『Authors Alive!~作家に会おう~』に参加した。#3

『Authors Alive!~作家に会おう~』10月23日 川上弘美さん×ロバ―ト キャンベルさん 参加レポート

文化推進学生アドバイザー 2年 木村 友里乃


お二人の対談から始まったイベント最初の話題は、川上弘美さんによる『伊勢物語』の現代語訳(「日本文学全集」)と、『伊勢物語』をモチーフにした『三度目の恋』についてでした。

現代語訳、創作、そして英訳(予定)という、古典を題材にしながら新しい文学作品が生まれていくというスパイラル。その原動力となっているのは「なぜ? という疑問から生まれる」と語っている川上さんのことばが印象的でした。現代の価値観で作品をとらえて生じる疑問を、創作によって過去の価値観で物事をとらえなおし、解答を導く。新しいものと古いものを行き来するという方法を用いて、異なったステージで古典を考えることは、学生の古典を学ぶ意義にもつながるものがあると感じました。

次に、朗読が行われましたが、川上さんの作品をまずご自身が日本語で、そのあとキャンベルさんが英語で、という形でした。3つの作品が交互に読まれましたが、お二人の朗読は異なる言語ながらも心地よく融合し、私の中で自然に登場人物を作り上げていました。そして、客席になった開放的な階段本棚という空間で、ゆったりと想像が膨らんでいくような感覚にとらわれました。

朗読が終わると、再び対談に移り、話題は翻訳の難しさと面白さについてでした。キャンベルさんによると、日本語は心の中に寄り添う表現が多く、一方英語はどうしても客観的になってしまうため、翻訳の表現に工夫が必要だそうです。時に翻訳者によって元の文章とは異なる表現が為されることがありますが、川上さんはそれを肯定していました。作品を書いているときには意識していなかった点を、英訳によって気づかされることもあるそうです。翻訳者による解釈が作品に立体感を持たせることもある、翻訳者もアーティストなのだということに、気づかされました。また作品が映像化されることについて、川上さんは、自身の作品と異なっていても、原作を器として他の物に変わっていくことこそが面白い点なのだと語っていました。

今回の対談でうかがった川上さんの文学観から、“つながり”の重要さを感じました。『伊勢物語』の現代語訳から創作作品、そして翻訳や映像化まで、どれもつながりを持つことによって新しいものが作られます。国際文学館は国際文学、翻訳文学の研究拠点として位置づけられていますが、まさに他言語への“つながり”から国際文学、翻訳文学は生まれると言えます。

階段本棚には「現在から未来に繋ぎたい世界文学作品」「村上作品とその結び目」をテーマに本が並べられています。この場所で、お二人のお話を聞くことができたことはとても貴重な体験でした。訪れる人にとってこの国際文学館がつながりを生み出し、新たな文学への拠点になるのだと思うとわくわくしています。

作品名

  • 『このあたりの人たち』(スイッチ・パブリッシング・2016年、文春文庫・2019年)
  • 『センセイの鞄』(平凡社・2001年、文春文庫・2004年)

川上さんが自作を日本語で朗読され、つづいてキャンベルさんが同じ箇所を英語で朗読されました。

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