Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

オンライン活用で効率的に コロナ禍でも研究を止めない早大生たち

大学は教育機関であると同時に、研究機関としての役割も担っています。新型コロナウイルス感染症の影響で教育体制は変化を迫られ、今年度はオンライン授業が基本となりましたが、研究体制はどのように変化したのでしょうか? 今回は、コロナ禍でどのように自身の研究を推進しているのか、3人の学生にレポートしてもらいました。

(左から)峯下さん、皆川さん、浅井さん

▼機械系:峯下 弘毅(大学院先進理工学研究科)
▼生命科学系:皆川 真美圭(大学院先進理工学研究科)
▼考古学系:浅井 淳(国際教養学部)

積極的にコミュニケーションを取り、研究のヒントを

大学院先進理工学研究科 博士後期課程 1年 峯下 弘毅(みねした・ひろき)

研究内容について

私は高西研究室に所属し、等身大の2足人型ロボットによる、野球の投球動作の実現を目指しています。一般的なピッチングマシンは、強力なモータやばねの力のみで人間と同等の投球を実現しています。一方で人間は、全身の関節を適切に活用して高速投球を可能にしています。そこで私は、人間の投球メカニズムをロボットで再現することで、効率的な運動の仕組みの解明や、優れた作業用ロボットの開発を可能にすることができると考え、研究を進めています。現在は、投球ロボットの部品のうち、胴体と上腕、前腕を製作しているところです。

キャンパス閉鎖中の研究の進め方

在宅で研究をする際の卓上の様子。3画面を駆使し、資料に書き込む際には、手元のタッチ対応の画面を利用しています

キャンパス閉鎖中は主に、オンラインで開催される学会の発表準備とシミュレーション環境の製作、後輩への指導を自宅で行っていました。もともと高西研究室では、ロボット本体で実験する「実機実験」を大切にしています。そのため、これまでの学会発表の際には、シミュレーション結果ではなく、実機実験を行った結果をもとに発表してきました。しかしキャンパス閉鎖で実験ができなかったため、今回参加した学会では、シミュレーション結果のみで発表を行いました。シミュレーション結果のみだと論文にまとめやすかった一方で、やはり実機実験の研究結果を示したかったという悔しい気持ちもあります。

学会準備以外では、シミュレーション環境の製作も行っていました。これは、本年度からロボットのシステム改良を始めたことに伴い生じた作業ですが、在宅でもできる実験なので幸運でしたね。

現在の研究室の体制

研究室では外出自粛が始まった3月末から、基本的に在宅で研究を行うようになりました。従来の研究体制は研究室に集まって対話を重ねていくことが基本で、学生間で時々グループLINEを使う程度でした。自粛してからの連絡手段は基本メールで、学生間ではSlackを用い、会話はGoogle Meetといったようにオンライン上でコミュニケーションを取っています。Slackについては以前から、研究室内の一部メンバーで導入を進めていましたが、今回のコロナの影響で主力で使うようになりました。Google Meetは自粛を機に使い始め、常にルームを開いておくことで、いつでも研究室のメンバーと話し合いができるようにしています。また閉鎖が解除されてからは、人数を調整しながら製作や実験などを研究室で行っています。

現在の体制の良い点や工夫している点

研究室(喜久井町キャンパス41号館)の内部。研究室内に人が集まりすぎないようにしています

在宅での研究の良い点は登下校の時間が無いので、その分時間に余裕ができることです。悪い点は研究の進捗(しんちょく)が見えにくいこと。常に研究室にいた頃は同じ空間で皆が作業していたため、メンバーの研究の進捗もすぐ分かりましたが、オンラインでは把握しにくいですね。

また、意思伝達が難しいことも挙げられます。高西研究室では先輩と後輩のコミュニケーションや教育を重視しています。日頃から打ち合わせや雑談を通じてコミュニケーションを取り、実物を使って教えたり、絵に描いて見せたりして理解の手助けとしていました。それがオンラインでは伝えにくく、また伝わっているかどうかも分かりづらくなりました。そこで今まで口頭で伝えてきたことを資料としてまとめて、理解不足を補えるように工夫しています。

今後、コロナの影響を受けながらも研究を進めるために

研究における前提知識の習得やアプローチの検討、実験などは先輩や周囲の手を借りる必要がありますが、それ以外は個人で進めることが可能です。それぞれの作業を個人でできるものとチームで行うものに分類し、必要に応じて研究室で作業することが重要です。また、コミュニケーションを積極的に取ることが、間違いの修正や新たな発想のきっかけになります。そのためにも、SNSやオンライン会議システムをより活用していきたいと考えています。

またコロナの影響でさまざまな学会や展示会、セミナーがオンラインでの開催に切り替わっています。そのおかげで参加の敷居は下がっていると思うので、これらに積極的に参加し、多様な知識を身に付けることが研究を進める上で大事だと思います。

(左)卓上のPCでシミュレーションを製作中(右)ロボット本体の調整をしている様子。本体とは有線LANで通信を行います

ある日のスケジュール

在宅(左)と研究室(右)の一日の過ごし方(クリックして拡大)

高西研究室Webサイト:http://www.takanishi.mech.waseda.ac.jp/top/index.htm

スケジュールを工夫し、効率的に研究

大学院先進理工学研究科 修士課程 1年 皆川 真美圭(みながわ・まみか)

研究内容について

私は佐藤研究室に所属し、生命科学系の研究をしています。私たちの体を構成する細胞は、分裂を繰り返すことで増殖します。正しく分裂するために、細胞内ではさまざまなタンパク質が機能しています。チューブリンというタンパク質も、細胞の分裂に必須です。このタンパク質の働きを阻害すると、細胞は正しく分裂できずに死んでしまいます。これを利用して、カビやがん細胞などの増殖を抑えるために、チューブリンを標的とする薬剤が使われてきました。しかしながら、既存の薬剤は全ての菌に効くわけではなく、また、抗がん剤として使用すると副作用が重くなるなどの問題を抱えています。

そこで私は、より良いチューブリン標的薬を探索し、どのようにその薬剤がチューブリンに作用するかのメカニズムを明らかにすることを目指しています。

細胞の分裂時の染色体(細胞の遺伝情報)とチューブリンの関係。複数のチューブリンから作られる構造物により、染色体が分配されます

キャンパス閉鎖中の研究の進め方

実験の様子。細胞に薬剤を添加して、チューブリンへの影響を調べます

キャンパス閉鎖中は、PCRの操作や細胞の観察など、研究室での実験を行えなかったので、過去の実験結果を見直し、先生と議論することで、今後の研究方針を固めました。私の研究テーマは、先輩から引き継いだものなのですが、この期間を利用して先輩が取ったデータも含めて見直しました。議論の結果を踏まえながら、引き続き薬剤を探索していきます。

現在の研究室の体制

キャンパス閉鎖以降、ゼミやミーティングはオンラインで行われるようになりました。例年夏に実施している研究室合宿も、今年はオンラインで実施しました。

閉鎖が解除された後は、研究室のメンバーを午前実験組と午後実験組とに分け、人数を通常の50%にして活動することで密を避けています。机1台分空けて作業したり、隣り合った機械を使用しないように気を付けたりして、ソーシャルディスタンスを保っています。また、研究室の機械 (顕微鏡など)の予約方法を、紙への記入からオンラインに変更しました。自宅からの予約が可能になっただけでなく、他の人がどの機械を使うのか、ひと目で分かるようになりました。その結果、「隣り合った機械を使わない」という防疫対策を徹底できていると同時に、実験の予定を立てやすくなったのが良い点ですね。

(左)研究室の様子。隣の人と机1台分以上の間隔をとって実験をしています
(右)顕微鏡などの機械。防疫の観点から、隣り合った機械を使わないように心掛けています

現在の体制の良い点や工夫している点

研究室で活動できる時間が短くなったため、時間を無駄に使わないよう特に気を付けるようになりました。例えば、ある実験の待ち時間に別の実験を進められるようにスケジュールを組んだり、研究室にいる間はそこでしかできないことをやり、帰宅後に解析を進めたりしています。

ある日のスケジュール

午前実験組の日(左)と午後実験組の日(右)の過ごし方(クリックして拡大)

佐藤研究室Webサイト:http://www.sato.biomed.sci.waseda.ac.jp/

役割分担をして化石をクリーニング

国際教養学部 4年 浅井 淳(あさい・じゅん)

研究内容について

採集したサメの歯の化石を手のひらに載せて

私は平山研究室に所属し、岩手県久慈市や千葉県鋸南町への巡検(フィールドワーク)にて採集した、化石を含んでいる可能性のある岩や土壌のクリーニングなどを行っています。クリーニングとは、化石を傷付けないように少しずつ周囲を削っていく作業で、地道ながらも神経を使います。一見ただの土に見えるサンプルでも、クリーニングを行うことで思いもよらない化石が出ることもあり、楽しみながら作業をすることができます。

現在は、岩手県久慈市におけるワニの化石のサンプルをまとめ、総括しています。日々新たな発見があって面白いのですが、どうしても資料閲覧のために研究室に行かざるを得ないことも多いです。うまく現在の状況に合わせて作業を進めていきたいと考えています。

今年の研究の進め方

緊急事態宣言前のことになりますが、毎年行っている岩手県久慈市での巡検を敢行する必要がありました。合計20人程で土壌を運んだり石を割ったりする作業を行い、その際現場では常にマスクを着用し、作業をする者同士で2メートルの距離をとり広いスペースを確保するといった対策をとっていました。その甲斐(かい)あってか作業期間中体調を崩す者もおらず、多くのサンプルを採集することができました。

また、巡検以外は当番制で少人数での研究を行い、当番外の学生はオンラインを活用して研究を行っていました。そのため、クリーニング作業などの手作業をすることはできませんでしたが、代わりに平山先生が所有する標本や、学生が採集した標本の写真をオンライン会議やメールにて共有することで、知見を深めるという方針をとりました。

(左)岩手県久慈市での採掘作業の様子(右)協力して採掘を行った他大学の学生・教授陣と共に(前列右から4人目が筆者)

現在の研究室の体制

マスクをしてクリーニングを進めています

化石のクリーニングを行う際、研究室に集まって全員で作業をすることができないのは、効率面からいってもあまり良くなく、不自由に感じることも多々あります。しかし大人数で集まることの危険性も全員分かっているので、少ない人数で効率よく作業をするよう心掛けています。例えば、それぞれが得意な化石を中心にクリーニングを行うなど、役割を分担しています。

今後、コロナの影響を受けながらも研究を進めるために

私たちの研究室は実際に手を動かす作業が多いだけでなく、デリケートな標本を扱うため、オンライン上や在宅では活動しづらいです。また、作業のためには普段から広いスペースが必要なのですが、その上ソーシャルディスタンスを保とうとすると、大人数のため、非常に大きなスペースを確保しなければなりません。どうしても大学に集まらざるを得ないときには、現在コロナ禍で使われていない空き教室を活用して作業スペースを広くとることと、こまめな消毒をするという基本を徹底することが重要であると考えています。

ある日のスケジュール

アルバイトと両立しながら研究を進めています

【次回フォーカス予告】11月16日(月)公開「ラグビー早慶・早明戦特集」

 

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