『Authors Alive!~作家に会おう~』
村上春樹さん「村上RADIO公開収録 和田誠レコードコレクションより」 レポート
4月20日(水曜日)に、国際文学館において、2022年度の「Authors Alive! ~作家に会おう~」第1弾が、「村上RADIO公開収録」として、村上春樹さんの出演で開催されました。
2021年度に6回にわたって朗読イベントが行われた「Authors Alive!」ですが、今回、村上さんは和田誠さんにゆかりのあるレコードをかけながら、その人柄と音楽について語り、村上さん自身や和田誠さんが訳した歌詞の一節をいくつか朗読しました。

<写真提供:TOKYO FM>
メインテーマは「和田誠レコード・コレクションより」です。村上さんと親交の深かったイラストレーターの和田誠さんは、2019年10月に惜しくも亡くなりましたが、和田誠さんが所蔵していたレコードから、村上さんの選んだ365枚が国際文学館に寄贈されました。
数千枚の「傷一つない」コレクションから、二日がかりで、村上さん自身がお持ちのものと重ならないレコードが選ばれたそうですが、この日はその中から、前半はミュージカル、後半は日本で吹き込まれた楽曲が紹介されました。
(曲名は以下に示します。オンエアとは一部異なります)
公募を中心にした参加者は、国際文学館に到着後、館内を自由に見学してから定刻に集合、会場となった2Fの「ラボ」に入りました。着席した目の前、まさに正面の「スタジオ」で収録が行われます。
客席の周りでは、これまでの「Authors Alive!」にはなかったグッズ販売が行われたほか、『村上春樹 雑文集』に収められた「解説対談 安西水丸×和田誠」の拡大パネルが展示されました(いわさきちひろ美術館で2016年に開催された「村上春樹とイラストレーター展」に出されていたものを同館の協力で展示)。
この日の進行を務めるミュージシャンの坂本美雨さんがイベントのオープニングを告げ、橋本周司・当館顧問(本学名誉教授)が主催者として挨拶。それにつづき、坂本美雨さんが村上春樹さんを会場に呼び入れました。おふたりが参加者の前でミニトークを行った後、村上さんはスタジオに入り、収録が開始されました。
「村上RADIO」で聴きおぼえのあるオープニング・テーマに乗って、村上さんは冒頭に経緯や主旨、流れを語り、そして「この曲がまさかこの番組でかかるとは」とご自分で言いつつ、「サウンド・オブ・ミュージック」の「ドレミの歌」を一曲目として紹介しました。
これまでラジオで聴いていたとおり、テンポよく、曲の背景や聴きどころの紹介があり、たっぷり演奏が流されましたが、途中休憩、収録中のインターバルなしでした。
ときにユーモアある一言をまぜる村上さんのディスクジョッキー姿は、会場をリラックスさせましたし、さらに、和田誠さんへの親しみや惜別の言葉は、スタジオと会場を隔てるガラスの仕切りを通り抜けて、聴衆の胸に響きました。
収録終了後、スタジオの外に出てきた村上さんと坂本さんが、ミュージカルの接し方の差が和田さんと村上さんの世代の差であることなど、会話を交わしました。さらに会場にいらしていた和田さんの妻の料理愛好家、平野レミさんが呼ばれ、少憩後会場に戻ってきた村上さんと、坂本さんの司会で対談をしました。
和田さんに会えば映画や音楽の話に花を咲かせたという村上さん。「私がいろいろ質問するから映画には連れて行ってくれなかったんですよ」という平野さん。お二人の貴重な思い出が次々と語りおこされ、和田さんの人柄をしのびながら、会場は時に笑い、時に目頭を熱くしました。
参加者から受けた質問は、和田誠さんが装丁をしたときのやりとりについて。作品を読み込んで装丁する和田さんに、村上さんはいつも‟おまかせ”だったそうで、ある作品についてだけ変わった注文をして受けてもらった‟秘話”も語ってくれました。

<写真提供:TOKYO FM>
演奏曲
ミュージカルから
・「サウンド・オブ・ミュージック」より「ドレミの歌」(original cast)
・「オン・ザ・タウン」より「ラッキー・トゥー・ビー・ミー」(original cast)
・「王様と私」より「ゲッティング・トゥー・ノウ・ユー」(original cast)
・「キスメット」から 「Stranger in Paradise」 (original cast)
・「House of Flowers」から「Sleeping Bee」 (original cast)
・「ショウボート」より「Ol’ Man River」(original cast)
・「Guys and Dolls」より「I’ve Never Been in Love Before」(original cast)
日本で録音された曲
・ヘレン・メリル「中国地方の子守歌」
・坂本九 「セブンティーン」
・浜口庫之助 「夜霧よ今夜も有難う」
和田誠さんが好きだった一曲
・フランク・シナトラ「Everthing Happens to Me」
クロージング
・スタン・ゲッツ・オクテット「They Can’t Take That Away from Me」
今回のイベントに関連する村上春樹さんの本:
『村上ソングズ』(「眠る蜂」「誰にも奪えない」収録。中央公論新社、単行本・2007年刊、「村上春樹翻訳ライブラリー」版・2010年刊)
また、収録された内容は、2022年4月24日にTOKYO FMほかでオンエアされました。
「村上RADIO」の公式サイトは https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/ です。
このイベントの公募は、こちらで行われました。
公募のときにもご紹介しましたが、「村上RADIO」のリスナーに向けて送られた村上春樹さんの言葉を、あらためてここでお伝えしたいと思います。
国際文学館(通称・村上春樹ライブラリー)の中に設けられた放送スタジオから、公開録音でお送りします。
ガラス張りのスタジオで、中は丸見えです。なんか緊張しますね。イラストレーター、画家の和田誠さんはとても音楽の好きな方で、亡くなられたあとにたくさんのレコードを遺されたのですが、その一部をこのライブラリーに寄贈していただくことになりました。そのコレクションの中から、僕が個人的な好みで選んだ音楽をみなさんと一緒に聴きたいと思います。「和田誠、その音楽世界」、みたいなものをお伝えできるといいのですが。村上春樹