コロナ禍での校外学習。跨いだのは県境ではなく時だった。
私たち中学部2年生は9月29日、江戸東京たてもの園を訪れた。江戸時代から昭和にかけての貴重な建造物が30棟以上展示されている屋外博物館である。江戸時代の庶民の家から昭和のお店まで、数多くの建物が私たちの好奇心を刺激した。
厳しい残暑の中、メモ帳を片手に建造物と向き合うクラスメートたちの姿が印象に残っている。もちろん、私も多くを学び、“タイムトラベル”を楽しんだ。私の心を動かした展示を3つ紹介したい。
1つ目は農民である吉野家の屋敷である。名主の家系だったらしい。とても広く、学院の西グラウンドと張り合うほどだった。中に入ればそこは昔話の世界だ。土間の風景、たくさんの調理器具、風通しの良さ、教科書で見た農具の数々。何もかもが新鮮で、感動した。
2つ目は子宝湯、20世紀の銭湯である。壁に描かれた富士山や脱衣所から見える庭など、細かい「美」に感銘を受けた。また、昭和の息吹がかかった張り紙や広告もそのまま残されており、レトロな雰囲気を楽しんだ。
3つ目は、言うまでもなく高橋是清邸だ。激動の昭和を生き抜いたこの屋敷はもはやオーラが違う。のどかな日本庭園の横にあるこの建物で高橋是清は、殺されたのだ。実際にその現場となった2階にも行った。その時感じた、時代の先駆者たちへの敬意と感謝は今でも言葉で表せない。
この一日で私たちは多くのことを得た。学んだのは歴史的知識かもしれないし、建築的知識かもしれない。あるいは、先人たちの心かもしれない。そして、それらは私たちを変えた。あの感動を求めて、私はいつかもう一度、江戸東京たてもの園へ行こうと思う。
(2年・市原)