Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

進化するオンラインでの学び ハイブリッド型で「反転授業」を実現

2020年度の早稲田大学は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い春学期の授業開始を延期、オンライン授業へと切り替えました。授業スタイルの突然の変更に、学生はもちろん教員にも多くの試行錯誤が必要になりました。そんな1年を経て、2021年度は対面授業の7割実施を目指して春学期がスタート。授業形態が多様化する中でオンライン授業はどうなっていくのか? 教育工学を専門とし、大学総合研究センター副所長を務める森田裕介教授(人間科学学術院)に話を伺いました。さらに、教室での対面授業とオンライン授業を併用する「ハイブリッド型授業」に注目し、同センターが実施する「第9回WASEDA e-Teaching Award」で大賞を受賞した、森達哉教授(理工学術院)が担当する授業「情報通信ネットワークA」に潜入。ハイブリッド型授業がどのように行われているのか、その様子をお届けします。

いかに積極的に参加するかという「エンゲージメント」が求められる

大学総合研究センター 副所長/人間科学学術院 教授
森田 裕介(もりた・ゆうすけ)

東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了、東京工業大学大学院社会理工学研究科人間行動システム専攻博士後期課程修了。博士(学術)。鳴門教育大学学校教育研究センター助手、長崎大学教育学部専任講師、同助教授、早稲田大学人間科学学術院准教授を経て、2020年4月より同教授。2015年7月より早稲田大学大学総合研究センター副所長。2018年11月より早稲田ポータルオフィス長。主な専門分野は、教育工学。

多様なオンライン授業の中でも、注目は「ハイブリッド型」における反転授業

まず、オンライン授業には大きく分けて3種類あります。一つは「オンデマンド型」といって、教員が講義資料や課題をインターネット上に用意し、学生は決められた期間内の好きな時にアクセスするもの。もう一つは「リアルタイム配信型」で、Zoomなどを使って講義をリアルタイムで配信するものです。そして、それらのオンライン授業と教室での対面授業を組み合わせた「ハイブリッド型」です。

このハイブリッド型授業はさらに、オンデマンド、リアルタイム配信、対面を組み合わせて実施する「ブレンド型」と、同じ内容の授業をオンラインでも対⾯でも受講できる「ハイフレックス型」とに分けられます。教室での対面授業をリアルタイムで配信することは、コロナ禍により日本に入国できない留学生などにも受講の機会を提供できるメリットがあります。一方で、ディスカッションなどのアクティブラーニングを行う際には、対面とオンラインの人数比により、実施方法を都度検討する必要があるといった課題もあります。

ブレンド型の中でも、世界的に特に学習効果が認められているのが「反転授業」です。事前にオンデマンド動画などで講義内容を学習し、対面授業でアクティブラーニングを行う形式です。知識の修得をオンデマンドで事前に行うことで、90分の授業時間を十分に活用してディスカッションや発表の時間に充てることができます。

人間科学部eスクールなど、オンデマンド授業において国内トップクラスの実績を誇る早稲田大学

早稲田大学は、2003年に人間科学部eスクール(通信教育課程)を設置しました。2006年には「早稲田大学 Open Course Ware」をスタートさせ、講義映像をインターネット上で公開するなど、オンラインコンテンツの取り組みに早くから着手してきたのです。さらに、大学が掲げる「Waseda Vision 150」では、2032年までに教員による一方通行型の授業をオンデマンド化し、教室での授業を対話型、問題発見・解決型教育に移行する方向で動いています。実際に、コロナ禍以前に1,600科目ほどのフルオンデマンド型の授業が既に開講され、延べ87,000人以上が受講した実績があります。これは国内の大学ではトップクラスの数字です。こうした早稲田大学の先進的な取り組みにより蓄積されたデータや知見を、コロナ禍において即座に全学的に共有できたことはとても大きかったと思います。

現在、早稲田大学では学生の健康を第一に、そして第二に教育効果を考え、これまでの実績を生かしてより進化したハイブリッド型授業を展開すべく設備を整えています。既に定員50名以上の教室にはWebカメラやパソコン、マイクのコネクタなどの機材や環境整備を完了しています。コロナ禍の今、万が一感染が再拡大し危機的状況に陥ったとしても、ハイブリッド型から瞬時にフルオンライン授業への切り替えが可能な状態です。

教員は試行錯誤で「よりよい」授業に

ハイブリッド型授業を含め、オンライン授業の実施にあたっては、まだまだ課題が残されているのが実情です。教育工学では、試行錯誤しながら「よりよい」授業の手法に関する知見を実践的に蓄積してきました。これから、教員同士が知識や経験をシェアし合い、大学全体で改善していくフェーズに入っていると思います。これからの時代、教員は授業に関する専門的な知識だけでなく、どのように教えるかという教育力やテクノロジーを活用する力も求められているのです。

一方、学生の皆さんにも、オンライン授業での学びに慣れてもらう必要があります。例えば、ハイフレックス型授業に教室で参加しているとき、自分のパソコンのZoomにログインした状態から、勝手にマイクをオンにしてしまうとハウリングが起きてしまいますよね。そういった最低限のICT(情報通信技術)の仕組みやルールを理解してもらうことが大切です。また、オンライン授業に関して、レポート提出などの課題が多いという声があります。これは、オンライン授業自体の特徴でもあり、対面に比べると学生の活動内容が見えにくく、課題提出以外での評価が難しいためです。

今後、大学の授業では、皆さん自身がいかに積極的に授業に参加するかという「エンゲージメント」が求められることになります。皆さんが参加したいと思えるようなよりよい授業をデザインできるよう、授業改善の支援に努めたいと思っています。

早稲田キャンパス7号館にあるCTLT(Center for Teaching, Learning and Technology)は2020年4月にオープン。教職員を対象に、授業のオンライン配信を含め、授業運営に関するさまざまな支援を行っている

学生は「BYOD」と大学サービスの活用を

学生の皆さんへのアドバイスとして伝えたいのは「Bring Your Own Device(BYOD)」。オンライン授業を受けるには、マイクやイヤホン、パソコンといった機器が不可欠です。そういった学習環境を整備してもらうと同時に、ICTに関する最低限の知識とマナーを身に付けることで、スムーズに授業に参加できると思います。

また、現在はフルオンデマンド型、ハイブリッド型、対面授業など複数の授業形態が混在している状況です。そのため、授業計画を練る際は、対面あるいはオンラインといった授業への参加方法を踏まえ、受講場所と動線を考えておくことをお勧めします。大学側も、シラバスへの授業形態の明記といった部分から、学内の空き教室の活用など、オンライン授業を受講しやすい環境の整備に引き続き努めていきます。

この他、オンライン授業に関する疑問点があれば、「Learn Anywhere」を活用しましょう。授業を受けるにあたり必要な準備事項をはじめ、あらゆる情報が集約されています。サイト内のチャットボット(自動応答システム)に質問を入力することで、該当ページを探すこともできます。それでも解決しない場合は、「早稲田ポータルオフィス(WPO)」でも質問を受け付けていますので、ぜひ利用してください。

取材・文:萩原 あとり
撮影:SJC学生スタッフ 政治経済学部 3年 山本 皓大

オンデマンド+対面・リアルタイム配信で有意義な授業に
「情報通信ネットワークA」(基幹理工学部専門必修科目)

インタラクティブなものを目指し、学生の声を聞きながら授業を展開

担当教員:理工学術院 教授 森 達哉(もり・たつや)

1999年3月早稲田大学大学院理工学研究科物理学及び応用物理学専攻修了。1999年から2013年までNTT研究所勤務。2013年より現職。ハードウェアから人間まで、幅広く情報セキュリティ・プライバシーに関する研究に従事。2018年より国立研究開発法人理化学研究所AIP人工知能セキュリティ・プライバシーチーム客員研究員。2019年より国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)サイバーセキュリティ研究所招へい専門員。博士(情報科学)。2020年度春学期早稲田大学ティーチングアワード、第9回WASEDA e-Teaching Award(2020年度科目対象)大賞。

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この授業は2019年度まで対面で実施していましたが、2020年度のコロナ禍によるオンライン授業への切り替えをきっかけに、オンデマンド講義ビデオの視聴と、Zoomでのリアルタイム授業というハイブリッド型、いわゆる「反転授業」の形をとるようになりました。今年度は、その形態を維持しながら、リアルタイム授業を教室で実施し、入国できない留学生などのためにZoomでも同時配信しています。

授業は、Waseda Moodle上に用意したオンデマンド講義ビデオ(45分程度)を事前に視聴してもらった上で進めます。履修者が約180名いるため、もともとディスカッションをするような授業ではないものの、インタラクティブなものを目指しており、その場で投票やアンケートを実施できるMentimeterや、パソコンやスマートフォンから画面にコメントが投稿できるComment Screenを使用しています。授業の冒頭にこれらのツールで学生からの意見を募り、要望が多い項目を重点的に解説していきます。また、アイスブレークとして雑談のような質問も入れるよう心掛けています。このようなツールを用いたことで、以前よりも多くの質問や意見が出るようになりましたし、学生からのフィードバックをもらいやすくなりました。

Comment Screenを使うと、学生からのコメント(水色)が「ニコニコ動画」のように流れてくる

オンデマンド講義ビデオについては、昨年、ゼロから作成しました。せりふを書き起こすことから始まり、字幕を付け、映像や音質にもこだわりました。また、ソフトウエアの動作実験の様子を載せたりクイズを挟むなど、学生が受動的にならず、かつ理解しやすくなるように工夫しました。ハイブリッド型授業は準備が大変ではあるものの、少しでも学生の意識やモチベーションが上がり、内容の理解につながればと思っています。

(左から)動作実験の様子と、余談のスライド(オンデマンド講義ビデオより抜粋)

以前のこの授業は、インターネットを構成する通信技術を幅広く学び、扱う項目が多いことからスライドの枚数が膨大で説明も早口になるなど、詰め込み授業になっていました。ハイブリッド型授業では、最低限のことは講義ビデオにまとめ、実物を見せるようなものや重点的に扱う内容を授業で展開する形にしたことで情報が整理され、学習効果は上がったと考えています。

今後の改善点として、学習効果をどう測っていくかというのがあります。現在、オンデマンド講義ビデオの視聴や出席管理、小テスト、課題の提出などをMoodle上で行っていますが、課題のボリュームや出席の取り方など、学生の声に耳を傾けながら少しずつ改良していきたいですね。

写真左:授業中、以前は板書していたが、現在はiPadを用いてスライドに書き込んでいる。その際、教室でもオンラインでも見やすいよう、文字の大きさに気を付けているという。左は教室に設置されているWebカメラ
写真右:機材のセッティングや動作確認のため、授業開始30分ほど前には教室に到着している。教室を借りてリハーサルをしたこともあったという

事前にビデオを視聴することで、対面授業の理解度もアップ

履修学生:基幹理工学部  3年 田頭 右丞(たがしら・ゆうすけ)

私の場合、昨年の授業はオンラインのみで対面が一切なかったため、今年度の対面授業への期待は大きいものがありました。

この授業では、事前にオンデマンド講義ビデオを視聴するのですが、ビデオがすごく凝っているんです! このビデオのおかげで授業の内容の理解が深まります。分からないところがあっても、対面であればその場で友人に聞くこともできますし、授業の録画が後日Moodle上に公開されるので復習しやすいです。

また、大教室の授業だと、手を挙げて質問するのはハードルが高いですが、オンラインツールを利用することで、そのハードルが緩和されている気がします。コメントが流れると森先生はすぐに反応してくださいますし、理解度などに関するアンケート結果を反映して授業を進めてくださるので、これまでの対面授業よりも双方向のやり取りができていると感じます。他の授業も課題が増えてきていて大変ですが、これからも意欲的に学んでいきたいです。

Mentimeterで感想・疑問を募っている様子。授業は西早稲田キャンパス57号館201教室で行われている。本来の定員は420名という大教室

【次回フォーカス予告】6月21日(月)公開「ICC(異文化交流センター)特集」

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