ICC (Intercultural Communication Center)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

その他

ICCからの贈り物 (頼 伊汝)

pi131010-1先進理工学研究科 修士課程2年
頼 伊汝
ICC学生スタッフリーダー在職期間
2008年12月~2013年3月

「大学時代の経験は人の価値観に大きく影響する」 そう言っていた両親の言葉を昔の私は理解できていなかった。でも卒業しようとする今、ようやく分かってきたような気がする。

コミュニティを求めて

高校時代まで、私はひとつのコミュニティに長く所属した経験はなかった。人付き合いに苦手意識があったわけではないが、グループでどこかへ旅行に行ったり、みんなと一緒に学園祭の出し物に打ち込んだり、というタイプではなかった。集団行動の経験の少なさや先輩後輩関係への意識の低さのせいか、大学では思うようにサークルに馴染めず、心の底から楽しいとは感じられなかった。転機となったのは大学2年次、ICCの存在を知り、見学してみようと思ったことだった。ラウンジを訪れてみると、大勢の人が集まり、何かが始まるのを待っている様子。スタッフに聞いてみると、「チャイニーズ・フェスタ」という中国の文化を紹介する大規模企画の立ち上げの会だった。しかも、飛び入り参加もOKとのこと。私は中国出身なので、何か役に立てそうだ、と思った。なにより、たまたま行った日に企画に参加できる、というタイミングの良さに運命めいたものを感じた。その少し青くさい思い込みによって、迷わず「はい!参加します!」と即答した。私がいたグループは中国茶の紹介イベントを企画した。休日に横浜の中華街に出かけてお茶を探し、ファミレスで作戦会議という名の半分は井戸端会議を何度か繰り返した。そこで初めて、企画のおもしろさやチームワークの楽しさを知った。それはSSLになった後も変わらず、イベント終了後に感じる、苦楽をともにしてきたメンバーとの一体感が心地よかった。考え方が食い違うこともあったが、意見がぶつかり合う過程で、もともと他者は自分と価値観が違うものだと理解し、それは前提として受け入れられた。また、メンバー同士で信頼を築くためには時に忍耐も必要だ、といった集団で活動するときのマインドセットも学ぶことができた。

リーダー失格

pi131010-2もちろん、はじめからSSLの醍醐味を感じ取れるほどの余裕はなかった。SSLとは正式には「学生スタッフリーダー」であり、名称に「リーダー」という表現を冠しているように、当然ながらリーダーとしての意識の持ち方や行動の仕方が求められる。それはSSLになった当初、自分には持ち合わせていないものばかりだった。今でもよく覚えているのは初めて参加した大型企画「無国籍キャンプin沖縄」。沖縄という遠く東京を離れた非日常な場所で、しかも大人数のキャンプ企画。当然普段ICCオフィスで働く時以上の気配りや行動力が求められるが、私自身は「スタッフ」としての意識も、「リーダー」としての責任感もどこかに放り出してしまい、まるで一参加者のように沖縄の太陽を楽しんでしまった。例えば私はとある場所で参加者全員に入場チケットを渡す係だったのに、入り口を前にして「チケットはどこにあるんですか?」とのんきに尋ねている始末。そんな責任感に欠ける行動の連続だったから、同行していた大学職員の方はきっとあきれかえっていたに違いない。帰りの飛行機の中で職員の方からのそれまでの振る舞いに関するフィードバックを受け、ようやく自分の意識の低さに気づき、大きなショックを受けた。先頭に立って旗を振ることだけではなく、日ごろの小さな気遣いや規範となる行動の積み重ねもリーダーシップの大切な要素だと思うが、自分自身は、まったくその自覚に欠けていた。そこからは意識を入れ替え、どうすればスタッフの自覚を保ち、リーダーとしての振る舞いを身に着けられるのか?を自分なりに模索し始めた。その答えは周りのSSLの中に見つかった。すぐれたリーダーだと思える先輩SSLの一挙手一投足を観察し、「いつもどのように振舞っているのか」「なぜ周りから信頼されるのか」の鍵となる行動を見つけては自分にも取り入れた。最初は単なる見よう見まねでも、そのうちだんだんと「コツ」が分かるようになってくる。その多くは小さな行動の積み重ねだ。遅刻はしない、メールは毎日確認して必ず返信するといった基本的なことから、イベント時には会場を見渡して仕事に漏れがないか常に意識を張り巡らせるといったようなことまで、こつこつ小さな行動を積み重ねていった。それで突如評価がうなぎのぼり、とまではいかなかったが、失敗しながらもSSLとして少しずつ前へ前へと歩み始めた。

問題意識

pi131010-3大学2年の終わりから修士課程を卒業するまで4年以上もの間ICCに在籍し、多くのイベント企画を経験したが、幸運だったのは「Waseda Student Club Guide」という半年間の長期プロジェクトに携われたことだ。ICCには多数のイベント・プロジェクトがあるが、SSLにとって自分の問題意識を反映した企画案を立ち上げるのはそう簡単なことではない。例えば、それまで発案した「東証&日銀見学」や「日本伝統文化体験」といった比較的わかりやすい企画は、企画にかける「想い」の部分に乗り越えるべき課題はなく、「テーマがどれくらいキャッチーか」「先方から協力が得られるか」といった実務的な点にフォーカスをあてていた。つまりそれまでは、脳に汗をかきながらコンセプトを考えぬいた企画は私にはなかったのだ。それが「易々」とできる先輩に、初代SSLの施依依さんがいた。数々の看板企画を成功させてきた施さんは、自分の企画には常に強い想いを込めていた。人一倍熱い情熱を燃やし、ICCで勤務するシフト時間外でも常に企画のことが頭にあったと言う。「無国籍キャンプ」のようなコンセプチュアルで、その後ICCで受け継がれ、定番化した企画も、彼女の根底にある「想い」から生まれてきたものだ。自分の想いで周囲を動かし、巻き込んで、企画を成功させるその姿は、こういうアプローチもあるのだと強く実感させてくれた。だからこそ、私の中で「Waseda Student Club Guide」という企画が生まれたのだ。外国人学生と日本人学生が言葉の問題や日本の大学のサークル固有の文化を超えて交流できるように、実践的かつ啓蒙的な内容のガイドブック制作である。それは自分自身の問題意識に直結していた。ICCカウンターにはよく留学生が「サークルに入りたいんですが…」という問い合わせがあったが、アンケート調査を通して、希望人数に対して参加できた人数には明らかなギャップがあった。原因は違えどもサークルに馴染めなかった彼らの姿は、以前のサークルに馴染めなかった自分と重なった。いざ企画を始動させてみると、数々のチャレンジがあった。初めての長期プロジェクト、初めての取材や編集作業に、編集長としてのチームのとりまとめ・・・。至らない部分も多々あったし、チームメンバーや職員の方にも迷惑をかけた。ただ、それでもなんとか完成までこぎつけられたのは、自分の中でぶれない軸を持てていたからだと思う。そして何よりも、そうした学生の想いに応え、サポートを惜しまないICCの土壌のおかげだと思う。

最後に

pi131010-4ICCは、大学という可能性に満ち溢れた海の真ん中でただ漂っていた私にコンパスをくれた。リーダーシップのかけらもなかった私だが、ICCでの4年半を通して、自分で問題を設定し、他人と共働しながら目標にたどり着くためのマインドセットとスキルを学んだ。ICCでの経験のおかげで、自分がやりたいことやすべきことを考えられるようになり、就職活動のときには大きな指針となった。また、企画の過程で出会った人たちの様々な価値観に触れることで、意識は外に向くようになり、新しいことへの意欲や好奇心も増えた。大学入学前にはけっして想像もしていなかった自分の姿である。単純なきっかけから、これは運命だ、という思い込みで始まったICCの活動だったが、大学を卒業するまでずっと活動を続けることで、結果的にそれを「運命的な経験のできた場所」に替えることができたと思う。大学にあまたある活動の中でSSLに興味を少しでも持った方に対して伝えられるのは、ICCで働くことは大学時代のみならず、自分の将来を考える上でもきっと財産になるということだ。注いだ分だけのフィードバックはあるし、学ぶことの大きさは計りしれない。最後に、そう自信を持って言えるICCという組織を作り上げてきた職員、先輩SSL、そして後輩SSLたちに心より感謝を伝えたい。

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