構造を、それぞれ探索し、分析しています。
早稲田大学文学学術院教授
岡本 智周(おかもと ともちか)
早稲田大学第一文学部哲学科社会学専修卒業、同大学院文学研究科社会学専攻修士課程修了、ニューヨーク市立大学クイーンズ校大学院応用社会学専攻修士課程修了、早稲田大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。早稲田大学国際教育センター助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、筑波大学大学院人間総合科学研究科助教授、同大学人間系准教授を経て、2018年より現職。文学部社会学コース、大学院文学研究科社会学コースに所属。
著書に『共生社会とナショナルヒストリー』(勁草書房)、『歴史教科書にみるアメリカ』(学文社)、『国民史の変貌』(日本評論社、第1回日本教育社会学会奨励賞)、共著に『「ゆとり」批判はどうつくられたのか』(太郎次郎社エディタス)、『学校教育と国民の形成』(学文社)、編著書に『多様性と凝集性の社会学』(太郎次郎社エディタス)、『教育社会学』(ミネルヴァ書房)、『共生の社会学』(太郎次郎社エディタス)、『共生と希望の教育学』(筑波大学出版会)など。
(2026年7月作成)