Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

縄文時代の文化社会の解明

分野：文化

以下の研究を展開する予定である。

① 2018年採択・科研費基盤研究(A)「縄文時代の氏族制社会成立に関する考古学と集団遺伝学の共同研究」の調査研究
縄文時代中期以降、後期、晩期に複雑化を見せる縄文社会の背景に、親族構造、社会組織、婚姻関係、出自制度の変革があったことが高橋の研究で推定されており、それを集団遺伝学、特にゲノム解析との文理融合による共同研究により解明を目指している。研究代表者の高橋は貝塚出土人骨のゲノム解析の調整(東京大学、聖マリアンナ医科大学、市原市教育委員会、千葉県埋蔵文化財センター等)や千葉県教育委員会との調整を行いつつ、遺跡・遺構・遺物の考古学的分析から、中期から後・晩期への社会変動の主要因が婚姻制度の崩壊に基づく親族構造(双系出自単系出自)の変化、氏族制(clan system)社会の出現であることを証明する段階にある。それに伴う社会の複雑化、階層化過程を描きだし、先祖祭祀の高揚を大型住居、異形台付き土器、動物形土製品などから論証し、その研究成果を雑誌論文やケンプリッジ大学、イーストアングリア大学、早稲田大学による国際シンポジウムを開催して公表してきた。 (URL: http://w3. waseda. jp/prj-jomonj idai/ )

②パプアニューギニアにおける民族考古学の調査研究
高橋は2004年以来、パプアニューギニアに未開社会に入って、課程的土器生産に関わる調査研究を毎年継続してきた。パプアニ ーギニア最東端部のイーストケープ地方を中心にワリ島、ノルマンビー島にまたがる調査研究をしている。親族構造や婚姻制度、出自制度などと土器型式の分布圏の成立要因、型式変化の要因について総合的調査を実施し、それらの間に大きな因果関係があることを実証してきた。ただ2018年に突発した現地での暴動事件のため、また2020年の新型コロナウイルスが現地において蔓延したため調査は中断しているが、研究成果は学界発表、雑誌論文などで公表している。2022年に正式報告書を刊行する。

③千葉市との受託研究による千葉市加曽利貝塚の測量・地中レーダー探査
千葉市と早稲田大学との受託研究に基づき、高橋は文学学術院考古学コースの調査として 2016年以来、毎年同貝塚の測量調査、地中レーダー探査を実施してきた。2020年の第5次調査により、加曽利北貝塚(縄文中期、直径140m )の環状構造をほぼ計測し終えた。2020 年度からは同貝塚の南貝塚を調査し始めた。南貝塚(縄文後期、直径250m )は土盛りを伴う貝塚で、両方の貝塚を併せると直径が400m近くに達する日本最大の貝塚である。2017 年に国の特別史跡に指定された。この方法は非破壊による調査であり、地中に埋蔵される貝層、遺構などを的確に把握するための調査である。調査の成果は『文研紀要』に毎年公表している。

④早稲田大学(會津八一記念博物館)収蔵「山内清男コレクション」の調査研究
2017年に遺族から早稲田大学に寄贈された「日本考古学の父」山内清男の研究資料の調査を実施した。資料の保存活用のために縄文土器の写真資料(乾板、フィルム等) 10万枚をスキャニングすることから開始し、現在おおよそ4万枚を画像処理した。これには大学院考古学コース学生をアルバイトとして雇用し、調査記録や自筆のメモ類、型式編年表など多数の貴重資料を画像処理している。縄文時代だけでなく、日本考古学の枠組みを構築した、日本最大の考古学者である山内清男の研究に結びつくもので、各方面から大きな関心が寄せられている。