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Close Up 社会科学部教授 篠田徹さん

僕らは誰から生き方を教わったか

授業時間を2コマつなげて、戦後の日本映画を鑑賞。それを題材に学生と戦後民主主義のエートスを考える。早稲田の使命はポップカルチャーによる民主化という社会科学部の篠田徹教授にお話しをうかがいました。

社会科学部教授 篠田徹さん

toru_shinoda_eyecatch1959年東京生まれ

1981年早稲田大学文学部中国文学専修卒、1987年早稲田大学大学院政治学研究科博士課中退、同年北九州大学法学部助手、専任講師を経て、1990年早稲田大学社会科学部専任講師、1992年助教授、1997年より現職 専門:労働運動の世界史

主な著書:「世紀末の労働運動」岩波書店1989、「21世紀の仕事とは」早稲田講義録1995/12、「市民自立の政治戦略」朝日新聞社/共著、「政治改革宣言」亜紀書房/共著、「2025年日本の構想」岩波書店/共著2000など所属学会等:日本比較政治学会、日本行政学会ほか

元気な労働運動は生き方を教えてくれる

──ご自身の研究について、わかりやすくお話しください

ぼくは労働運動を研究しています。いま日本やヨーロッパでは労働運動がいきづまっていますが、アメリカ大陸だと合衆国やカナダ、ブラジル、アジアでは韓国、フィリピン、アフリカで南ア共和国といった国々では労働運動がとても元気です。ではどうして地域によって労働運動にこうした落差があるのか、それを歴史をさかのぼって考えるというのがいまのぼくのプロジェクトです。

もっとも労働運動といってもその中身は例え同じ国でも時代によってさまざまです。例えば日本でも労働運動は昔はもっと会社の外で、地域の人たちを巻き込みながら、いろいろな問題に関わり、組合員じゃない人にももっと身近な存在でした。元気な労働運動はみんなに人間いかに生きるべきかを教えてくれます.ひとはただ食べるために働くのではないこと、いろんな違いを越えてみんなと助け合う中で得られる喜びがあること、実際いまぼくらから上の世代はこういうモラルを戦後民主主義を体験することで教わりました。

多分「団塊の世代」から上の人たちは労働運動や学生運動から教わったでしょう。それより下の世代はそういうモラルを労働運動から受け継いだ映画や音楽、TVドラマやラジオの深夜放送から教わりました。また「学校」での民主主義の経験も大きかったでしょう。そしてこういうことを調べていく中で思い出したのが、こういう戦後民主主義のポピュラー・カルチャーを作ってきた労働組合やそれとつらなった社会党、マスコミやほかのメディア、そして公立学校の現場に早稲田出がとても多かったということです。つまり早稲田は戦後この社会で生きた人たちのフィーリングをつくってきたということになります。いってみれば政治の東大、経済の慶応に対して、文化の早稲田というポジショニングだったわけです。ぼくらにとってこのアイデンティティは大切でしょう。

デモクラティックなポピュラー・カルチャーの担い手を育てる

──そういう先生の研究はどういうふうに授業に生かされてますか。また学生の反応はどうですか。

こういうことは口でいってもなかなかわからないので、授業では当時の映画や音楽を使って雰囲気をつかんでもらうようにしています。この点、早稲田は図書館のビデオ・ライブラリーが充実してるので助かってます.一応ぼくは「労働映画」というジャンルだてをしているんですが、50年代から60年代はじめまでの日本映画には、労働運動がそのまま登場したりそれが「団結の文化」といった形で表現されている場面がたくさんありました。吉永小百合さんの「キューポラのある街」などはその典型です。その後映画作品では労働運動が登場することはなくなりますが、団結文化はかなり変形しながら描かれ続けます。

例えば山田洋次監督の作品ではそれが一貫したテーマだといえるでしょう。また70年代から80年代にかけてのTVドラマにもその前の時代に労働運動が代弁してきた「人の道」が映し出されています.とりわけ刑事ネタや探偵ネタに見られた「弱者の正義」はその典型でしょう。

授業ではこういう作品をみんなで観た後、ディスカッションの時間をもって学生同士感想を交換できるようにしています。そこで当然でてくるのがいまの時代との違和感です。ひとと交わることをためらいがちないまの世代にとって、これらの作品にでてくるひとたちはいわば宇宙人です。だから学生には、ではいつからどうやってそういう気持ちのギャップができてしまったのかをそれぞれ興味があるポップ・カルチャーのジャンル、例えば漫画や小説、ファッションや住宅様式なんかを素材に考えてもらってます。

学生はディスカッション好きですよ。みんな自分の意見をいうし、ひとの考えを聞きたがってます.いままで想像できなかった世界が自分が生まれるすぐ前まであったってことを知ってもらうこと、それがいまは肝心かなと思ってやってます。ただこれからはもう少しそういう時代の変化のメカニズムみたいなところを一緒に探りながら、それをしょうがないとあきらめちゃうんじゃなくて、大げさに言えば、どうしたらぼくら自身でもう1回歴史をつくることができるのかをみんなで考えたいですね。

だってこの学校のぼくらの先輩はたくさんそれに挑戦してきたじゃないですか。だからね世の中のあちこちで生きるよろこびをみんなで分かち合おうというムードをつくれるひと、やっぱりデモクラティックなポピュラー・カルチャーの担い手を育てることが早稲田でメシを食ってるものの務めじゃないかって思うんですよ。

インタビューを終えて

知らず知らず私たちは早稲田の先輩がつくったものを見聞きしながら大きくなった。私たちはこれから後に続く世代に何を伝えられるのだろうか。早稲田で学んだ意義をあらためてふと考えさせられた先生のお話しでした。

CAMPUS NOW 2001/2月号 p. 11

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