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【開催報告】 AHEAD JAPAN CONFERENCE 2026 (第12回全国大会)

2026年9月1日・2日の2日間、AHEAD JAPAN CONFERENCE 2026(第12回全国大会)が、早稲田大学早稲田キャンパスの大隈記念講堂・3号館で開催されました。一般社団法人全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN)が主催し、早稲田大学が共催した本大会には定員に達する多くの方が参加し、障がい学生支援に関する実践、研究、最新動向を共有しました。

開会式

大会初日の開会式では、大会長を務めた秋葉丈志スチューデント・ダイバーシティ・センター長が開会のあいさつを行いました。創設者・大隈重信が障がいとともに歩んだ歴史に触れながら、早稲田大学の障がい学生支援の理念である「学びを支え、共に歩む(Learn Together, Live Together)」を紹介し、教育へのアクセス保障と、多様な学生を包摂する支援の重要性について述べました。

また、合理的配慮の法的義務化以降、支援ニーズが増加・多様化している現状や、インターセクショナリティ (交差する特性)への支援の必要性にも触れ、本大会が障がいのある学生の学びを支え、ともに歩むあり方について考えを深める場となることへの期待を示しました。

(大会長による開会あいさつ(大隈記念講堂))

 

分科会「合理的配慮義務化への組織的対応」

9月2日には、分科会「合理的配慮義務化への組織的対応-早稲田大学における支援体制の統合と運用改善に向けた試行錯誤のプロセス-」を開催しました。分科会のコーディネーターを、吉野智子アクセシビリティ支援センター障がい学生支援コーディネーターが務め、秋葉丈志スチューデント・ダイバーシティ・センター長、外奈緒美アクセシビリティ支援・学生相談担当課長、松野志穂アクセシビリティ支援センター職員が話題提供を行いました。指定討論者は高橋知音信州大学教授が務めました。

本分科会の前半では、2024年4月の改正障害者差別解消法施行による合理的配慮の義務化を受け、早稲田大学が取り組んできた支援体制の再構築について報告しました。主な内容は次のとおりです。

・障がい種別ごとに分かれていた支援体制を見直し、修学上の合理的配慮の調整機能をアクセシビリティ支援センターに一元化

・合理的配慮検討委員会の設置による組織的な意思決定体制の構築

・過去の支援実績や知見を整理し、部門間・担当者間で異なっていた考え方や文言をすり合わせるための内部的な取り組み

・Microsoft Forms、Power Automate、Adobe Acrobat Sign等を活用した申請・承認・文書作成等の業務フローのシステム化

・教職員向けQ&A集の作成やFD研修による学内啓発

後半の座談会では、整備された制度や仕組みという「表」の側面だけでなく、組織化やDX化を進める中で生じた課題、反省、葛藤といった「裏」の部分についても率直に共有しました。現在の体制が完成形ではなく、なお検討を要する部分があることを認識したうえで、一人ひとりの学生に向き合う姿勢を改めて確認しました。

そのための体制として、学生と支援者との個別の関係を大切にしながらも、組織として対応することの重要性が改めて確認されました。具体的には合理的配慮検討委員会や日々の打合せなどを通じて、特定の担当者や専門職だけが判断や対応を抱え込まない仕組みづくりを進めています。個人による「点」の対応ではなく、組織による「面」の対応を目指すことで、一人に負荷が集中することを防ぎ、支援を止めない体制づくりを意識してきました。

また、日々の検討には専門職だけでなく事務職も参加しており、多様な視点から支援について検討しています。合理的配慮の調整では、学生一人ひとりの状況を理解することに加え、学内の制度や運用、活用できる資源やその制約についても踏まえる必要があります。専門職と事務職がそれぞれの専門性や知見を持ち寄ることで、多角的な検討が可能となり、より厚みのある支援につながることが共有されました。

その後の指定討論では、学部・研究科等との連携や学生相談センターとの協働をテーマに、大学全体で障がい学生支援に取り組むための組織づくりについて議論が行われました。支援部門だけで対応するのではなく、それぞれの立場や専門性を尊重しながら、学内の部門間連携をどのように進めていくかについて意見交換が行われました。

また、質疑応答では全国の高等教育機関や関係機関の参加者の方から多くの質問や意見が寄せられました。それぞれの組織が異なる課題や制約の中で支援体制の構築に取り組んでいることが共有されるとともに、制度や仕組みだけに目を向けるのではなく、学生一人ひとりの学びを支えるという本質を見失わずに前進していくことの重要性が改めて確認されました。

さらに、障がい学生支援を取り巻く課題は一つの大学だけで解決できるものではなく、大学間や関係機関との連携を通じて知見や経験を共有しながら取り組んでいくことの重要性についても認識を深める機会となりました。

組織化やDX化をして、何を残すか

分科会全体を通じて議論の中心となったのは、効率化やシステム化を目的化しないことです。「何を削るか」から考えるのではなく、まず「何を残すか」を確認し、学生に真摯に向き合うことや、学生・教職員との対話を見失わないことの重要性を共有しました。日々の情報共有や早い段階でのケース検討など、課題が深刻化する前の対応を丁寧に行うことが、結果として事後対応の負担を減らし、支援の質と効率の両立につながるという視点も示されました。

合理的配慮の可否ではなく、困難の解消から考える

体制整備の一環として、過去の支援実績や知見を整理・蓄積する内部的な取り組みをしましたが、それを「提供できる合理的配慮のメニュー」として扱うものではないことを確認しました。合理的配慮は、過去の実績によりできるかできないかを判断することから始めるのではなく、学生が直面している困難を出発点として、対話を通じて個別具体的に検討するプロセスを大切にしています。

守秘義務と連携を、支援の目的から考える。

学生相談センター等との連携をめぐっては、守秘義務を守ること自体が目的になってはならないとの観点から、「誰のため、何のための守秘義務なのか」を問い直しつつ、学生に必要な支援を実現するために、どのような情報を、誰と、どのように共有することが適切かを継続して考える必要性が語られました。専門性や役割の違いを尊重しながら、学生を中心に据えた連携のあり方を模索していることも共有しました。

学びを支え、共に歩む。

学生と真摯に向き合い、対話を重ねていくこと。

試行錯誤を続ける

支援体制の整備は、完成形を目指して一直線に進むものではありません。学生のニーズ、学部・研究科等の状況、組織や人の変化に応じ、その時々に必要なことを考え、見直し続けるプロセスです。分科会では、うまくいかなかったことや反省、葛藤も含めて、すべてが試行錯誤の途中にあること、そして、プロセスを止めずに改善を続けることが重要であるとのメッセージを共有しました。

(分科会登壇メンバー(左から外、吉野、秋葉センター長、松野、高橋先生))

 

4件の実践発表

本学関係者は分科会に加え、ポスターセッションにおいて、学生交流、教職員研修、就労支援、キャリア支援に関する4件の実践発表を行い、早稲田大学における取り組みを全国の参加者と共有しました。

・「早稲田大学における学生主体の交流実践について」-学生とともに創る “居場所”-

粟井小枝、高柳絵美、吉野智子(アクセシビリティ支援センター)

・大学における合理的配慮の定着に向けた教職員研修の展開-早稲田大学の事例から-

齋藤真由子、小島未生、吉野智子(アクセシビリティ支援センター)

・自立・自走を見据えた早稲田大学アクセシビリティ支援センターの就労支援

井上みゆき、吉野智子(アクセシビリティ支援センター)

・私立大規模校における障がいのある学生に対するキャリア支援の現状と課題

工藤陽介、吉野智子(アクセシビリティ支援センター)、 樫木啓二(学生相談センター)、 篤田美穂(キャリアセンター)

 

おわりに

本大会を通じて、支援体制の統合や業務のシステム化といった取り組みだけでなく、その背景にある考え方や試行錯誤の過程を共有することができました。

アクセシビリティ支援センターでは、今の状態を完成したものと捉えることなく、学生や教職員との対話を重ねながら、一つひとつの声や困難に真摯に向き合い、試行錯誤と改善を続けていきたいと考えています。一方で、制度や仕組みが変わっても、変えてはいけないものがあります。それは「学生に真摯に向き合うこと」「対話を重ねること」です。何かに迷ったときには、何のため、誰のための仕組みなのかという本質に立ち返ることを大切にしたいです。

開催概要

大会名 AHEAD JAPAN CONFERENCE 2026(第12回全国大会)
日時 2026年9月1日(火)10:00~17:30
2026年9月2日(水)10:00~15:15
開催方法 対面開催
会場 早稲田大学 早稲田キャンパス 大隈記念講堂・3号館
主催・共催 主催:一般社団法人 全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN)
共催:早稲田大学
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