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From the Director
センター所長挨拶

総合人文科学研究センター所長 田中 史生
早稲田大学総合人文科学研究センターは、早稲田大学文学学術院の附置研究所です。本学術院における専門分野の研究の拡充と、新たな社会状況に対応した学術分野の創出、研究活動の活性化と透明化、研究成果の社会還元などを目的として、2012年に設立されました。当センターは、文学学術院を本属とする全ての専任教員、任期付教員および助手と、文学学術院以外を本属とする専任教員等や学外からの招聘研究者で構成されており、日本学術振興会特別研究員PD等の受入雇用も行っています。
当センターでは、上記の目的を達成するために、人文学に関する調査・研究はもちろん、研究資料の収集・整理と提供、シンポジウムや研究会、講演会の開催など、様々な事業を展開しています。また、こうした事業を有機的、効果的に進めるために複数の研究部門を置き、現在は14の多様な研究プロジェクトが国際的な活動を行っています(2026年9月時点)。さらにセンター主催のイベントとして国際シンポジウム「年次フォーラム」を毎年開催し、年1回発行の研究誌『WASEDA RILAS JOURNAL』では、研究論文だけでなく、研究プロジェクトによるシンポジウム・研究会の特集、年次フォーラムの報告などを掲載して、Webサイトで公開しています。キャリア初期研究者の支援にも注力しており、日本学術振興会特別研究員応募チャレンジセミナーや英語論文ライティングセミナーなどを開催し、学内外の公募や各種研究助成・奨学金、留学などの情報提供も積極的に行っています。これらの活動は、本Webサイトでも随時紹介しておりますので、是非ご一覧頂きたく存じます。
早稲田大学の人文学研究は、1890(明治23)年、現在の文学学術院の前身となる文学科が創設されて以来、130年以上の歴史を誇ります。この間、社会の変化と学問研究の進展を反映して、研究領域が拡大し、学際的な研究の重要性も増していきました。当センターの研究部門が掲げるテーマや、それを支える研究所員の研究テーマは、まさに今の人文学研究が向き合う様々な研究課題を体現しています。一方で、複雑化・多様化する社会との対話のなかで、研究の問題意識が拡散し、個々の研究相互の連関性や学術の体系性が見えにくくなっています。当センターはこうした人文学研究自体の抱える課題にも積極的に向き合い、研究と学術の再構築のための様々な提案を行っていきたいと考えています。
人文学は、今の私たちの何に役に立つのかと聞かれることがあります。しかしそもそも、「今の私たち」とはどのようなものなのでしょうか。ある一定の「先進」モデルを社会共通の目標とし、「追いつけ追い越せ」をスローガンとした時代は随分前に去りました。「今の私たち」は、どのような未来へと向かおうとしているのか。理想的な未来と、そこでの「私たち」とはどのようなものであるべきなのか。こうした問いには、時代も空間もカテゴリーも越えて、人間とその社会や文化の根本に深く目を向け、「今」を批判的・相対的に捉えようとする人文学が必要不可欠です。当センターはこれからも、「今の私たち」と自らの活動を見つめ直しながら、理想的な「未来の私たち」につながる人文学研究の推進につとめてまいりたいと思います。