2025年9月30日(火)に2025年度スマートエスイーIoT/AIコース修了式および修了記念シンポジウムを早稲田大学小野記念講堂にて開催しました。
修了式では、今までオンラインのみで受講していた首都圏以外在住の修了生も会場に集まり、講師も交えて大いに盛り上がりました。また、修了記念シンポジウムでは、審査会で優秀な成績を収めた受賞者の登壇に加え、恒例のポスターセッションを実施。多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。
鷲崎教授の講演および最優秀賞受賞者による発表の動画をアーカイブ配信中です。是非ご覧ください。
修了式
祝辞
- 須賀 晃一 早稲田大学副総長
修了証書授与
- 総代 能城 冬馬
優秀賞授与
- 最優秀賞
小倉 暢
生成AIによる印刷画像処理システム向け学習データセットの生成 - 最優秀賞
藤田 晶子
製品騒音の擬音化とお困り解決補助サービスの提供 - 優秀賞
宮﨑 香穂
生成AIを用いた給餌行動の判定と給餌制御の実装 - 優秀賞
能城 冬馬
生成 AI を活用した、システム運用監視アドバイザー 〜開発段階からの運用性向上を目指した SRE 支援ツール〜 - 奨励賞
井関 茜
文化圏を考慮した衣服画像生成のためのデータ駆動型プロンプト自動チューニング - 奨励賞
樋口 智大
⾦型部品の切削加⼯における加⼯⽅向決定の⾃動化 - 奨励賞
今泉 雅明
音声で威嚇するAI防犯システムの提案 - 奨励賞
柏﨑 暁光
機械学習を活用した通信品質低下の要因把握手法の検討 - 奨励賞
谷坂 テイジ
ロボットでコネクタ挿入のための強化学習による位置合わせ - 奨励賞
松本 真
COBOLからPL/SQLへのコンバージョン自動化に向けた生成AIの活用と検証 - 奨励賞
神庭 弘樹
GQM+Strategies と ATAMを用いた現状システムのアーキテクチャ評価
修了証書授与
修了記念シンポジウム
講演
- 鷲崎 弘宜 早稲田大学教授・スマートエスイー事業責任者
- 最優秀賞
生成AIによる印刷画像処理システム向け学習データセットの生成
小倉 暢
キヤノン株式会社の小倉氏より、AIを用いた製品検査の精度向上に関する画期的なアプローチが紹介されました。
AIによる欠陥検出では、植物の繊維模様などAIが苦手な「困難画像」で精度が低下する課題がありました。この希少な困難画像を集める代わりに、生成AIでその特徴(特にテクスチャ)を忠実に再現した学習データを自動生成する手法を開発。この生成データを追加学習させた結果、欠陥検出の誤りを38%削減することに成功。加えて、従来は人手で行っていたデータ準備の工数も94%削減し、開発効率を大幅に改善されました。AIの弱点を、AI自身が生成したデータで補うという手法によって、モデルの性能と開発効率を同時に向上できることを実証された、大変価値の高い発表でした。
- 最優秀賞
製品騒音の擬音化とお困り解決補助サービスの提供
藤田 晶子
三菱電機株式会社の藤田氏は、家電製品の「異音」に関する顧客対応の品質向上と効率化を目的とした修了制作の研究成果を発表されました。
発表では、お客様からの「ガタガタ」といった主観的な騒音の表現を、客観的なデータに変換するAI補助サービスを開発されたことが紹介されました。本システムは、録音された騒音を「メルスペクトログラム」という音の指紋のような画像に変換し、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)で解析することで、発生音を「ガタガタ」といったオノマトペで特定する仕組みです。検証実験では97.4%という非常に高い精度を達成し、人間には聞き取りにくい微細な異音も正確に判別できることが確認できたとのことです。将来的には、この技術をチャットボットなどに応用し、より迅速で的確な顧客対応の実現を目指すとしており、顧客満足度の向上に大きく貢献しうる発表でした。
- 優秀賞
生成AIを用いた給餌行動の判定と給餌制御の実装
宮﨑 香穂
マルハニチロ株式会社宮崎氏は、水産養殖業の労働生産性向上を目指し、生成AIとIoTを活用した「自動給餌制御システム」の実装に関する修了制作の研究成果を発表されました。
本システムは、IoTによる給餌器の遠隔操作機能に加え、生成AIがカメラ映像から魚の行動を解析し「満腹」を判定して自動で給餌を停止する機能を持ち、これにより、餌の無駄を削減し、現場の省力化に貢献することを目指されています。開発段階では、複数枚の静止画をAIに解析させることで、満腹判定において高い精度を達成されました。一方、現場での検証では、カメラ性能や不安定な通信環境の影響で、リアルタイム制御の安定性に課題が残ったとのことです。今後は実用化に向けてこれらの課題を改善していくと締めくくられました。水産業が直面する課題解決に具体的に取り組まれた、大変有意義な発表でした。
三菱電機株式会社の能城氏は、生成AIを活用した「システム運用監視アドバイザー」の開発に関する修了制作の研究成果を発表されました。
本ツールは、開発が高速化・複雑化する現代において、SRE(Site Reliability Engineering)の考え方を現場に浸透させることを目指して開発されました。ユーザーがシステム情報を入力すると、専門書籍を知識ベースとしたRAGシステムが、その特性に応じた具体的な監視項目などを提案します。回答の質を高めるため、キーワード検索とベクトル検索を組み合わせたハイブリッド検索や、LLMに段階的な思考を促すプロンプト技術など、多くの工夫が凝らされている点が紹介されました。評価実験では、一般的な生成AIよりも具体的で実践的な回答が生成されることが確認できたとのことです。システム運用の属人化を防ぎ、品質向上に貢献する本ツールの有効性が示された、大変有意義な発表でした。
ポスターセッション
修了生のポスターは以下のリンクよりご覧ください。
IoT/AIコース 修了制作