
理工学術院 Edgar Simo-Serra 専任講師
2018年11月28日、理工学術院のシモセラ・エドガー専任講師が、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」に選ばれました。
科学技術・学術政策研究所は2005年より、科学技術イノベーションの様々な分野において活躍した研究者を「ナイスステップな研究者」に選んでいます。過去にはノーベル賞を受賞した天野浩氏や山中伸弥氏らも選ばれています。今回は、活躍する研究者約600名の候補者から、最終的に11名が選ばれました。
以下の情報は、報道発表資料からの引用です。
選定業績
スマートインカ―、自動着色など深層学習を用いた画像処理技術の開発
選定理由
シモセラ氏は、AI(深層学習)を用いた画期的な画像処理技術を開発しています。様々な種類の複雑なラフスケッチに対して高精度かつリアルタイムの編集が可能となる技術(スマートインカ―)を開発しました。また、モノクロ画像を自動的にカラー画像に着色する技術では、100 年前の白黒写真をカラー写真として現代に蘇らせることができます。これらの成果は映画やテレビ、雑誌、ファッションなど様々な分野に活用できる汎用性の高いもので、画期的な成果といえます。また、シモセラ氏はスペインで学位を取得した後、2015 年に来日し、早稲田大学を拠点に国際的に活躍しておりその成果は様々なメディアにも取りあげられています。
画像技術は、我々にとって身近な技術であり、様々な分野で活用されています。シモセラ氏は、この画像を対象としたAI(深層学習)技術の応用による画期的な成果を多数開発しました。
ラフスケッチからペン入れができる技術(スマートインカ―)は、深層学習を応用したものであり、途切れた線を自然につなぎ、不要な線を効率的に消し、自動出力された線画を効果的に修正することができる機能を実現しています。この手法により、様々な種類の複雑なラフスケッチに対して高精度かつリアルタイムの編集が可能になります。
また、モノクロ画像を自動的にカラー画像に着色する技術は、深層学習を用いて白黒画像をカラー画像に自動変換する手法であり、画像の大域特徴と局所特徴を考慮した新たなネットワークモデルを用いることで、画像全体の構造を考慮した自然な色付けを行うことができます。これにより、100 年前の白黒写真をカラー写真として現代に蘇らせることができます。
これまでにも類似の機能を提供するアルゴリズムやシステムは存在していたものの、シモセラ氏の提案手法は人間が評価した場合の“自然さ”などの観点において高い精度を表現しています。さらに、同氏はこれらの技術のアルゴリズムを論文として発表するだけではなく、研究や教育目的としたデータセット整備や、ソフトウェアも提供するなど、優れた成果をオープンにしています。画像は我々にとって大変身近な存在であり、シモセラ氏の開発した画期的な画像技術は、映画やテレビ、雑誌、ファッションなど様々な分野での活用が期待されます。

図:モノクロ画像自動着色のイメージ