近年の地球的な規模での社会構造や産業構造の変革に対応して、人々のライフスタイルも大きく変化し、価値観や期待される能力の質も変化しつつある。人々に求められるものは、知識や技術の集積ばかりではなく、前例のない事態に、新しい対応の方途を開発する能力と対応を誤ることのない新しい価値観の確立であろう。このような大きな社会の変動はまた多くの青少年に、個の確立のための指標を見失わせており、初等・中等教育を含めた教育の問題は大きな社会問題になっている。さらに成人が新しい社会に対応する、あるいは全生涯を有意義に全うするための生涯教育も社会的な問題である。 こうした状況の下、長年に渡って世に優れた人材を送りつづけてきた早稲田大学が、その創立の理念と社会的使命に基づき、蓄積された英知を結集して、これらの新しい課題に取り組むことは、研究・教育機関としての社会的責任といえるであろう。
教育学部に設置された教育総合研究室は、これまで教育の実践の場との密接な関係を保ちながら多くの教育の問題を科学的に検証・分析して、その成果を再び現場にフィードバックすることにより早稲田大学と教育現場との結節点としての役割を果たしてきた。しかし上記のような重大な局面にあたり、一学部を越え、より広く全学的な規模の教育総合研究所に改組し、早稲田大学のもつ関連諸科学の研究能力を結集して教育問題の基礎的・科学的研究にあたることが緊急な課題になっている。
本研究所は、今後の本大学における教育の展開に寄与することはもとより、社会との有機的連関をとおして教育のあり方の探求に貢献する。また、全国の研究者、教育実践者の教育科学研究のセンター的役割を果たすことをめざす。
1986 昭和61年 |
4月 | 早稲田大学教育総合研究室 開設 |
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1998 平成10年 |
9月 | 早稲田大学教育総合研究所に改組 |
初代 | 中尾 清秋 | 1986年~1987年 |
2代 | 榎本 隆司 | 1987年~1992年 |
3代 | 中嶋 峰広 | 1992年~1996年 |
4代 | 柳瀬 喜代志 | 1996年~1997年 |
室長代行 | 渡辺 重範 | 1997年~1998年 |
5代 | 石垣 春夫 | 1998年~2000年 |
6代 | 大槻 宏樹 | 2000年~2002年 |
7代 | 藁谷 友紀 | 2002年~2004年 |
8代 | 石堂 常世 | 2004年~2006年 |
9代 | 坂爪 一幸 | 2006年~2008年 |
10代 | 稲葉 敏夫 | 2008年~2010年 |
11代 | 堀 誠 | 2010年~2016年 |
12代 | 町田 守弘 | 2016年~2020年 |
13代 | 和田 敦彦 | 2020年~2022年 |
13代 | 近藤 孝弘 | 2022年9月21日~現在 |
※1998年までは教育総合研究室長