※2023年3月をもって終了しました。
中垣 隆雄 (創造理工学部教授)
今後、モビリティ用の動力源において、低炭素化・電動化が着実に進んでいくと考えられます。自動車用電動パワーシステム研究所では、次世代自動車の電動パワーソースに関係する3つの研究を進めています。
自動車電動パワーソース研究を中心に以下の3つを中心に実施します。
xEV,いわゆるHEV、PHEV、BEV、FCEVに搭載する電気化学デバイスには燃料電池や蓄電池などがあるが,いずれも車載用では出力密度の格段の向上が必要である。例えば,再生可能エネルギーで充電した蓄電池を動力源とするBEVには,出力密度の高いリチウムイオンバッテリーが用いられているが,次世代電池では全固体電池やリチウム空気電池が有望である。一方,低温作動の固体酸化物形燃料電池(SOFC)もFCEVのパワーソースとして研究されている。本研究所では、リチウム空気電池やSOFCの性能向上に関し,内部の電極構造に起因する輸送現象を実験と数値計算モデルにより解析し、過電圧分離やモデル化などを通して、物質移動の律速過程の緩和策について研究する。さらにその律速緩和を具現化すべく,3Dプリンタを用いたAM(Additive Manufacturing)によって,二相あるいは三相界面を最適化した理想的なμmオーダーの規則的な井桁構造の電極・電解質を有する電池を作製する低コストな方法を研究し,性能を確認していく。
再生可能エネルギーで充電した蓄電池を動力源とする電動車両(EV)や水電解による水素燃料電池自動車は次世代のパワーソースとして有望で徐々に置き換わっていくと見られるが,内燃機関からの変化の経路上には様々な社会的制約があり,Just Transitionが求められている。本研究所では政府の長期戦略に合致した今世紀後半に正味排出ゼロを目指しながらも,ガスや電力インフラなど社会資本の有効活用したエネルギーシステムの変化を定量的に予測し,シナリオプランニングを通してありうる移行経路と技術的選択肢について研究する。
例えばFCVに搭載するコンポーネントは、バッテリー、モーター、燃料電池など、コンベンショナルな内燃自動車と大きく異なる。それらを用いた電動車両で、急加速や登坂路などの高負荷、効率の悪化する渋滞路、寒冷地での冷間始動や炎天下での冷房需要を含むさまざまな走行モードにおける最適な制御の確立は極めて難しい課題である。当研究所では、複雑な輸送現象を連成させた電気化学デバイスのモデルを基に簡易化したモデルを構築して計算負荷を下げ,過渡を含めた走行状態を車両モデルで再現するとともに,実車の実験結果と突き合わせながらモデルベース開発の支援ツールの研究を実施していく。