2022年10月20日(木)に開催いたしました「寝た子を起こせ!今はじめる、オトナの性教育」についてご報告いたします。
本イベントは「WASEDA スポーツ・健康月間」の一環として、「性の多様性」「性感染症」「性的同意」「性と生殖に関する健康と権利(Sexual and Reproductive Health and Rights、略称:SRHR)」という4つのキーワードをもとに、ゲストとして大手前大学国際看護学部教授の藤井ひろみさんをお招きし、性に関する知識を正しいものにアップデートし、不安を解消することを目的としたトークイベントとして開催しました。
レクチャー
イベント前半では藤井さんによるレクチャーをおこないました。今までぼんやりとしか知らなかった性の多様性や、性感染症に関する正しい知識、そして性的同意や性・生殖に関する健康と権利について、スライドを用いつつ詳しくお話していただきました。学校教育ではオブラートに包まれてハッキリとしないことが多い性行為に関するお話も、性感染症や性的同意など様々な要素を交えつつお話いただきました。いわゆる「包み隠さない」お話でしたが、安心・安全に生きていくために誰もが知らなくてはならないことを知ることができた時間でした。
性の多様性
セックス(Sex)、ジェンダー(Gender)、セクシュアリティ(Sexuality)の用語解説に始まり、身体的性(Sex)、性的指向(Sexual Orientation)、性自認とその表現(Gender Identity & Expression)、性的特徴(Sexual Character)という性の要素についても丁寧にご説明いただきました。
届け出られた性別が女性で、性自認が女性であり性的指向はレズビアンの方と、届け出られた性別が男性で、性自認が女性であり性的指向はバイセクシャルの方のカップルなど、性自認や性的指向の関係性について具体的な例を挙げていただき、多様な性に接する機会が少ないと感じている参加者の方にとっても大変わかりやすかったのではないかと思います。
性と生殖に関する健康と権利(Sexual and Reproductive Health and Rights、略称:SRHR)
パッと見ただけでは何だか難しそうに思えるキーワードですが、こちらについてもわかりやすくご説明いただきました。SRHRの基本的な要素とは、
①自ら受胎を調節し抑制できる(不妊治療も含む)
②安全な妊娠と出産を享受できる
③新生児が健康を享受できる
④性感染症の恐れなく性的関係をもつことができる
の4つであり、これは誰もが当たり前に持っているべき権利である、ということでした。
妊娠・出産というと、子宮を持っている人のお話と思いがちですが、そもそも人は誰しも「生まれる」という出産を経験しているのだから、子宮を持っているか否かに関わらず、誰にとっても関係のあることなのだ、というお話はとても印象的でした。妊娠や中絶の仕組みについてもかなり専門的なお話まで伺うことができ、大変学びになる時間でした。
性感染症
SRHRに関連して、性感染症のお話もたくさん伺うことができました。性感染症の予防方法と避妊方法に始まり、梅毒などの性感染症の種類や、性感染症の推移、性感染症の影響等を細かくご説明いただきました。
一方が治療をしても、一方が未治療だと再感染をしてしまい、病原体をラリーのようにやり取りして感染を繰り返すことをピンポン感染と言うそうで、ピンポン感染を防ぐために、治療や検査はお互いに受ける必要がある、というお話が特に印象的でした。
加えてDV(ドメスティック・バイオレンス)のお話もあり、性行為は自分と相手の安全を守る責任を伴う、というお話は、性行為をする可能性のあるすべての人に知っておいてほしいことだと思いました。
性的同意
「性はコミュニケーション」というキーワードをもとに、様々な性的コミュニケーションの種類や名称の紹介にはじまり、子どもの性教育でも取り上げられているプライベートゾーンのことなどをご説明されたうえで、性的同意についてお話しいただきました。性的同意とは、
・セックスをするかしないか
・どのようにするか
・避妊するかどうか
・性感染症を予防するためにどのような方法をとるか
・そのためのお金は誰が出すか
・コストはどのように分担するか
について互いが同意すること、だそうです。改めて列挙してみると確認するべきことは多いのだな、としみじみ感じました。しかしこれも、自分と相手の安全を守る、という責任を果たすうえで、必要不可欠なことではないでしょうか。
質疑応答
イベント後半では質疑応答をおこない、参加者の方から寄せられた沢山の質問に対して、藤井さんからお答えいただきました。
個人情報保護の観点から、具体的な内容については紹介できませんが、普段は相談しづらい性の悩みについて、専門家として、そして性をもつ一人の人間として、藤井さんから率直な回答を頂戴しました。性に関する悩みを周囲に打ち明けづらいという人も多いと思いますが、「性の悩みを抱えているのは自分だけではないんだ」「一人の人間である限り、性の悩みを抱えることは当たり前のことなんだ」という安心も感じられました。
アンケート・参加者の声
当日は約170名の方にご参加いただき、イベント開催後に実施したアンケートでは満足度89%を記録しました。大変好意的なご感想やエールをいただき、スタッフ一同大変うれしく思っています。ご本人に掲載の許可をいただいているものの中からいくつかご紹介します。
時代とともに進展していく分野と思うので、また同じようなテーマでイベントが行われる際には拝聴してみたい。
自分の持っていた性に関する知識が専門家からの説明を通じて整理され今後の性に対する考えを構築する上で非常に勉強になりました。
質問にも丁寧に答えてくださって、とてもわかりやすかったです。また第二弾などがあるようだったら参加したいです。貴重な機会をありがとうございました。
もう少し長くても良いと感じました。
初めて聞くお話もあり、性教育の大切さを感じることができました。特に、性自認と性的指向のお話と望まない妊娠を防ぐというお話が聞けてよかったです。また、こんなに大切なことを学校で習わなかったのか…と性教育がいかに普及されていないかを実感しました。ありがとうございました。
セミナーに参加してとても満足しました。今までモヤモヤとしていた性、性行為に関するイメージがかなり払拭されたと感じます。
日本の性や生殖にかかわる制度、医療措置の現状を知った。医療現場からの視点があることで、困ったときにどうするべきかが明確になった
ジェンダー学の授業を大学で履修したが、性行為や性的同意についてもっと深く知りたいと思っていたので、今回の講演でそれらにまつわる知識を得られ、満足した。日本ではこのような機会は他にはなかなか無いので、こうした知見を共有できる場は大事だと思っ。
きょうの講演で聞いたことは、これまで知らなかったことが多く、一度の講演で多くの情報を得られて良かったです。考えるべきことが多いことがわかりました。早くに知って、考えを深められた方がよいので、学校で教えてもらえるよう、社会全体の認識が変わっていってほしいと思いました。
数年前に性の多様性についての講義を受講し学んでいたが、今回のイベントを通して新しく生まれた性に関する概念や用語を知ることができ、とても勉強になった。性感染症についてもう少し具体的に知りたいと思った。また、SRHRは妊娠出産できる身体を持った人だけがかかわる事なのではなく、すべての人がこの問題の当事者であることを初めて知り、この問題に対する自分の姿勢が変わったと思う。
まとめ
性に関する正しい知識を持っていないことで、パートナーや知人、そして自分自身を傷つけてしまうかもしれません。性の話題がタブー視されがちな日本ですが、「寝た子」のままでいないためにも、まずは「知る」ことから始めませんか。
今後も SJC では様々なイベントを行う予定です。皆様のご参加を心よりお待ちしております。