“Letters from the Haruki Murakami Library”―ヒタ・コール(Rita Kohl)
2026.03.06
“Letters from the Haruki Murakami Library” は「早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)を訪れて、だれかにお手紙を書くとしたら?」という発想で、国際文学館に滞在いただいた方に執筆いただくシリーズ企画です。
「国際文学館翻訳プロジェクト」で2025年10月~11月に当館に滞在いただいた、ブラジル在住の翻訳者ヒタ・コール(Rita Kohl)さんに日本語で手紙を書いていただきました。
おばさんへ
おばさんが登場する松田青子さんの短編『みがきをかける』を翻訳させていただいた、ブラジル人のヒタです。突然の連絡、失礼いたします。
この度、早稲田の国際文学館で一ヶ月間滞在し、滞在中何回もおばさんの話をしましたので、連絡させていただきました。
おばさんの声をポルトガル語にするのはとても楽しかったです。ブラジルにも、脱毛など些細なことで悩んでいる女の人が多くいます。私たちにもつらい我慢の記憶が山ほどあります。おかしいことを我慢する傾向があるその子たちにおばさんの声が届いたらいいなと思いながら、おばさんの言葉を訳させていただきました。
今回は、八年ぶりに日本に戻ってみると、ここにいるとますます女性としてかわいくて、優しくて、謙虚で、肌がつるつるでキラキラした生き物じゃなければダメだと感じてしまうことに気づきました。だから滞在中読み直したおばさんの言葉は自分にも必要でした。
ただ、この滞在中、素敵な女性にも出会えたり、再会したりして、自分磨きの意味は数えきれないほど存在することを再認識しました。堂々と生きたい、と思いました。怒るべきときにちゃんと怒れるように、自分の力を守って、磨きたいと。
ちなみに、国際文学館のイベントで柴田先生と一緒に朗読し、おばさんの声が二つの言語となり掛け合って館内に響きました。そういうことを知ったら、おばさんも喜んでくれるのかな、と思いました。これも素晴らしい技じゃないでしょうか。
おばさんに倣って、私も自分なりに、堂々と、立派な物の怪になれるように頑張ります。
ヒタ コール
ヒタ・コール(Rita Kohl)

1984年ブラジル・サンパウロ生まれ。現在、日葡翻訳者として活動中。サンパウロ大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(比較文学・比較文化)。村田沙耶香、小川洋子、村上春樹、有川浩、津島佑子らの作品など多数の日本文学作品をポルトガル語に翻訳。村上春樹の作品『風の歌を聴け・1973年のピンボール』(Alfaguara、2016年)の翻訳が2017年のJabuti賞翻訳部門を受賞した。
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