Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

大学生の今だから考えたい性暴力 自分も相手も大切にするための性的同意

紛争下の性暴力根絶に尽力したデニ・ムクウェゲさんとナディア・ムラド・バセ・タハさんがノーベル平和賞を受賞し、世界中で性暴力に対する関心が高まっています。性暴力というとレイプをイメージしがちですが、セクシュアル・ハラスメントやSNSなどでの性的嫌がらせ、また、乗り気ではない交際相手との性行為も性暴力であることを知っていますか?

大学生になってパートナーができ、性行為を意識するようになった人もいるでしょう。一方、飲み会の場で性的言動を受け、傷付いたり相手を傷付けてしまうこともあるかもしれません。人を豊かにするはずの性において、「傷付いたり嫌な気持ちになったりするのは、お互いの同意がなかったから。大学生だからこそ、性暴力についてきちんと理解し、全ての性的行為には同意が大切であることを知ってほしい」と、性暴力やジェンダーの問題に取り組む「一般社団法人ちゃぶ台返し女子アクション」の学生メンバーが、この春、同世代に向けて『セクシュアル・コンセント(性的同意)ハンドブック』を制作しました。

ちゃぶ台返し女子アクションの活動に学生メンバーとして勉強会などに参加している校友(卒業生)の齋藤賢さん(2017年教育学部卒)と、早稲田大学内で活動を広めようとしている法学部3年の春藤優さんに、身近にある性暴力やセクシュアル・コンセント(性的同意)(※)の大切さについて聞きました。

※ セクシュアル・コンセント(性的同意)とは、性的行為への参加に対する積極的な意思表示を意味する。性的な行為においては、必ず互いの同意があることを確認し、意思を尊重しようという考え。

「セクシュアル・コンセント(性的同意)の大切さを広めることで、性によって傷付くことのない社会を作りたい」と願い、同じ思いを共有する大学生が中心となって制作したハンドブック。性暴力や性的同意について、イラストを交えて具体的に紹介している。ハンドブックに関する問い合わせは、同団体Webサイトhttp://chabujo.comの問い合わせフォームから

同意のない性的言動=性暴力! セクシュアル・コンセント(性的同意)は、思いを共有し、相手を尊重するセクシーな行為

「一般社団法人 ちゃぶ台返し女子アクション」 学生メンバー
東京大学大学院 学際情報学府 修士課程 2年 (2017年早稲田大学教育学部卒)
齋藤 賢(さいとう・けん)
 

専攻は理論社会学。現在の研究テーマは社会的システム理論で知られるニクラス・ルーマンを機能主義という観点から解明すること。ちゃぶ台返し女子アクションの学生メンバーとして活動する傍ら、この秋から東京大学で仲間と共にジェンダー平等を目指す活動「Tottoko Gender Movement」を始めた。詳細はFacebookとTwitterで「Tottoko Gender Movement」と検索を。連絡先 Email: [email protected]

大学における性差別や学生の意識を変えたい

私は教育学部4年の終わりごろ、友人が性暴力の被害に遭ったことから、性暴力が特別な環境下だけでなく身近にあることを認識し、実態などを調べ始めました。今在籍している東京大学は女子の割合が約20%と、男女比の差が大きく、男子学生が優遇されやすい状況です。しかし、性や性的同意について大学も学生も言及することはありません。一方で海外に目を向けると、欧米諸国では同意(consent)の概念が当たり前に理解され、オープンに議論される社会的土壌ができており、性犯罪の法律にも明記されています。例えば、米国ハーバード大学をはじめとする有名大学が学生に同意ワークショップを提供したり、英国のオックスフォード大学やロンドン大学・東洋アフリカ研究学院(SOAS)では、新入生に対する同意ワークショップを義務化しています。ちゃぶ台返し女子アクションの活動に参加する中で、東京大学の環境や学生の意識を変えたいと思い、東京大学で性的同意を広める団体をこの秋から始めました。

無知や認識不足が引き起こす性暴力

日本において性暴力が起こる背景として、性に対する意識の低さがあります。例えば、国際機関による評価も、日本におけるジェンダー間の不平等を示しています。世界経済フォーラムが2017年に発表した報告書では、日本のジェンダーギャップ指数は調査対象となった144カ国中114位でした。今年10月に発足した第4次安倍改造内閣では女性閣僚はたった1人になってしまい、政治分野におけるギャップはさらにひどくなっています。さらに、海外で大きな盛り上がりを見せた#Metoo運動も、日本では被害を受けた女性が逆にバッシングされる、いわゆるセカンドレイプが起こり、すぐに沈静化してしまいました。こうしたことから、日本社会は性の問題に関する無知や認識不足があるのだと考えられます。

性暴力被害は表面化しにくいため、実態が見えにくい点が問題です。早稲田大学や慶應義塾大学、そして東京大学など過去には多くの大学で事件が起きており、社会問題化しています。しかし、それは顕在化した一部に過ぎません。飲酒や交際の機会が増える大学生は、常に性暴力の危険に直面していると言えます。だからこそ正しい知識を持つことが大切なのです。

【データで見る性暴力】

■無理やり性交など(性交、肛門性交、口腔性交)をされた経験がある⇒4.9%(女性7.8%、男性1.5%)(※1)

■性的マイノリティ当事者のうち性暴力被害に遭った人⇒10.4%(※2)

■強制わいせつ、強姦(2017年7月より強制性交等罪)被害者のうち60%が13-24歳(※3)

■性的事件において警察に被害届を出した人の割合⇒18.5%(※4)

※1 内閣府男女共同参画局(平成29年度)「男女間における暴力に関する調査」

※2 世田谷区生活文化部人権・男女共同参画担当課(平成28年)「性的マイノリティ支援のための暮らしと意識に関する実態調査」

※3 法務省(平成27年)犯罪白書

※4 法務総合研究所(平成24年)「第4回犯罪被害実態(暗数)調査」

出典:『セクシュアル・コンセント(性的同意)ハンドブック』

性暴力は男性同士やパートナー間でもあり得る

体形や服装についてからかわれ、嫌な気持ちになったことはありませんか? 飲み会の場で「これから家に来ない?」などと執拗(しつよう)に迫られた経験はないでしょうか? 性暴力というと、レイプや強制わいせつを思い浮かべるかもしれません。しかし、SNSでの性的嫌がらせや痴漢、避妊具を使わない性行為やデートDVなど、身体接触の有無にかかわらず、相手が望まない性的言動は全て性暴力です。

性暴力は男性から女性に対してだけではなく、女性から男性、あるいは男性同士、女性同士などでもあり得ます。男性同士で言えば、友人や先輩などに風俗店に連れて行かれるのもその一つです。また、パートナー間であっても相手が気乗りしない、あるいは許容範囲を超えた性行為も性暴力です。自覚がなくても、誰もが被害者・加害者になる可能性があることを知ってほしいです。

性暴力を防ぐために必要なセクシュアル・コンセント(性的同意)

性暴力が起こる背景として、同意の軽視があります。そこで重要なのが「セクシュアル・コンセント(性的同意)」という概念です。性的行為には、お互いの積極的な意思表示が大事、ということですが、性的同意にはポイントが三つあります。一つ目は「非強制性」で、拒むと身の危険がある場合の「Yes」は同意とは言えません。二つ目は「対等性」で、社会的地位や力関係に左右されない対等な関係性の中での同意かどうかが大切になります。そして三つ目は「非継続性」です。キスと性行為は別の行為なので、その都度同意を確認する必要があります。また、今日同意したとしても翌日同意するとは限りません。お互いの気持ちを尊重するために、その都度きちんと声に出して確認することが重要です。また、同意はアクション(行為)を起こしたい側に取る責任があります。「これでいい?」「何かしてほしいことある?」など、誠意を持って意思を聞くことで相手に安心してもらうことができるのです。

出典:『セクシュアル・コンセント(性的同意)ハンドブック』

友人が性暴力の被害に遭いそうなときに取るべきアクション「3つのD」

泥酔した友人が先輩に「お持ち帰り」されそうになるなど、周囲の人が性暴力の危険にさらされていたら…そんなときは、第三者介入をすることで大切な友人を被害から守ることができ、また、加害者を出さずに済みます。そのためのアクションとして、「DIRECT(直接介入する)」「DISTRACT(気を逸らす)」「DELEGATE(委任する)」という「3つのD」があります。

出典:『セクシュアル・コンセント(性的同意)ハンドブック』

ここで大事なことは、自分も被害者になってはいけないということです。自分の安全を第一にしながら、間接的に性被害から守る手段があることを知ってほしいです。そして、もし被害に遭ったと相談されたら、被害者を責めるのはNGです。性暴力において、被害者は100%悪くないのです。一方で、悪気なく軽い気持ちでした言動が相手を傷付け、誰もがいとも簡単に加害者になってしまうかもれないことを分かってほしいと思います。

誰もが個性を発揮できる、生きやすい社会を作りたい

大学は社会の一部でしかありませんが、そこから学生が発信していくことで、よりよい社会を作ることにつながると私は信じています。そして、ゆくゆくは大学間で知識や教育を共有できるよう、情報をネットワーク化できたらと考えています。

性的同意の話をすると、「ベッドに入る前にいちいち同意を得るなんて煩わしい」といったリアクションを受けます。しかし、そう思うのは普段パートナーの気持ちをおろそかにしているからではないでしょうか。私は決して息苦しい社会にしたいわけではなく、反対に誰もが個性を発揮できる、生きやすい社会を作りたいと思っています。性的同意はお互いの思いを共有し、相手を尊重することです。セクシーな行為として、ポジティブに捉えてほしいと思っています。

7月の勉強会にて。後列左から3番目が齋藤さん、前列中央が春藤さん

コンドームを付けてもらえない性行為は性暴力 大学生に必要な知識を広めたい

ちゃぶ台返し女子アクション 学生メンバー
法学部 3年 春藤 優(しゅんどう・ゆう)

「11月に授業にお邪魔して、ハンドブックの配布と同意ワークショップを開催する予定です。一緒に活動してくれる仲間を募集中ですので、ぜひご連絡ください」連絡先:[email protected]

私は、HIV/AIDSや性感染症予防の啓蒙活動をする早稲田大学公認イベント企画サークルqoon(以下、qoon)に入っていて、早稲田キャンパスの大隈銅像前でコンドームを配布することがあります。すると、「一緒に使わない?」「あの子絶対ビッチ」などとからかわれ、セクハラを受けます。女子にも避妊具を持ってもらいたいと思っているのに「受け取ったら性行為に対して奔放というイメージを持たれるから…」と手に取ってもらえず、男子からはジョークとして扱われてしまいます。もっと性について真剣に考えてもらいたいと、もやもやしていました。

そんなときに、ちゃぶ台返し女子アクションの方と出会い、性的同意という言葉を知りました。また、性行為のときにコンドームを付けてもらえないのは性暴力なのだと分かりました。私たち早大生は入学時のオリエンテーションで、お酒やカルト宗教、マルチ商法に関連するトラブルに巻き込まれないためのビデオを見る機会がありますが、大学は性については何も教えてくれません。大学生になると、飲酒から性行為に持ち込む状況に遭遇することが増えます。でもそこに同意がなげれば、それは性暴力なんだ、という認識があったら、被害者、または加害者にならずに済むかもしれません。つまり、性暴力や性的同意の知識は、大学生の今だからこそ必要なのです。

私は、性的同意の考え方が広まれば「嫌よ嫌よも好きのうち」といった間違った考えが減り、性に対する認識不足が少しでも改善できるのではと思い、今年の4月からちゃぶ台返し女子アクションの学生メンバーとして活動しながら、早稲田大学で新サークル立ち上げに向けて動き始めました。11月9日(金)にGSセンターで「性的同意(セクシュアル・コンセント)について学ぼう!」というイベントを開催しますので、ぜひ参加してください。

大学は盛んに「ダイバーシティ」を叫んでいますが、男女の問題、フェミニズムの問題も忘れないでほしいと強く思っています。あらゆる「性」に基づく差別や偏見という意味で、フェミニズムの問題もセクシュアルマイノリティの問題も全てつながっています。今後、授業にお邪魔して、ハンドブックの配布と同意ワークショップの開催もする予定です。目下の活動のゴールは、入学時のオリエンテーションに性暴力に関する注意喚起を盛り込むことです。一緒に活動をしてくれる人を募集していますので、ご連絡ください。

改正刑法「強制性交罪」に足りない法的同意 学生はレイプドラッグに要注意

取材・文=小堀芙由子

【次回特集予告】10月29日(月)公開「セミナーハウス特集」

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