真心ブラザーズ @ The Haruki Murakami Library レポート
2022.09.22
- 文学・芸術
真心ブラザーズ @ The Haruki Murakami Library(8月3日)レポート
8月3日、「~早稲田大学国際文学館 キャンパス・ライブ~ 真心ブラザーズ@ The Haruki Murakami Library」と銘打って、ロックバンド・真心ブラザーズのお二人による音楽イベントが開催されました。
国際文学館では、昨年10月の開館以来、朗読などのイベント「Authors Alive!」を、これまでに9回開催しています。さらに今年から、様々なアーティストのライブ演奏等をお楽しみいただく「キャンパス・ライブ」を実施しています。今回はその第4弾です。
今回、地下1階「土星」のネオンの前をステージとし、公募を中心とした参加者は地下1階「ラウンジ」と「階段本棚」に設けた客席につきました。
橋本周司・当館顧問(本学名誉教授)が主催者挨拶とともに、真心ブラザーズのお二人、YO-KINGさんと桜井秀俊さんが本学在籍中にバンドを結成したことも含め、簡単な紹介を行いました。あわせて本イベントの後半に「鼎談」を行うこと、そこでの進行役をつとめるブックディレクターの幅允孝さんと国際文学館の関わりについて、参加者にご案内しました。
< ライブ・パート >
会場アナウンスでオープニングが告げられ、真心ブラザーズのお二人が入場、1曲目「GREAT ADVENTURE FAMILLY」を演奏しました。
演奏後、「久しぶりで、不思議な感じですねえ」と口を開いたお二人は、「あとで話すことになるだろうけど」と断りつつ、「今立っている真上のあたりの1階に、僕たちの部室があって」と、4号館への思いに触れ、バラエティ番組内の“フォークソング合戦”での10週連続勝ち抜きが、在学中の1989年にデビューするきっかけとなり、曲を選び、練習をしたその部室から、河田町のフジテレビへと毎週通ったのだが、「まさかこんな形で帰ってくるとは」、と話しました。
ボブ・ディランの曲をカバーした「マイ・バック・ページ」が2曲目。「村上radioで以前かけてもらったものです」、と語って演奏に入りました。 *2020年4月26日放送「言語交換ソングズ」特集の回
最初フォークスタイルだったお二人の演奏が、90年代にはオルタナティブ・ロックの影響を受けたそうですが、「その頃でもフォークっぽいものがあって」、と3曲目の「月面」が演奏されました。
なおこの日は、お二人でのギターによる曲、桜井さん一人のギターによる曲、YO-KINGさんのハーモニカが加わる曲、といくつもの演奏スタイルを楽しむことができました。
「結局、1曲1曲解説しながらになってしまったけど」と断りつつ、2001年に「フィクションでもいいから、“別れの歌”3部作を作りましょう」という企画で、それまでとは異なり「職業作家になりきって作った」もの、と話をして、4曲目の「流れ星」が歌われました。
大変な暑さだったこの日、「いつも以上にリラックスした格好で」と桜井さんに言われたYO-KINGさん、会場へはどう来ようとしたかを話しているうちに、高田馬場駅から大学までバスに乗らず徒歩だった学生時代の話となり、曲の解説はなく、5曲目「素晴らしきこの世界」が始まりました。そしてトークをはさまず、6曲目「RELAX~OPEN~ENJOY」が演奏されました。
7曲目は「サマーヌード」。演奏前に、「どんな季節にも演ってますが、今日みたいに暑さがピークの日にはいいでしょう」と曲名を紹介しながら、YO-KINGさんの服装のラフさに再び触れ、さらに「テレビ番組などで、夏といえばこの10曲、のようなコーナーがあって、どこかに入るかなと思っていたら、全然入ってなかった(笑)。その曲をお届けします」と、MCでもたっぷり楽しませてくれました。
そして、ライブのパートを締めくくる8曲目に、「空にまいあがれ」が演奏されました。
< 対談パート >
ステージを直して、「土星」の前で対談のパートが始まりました。
最初に入場した幅允孝さんが、ブックディレクターの仕事を紹介しながら、「階段本棚」での選書企画「村上春樹とその結び目」や、それを学生たちと一緒に配架していったことなどを話したあと、この日のライブの発端を紹介しました。村上春樹ファンのYO-KINGさんを、以前から知り合いだった幅さんが国際文学館を案内したときに、「この窓は部室の窓だったんだ」といった思い出とともに、いつかこの館内でライブが実現できたら、と夢を話していたのが、実現にいたったとのこと。
その後、YO-KINGさん、桜井秀俊さんが加わり、コンサート会場以外のさまざまな場所でもツアーを経験してきているお二人は、楽しんで演奏できたと言い、学生時代の思い出の建物に触発された話になっていきました。
「早大ギターを楽しむ会(GEC)」での出会いから、桜井さんが幹事長の時にテレビ局から声がかかり、先輩のYO-KINGさんを誘って番組に出て、デビューにいたったことが生き生きと語られ、また年度末の時期だと、ツアーと大学のテストが重なって苦労したことも明かされました。学生時代から33年という長い時間、「自分の生き方」でやってきて、自分の性格に自身が助けられているというYO-KINGさんは、コロナの時代に自分の反骨心に気づいた、とも語りました。
「繊細さ」や「傷つく」が音楽で強調されすぎているように思えた90年代、その反動で「幸せ」や「ガラスを割ってまわったりしない」を歌ったとき、理解されず浮いていたと感じていたことや、「職業作家としていい歌を作って」と依頼されたとき、自我との関わりや正直さとのバランスに悩みながらも、フィクションとしてがんばって作ったのが「流れ星」だった、という振り返りもありました。
村上春樹さんがラジオで触れた「マイ・バック・ページ」については、日本語を短くしようとしたし、サビのフレーズは“訳”だが、他はパズルを埋めるように意訳したとのこと。この意訳についての感想をボブ・ディランに聞きたかったが、世界各国のアーティストによるディランの楽曲が使われている映画で、ディラン脚本・出演の『ボブ・ディランの頭のなか』を見た際に、一番はじめに自分たちの曲の日本語が流れたときは驚いた、というエピソードが披露されました。
本の話題になり、YO-KINGさんは朝コーヒーを飲みながら90分くらい読書をするのが心地いいと言い、桜井さんはあまり本を読まず、音楽だってあまり聴かない、音楽を作るより演奏するという“行為”が楽しい、とお二人は対照的でした。村上作品で長編だと、どれも3回以上読んだというYO-KINGさんは、作った歌詞の中に村上さんの影響を感じることもあり、この日も演奏中に「素晴らしきこの世界」にある「手つかずの一日」というフレーズが村上春樹さんの表現だと思った、とのこと。
「早稲田での学生生活が音楽に影響あったか」「卒業するまでに数か月だが、読めばいい本を教えてほしい」といった、事前に会場参加者から集められた質問に答えながら、幅さんから「最後にメッセージを」と求められ、桜井さんが「楽しいことが待っているので、大人を楽しんで」と、YO-KINGさんが「ほっとくと心配してしまうことを、ぐっと心配しないようにして、楽しい方を考えるのが大切」と答えて、対談パートが締めくくられました。
演奏曲
- GREAT ADVENTURE FAMILLY
- マイ・バック・ページ
- 月面
- 流れ星
- 素晴らしきこの世界
- RELAX~OPEN~ENJOY
- サマーヌード
- 空にまいあがれ
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