Waseda University Intercultural Communication Center (ICC)早稲田大学 ICC(異文化交流センター)

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本当の「ダイバーシティ&インクルージョン」ってなに? 参加者レポート

 社会科学研究科 太田 冴

私が初めて社会に出たのは、2012年4月のことだ。早稲田大学法学部を卒業し、日系の金融機関に就職した。

私が初めて「ダイバーシティ」という言葉の難しさを実感したのも、ちょうどその頃だったと思う。「ダイバーシティ」は社会において当然のように尊重されているものだと信じ込んでいた私は、女性が望み通りの職に就くことの難しさを知って、愕然とした。総合職という幹部候補職制で採用される女性は全体の1割に満たず、多くの女子学生が地域型総合職や一般職として就職していった。これまで同じように教育を受けてきて、特別な性差なんて一度も感じたことがなかったのに、どうしてだろう?と素直に疑問に思い、そして就職という現実を目の前にして夢破れたり諦めたりする女性の友人を見るたびに、憤りを感じたのだった。

結果として私は総合職として就職することができたが、その時から今の今まで、生きていてジェンダーギャップを感じない日はほとんどなかったように思う。会社には女性の上司はほとんどいなかったし、女性総合職というだけで珍しがられたし、違う職制の女性と不必要に比べられ、自分を曲げなければ生きていけない瞬間がたくさんあった。(もちろん、女性以外のマイノリティ性を持つ多くの人も、似たような、いや、さらに大きな不条理を抱えてきたのだと思う)そんな違和感をどうにかして言葉にしたい。諦めたくない。解決したい。少しでも幸せに、自分を曲げることなく生きていける女性が多くなればいい。そんな思いで、社会人9年目の2020年4月、早稲田大学大学院社会科学研究科の門を叩いた。

私は現在、女性管理職の登用が促されている日本社会において、どうすれば単なる「数合わせ」ではなく、本当の意味で「インクルージョン」が達成される組織になれるのか、どうすれば女性管理職を含めた「ダイバーシティ&インクルージョン」が達成されるのか、を研究している。多様性が大事だ、という話はこれまでの人生で耳にタコができるほど聞いてきたのに、本当の意味で多様性が実現されている組織は、実はそう多くない。そう思うからこそ、多様性のもっと奥にある「インクルージョン」が重要だと思い、このトピックを選んだのだ。

そんな中参加した本セミナーで、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社取締役・人事総務本部長である島田さんは“Diversity is a number, Inclusion is a mindset.”という言葉を教えてくれた。数として存在するだけでは意味がない(もちろんゼロよりは良いけれど)。登用するだけでは意味がない(登用しないよりはマシだけれど)。それをどう「インクルージョン」にまでもっていって、本当の意味で組織として発展させていけばよいのか。まさにそのヒントになる言葉だった。

字数が足りなくてここに書き切れないほど島田さんの言葉は学びが多く、何よりその情熱に心があたたかくなり、コロナ禍の寂しさを忘れられる時間だった。あまりに大きなテーマを掲げた自分に諦めそうになっていたけれど、やっぱりダイバーシティもインクルージョンも、これからの社会で皆が幸せに生きていくために絶対に欠かせないものだ。そう改めて思わせて、奮い立たせてくださった島田由香さん、マインドフルネスをご教示くださったマリアパン・キールタナさん、福田友美さん、そして主催してくださったICCのスタッフの皆さんに感謝を申し上げます。島田さんが教えてくださった「1.01の365乗は37.8。1日にたった1ミリでも前に進めば、1年後には大きな変化になる」という言葉を胸に、牛歩戦術でこれからも地道に楽しく頑張りたいと思います。

CEN DIVERSITY HOTEL & CAFÉにて (Photo by Author)

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