
大隈講堂を背に立ち、キャンパス内に目を向けると、左手前に見えるのが当館です。1925年、今井兼次の設計により建てられました。その瀟洒な建物は、1927年竣工の大隈講堂とともに早稲田大学のシンボルとなっています。
建設当初から1991年までは図書館として使われていたこともあり、校友の皆様には、懐かしく思われる方も少なくないでしょう。
1998年に會津八一記念博物館としてオープン、2019年にはリニューアルし、4つのギャラリーをもつミュージアムとなりました。1階の3つのギャラリーではコレクションを中心とした特徴ある展示を、2階の「グランドギャラリー」では、特別な企画展を開催しており、来館者の方には歴史ある格調高い空間で、特別な鑑賞体験をしていただけるようになっております。
建物自体は、図書館から、現在はミュージアムへとその用途を変えましたが、ここが大学の使命である「教育」と「研究」の2つの機能を担った知の中心地であることに変わりありません。
1階ホールから2階へと続く大階段に設置されている《明暗》(1927年、横山大観と下村観山の合作)は、その役割を大変よく表している作品といえます。日本画の巨匠2人の手になるモニュメンタルな絵は、黒い雲間から昇る輝く太陽が、学ぶことの大切さを象徴的に描き出したものです。「暗」は知識を得る前の闇の世界を、「明」は知識を得ることで見えてくる陽光に照らし出された世界を表現しています。
グランドギャラリーにある《羅馬使節》(1927年、前田青邨作)もまた、大学ミュージアムにふさわしい作品の一例です。本作は、1582年(天正10年)に日本からローマに派遣された天正遣欧少年使節を描いたもので、大切な使命をもって渡欧する少年の颯爽とした姿は、大学から世界へ向けて旅立っていく若者たちと重なって見えることでしょう。
収蔵作品は、東洋美術の研究者であり歌人や書家としても活躍した會津八一が、もともと学生たちの教育と研究のために蒐集した作品が核となっています。今日ではこれらと共に、考古・民俗資料から日本・アジアの美術、さらには近代から現代アートまで5万5千点ほどの多彩な作品群を収蔵しております。
このように当館は、貴重な作品の数々を保管・調査・研究する学内の研究拠点の一つですが、同時に、本学の学生・校友の皆様に限らず、一般の方々にも広く開かれています。近年、大学のグローバル化や訪日外国人の方の増大に伴い、海外から来館される方たちも一段と増え、‟Aizu Museum”として親しまれるようになってきました。
重厚な建物は、もしかすると敷居が高いと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひこの宝庫の扉を開き、中に入ってご覧いただければと思います。少しでも多くの方が、素敵な作品と出会うことで、日常の喧騒から離れ、ゆったりと、心穏やかな一時を過ごしていただければ幸いです。
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