『現代音楽劇における「愛」の表象―ハヤ・チェルノヴィンの《ハート・チェンバー》(2019)を例として―』北川千香子
発表要旨
古よりオペラの主題であり続けてきた「愛」というテーマは、21世紀の音楽劇においても重要な位置を占めている。それはどのように表象されているのだろうか。そしてその表象は現代社会における新たな愛のあり方への応答なのか、あるいは時代を超えた普遍的なものなのだろうか。本発表の目的は、イスラエル出身の作曲家ハヤ・チェルノヴィン(1957年生まれ)の音楽劇《ハート・チェンバー》(Heart Chamber)を例に取り上げ、これらの問いを検証することにある。彼女の4作目となるこの音楽劇は、ベルリン・ドイツ・オペラの委嘱作品として創作され、2019年に初演された。約85分の本作品に登場するのは、名のない男女二人と、彼らの「内なる声」を担う二人の歌手だけである。これといった出来事もないまま、見知らぬ二人が出会い、互いに惹かれ合い、葛藤したり離反したりするプロセスが全体をなしている。この一見ありふれた男女の愛のあり様が21世紀の音楽劇で主題化されることに、いかなる意義があるのだろうか。チェルノヴィン自身によるテキストおよび音楽の分析を通じて、本作品に描かれる愛の諸相を、社会文化学的な視角を交えながら考察する。
開催概要
- 日 時:2025年1月18日(土) 16:30~18:00
- 場 所:西早稲田キャンパス54号館204教室 およびZoom配信
- 発表者:北川千香子(慶應義塾大学准教授)
- 司会者:平林宣和
- 言 語:日本語
- 主 催:早稲田大学総合研究機構 オペラ/音楽劇研究所
参加申込方法
事前登録が必要です。参加希望者はできるだけ前日の1月17日(金)までに以下のURLから事前登録をしてください。
URL:
https://list-waseda-jp.zoom.us/meeting/register/tJMkduyorTkoHN2WC0AX3_yHnd51wriBi4RR
※Zoom自動登録制なので、主催者側からはズーム招待状をお送りしません。(なお飛び入り参加も可能です。)
※ご出席の際フルネームの表示をお願いします。発言時以外はミュートおよびビデオ・オフにしてください。スクリーンショット撮影、録音、録画等は厳にお控え願います。また司会者の指示にしたがってください。
問合せ先
オペラ/音楽劇研究所:https://prj-opera-mt.w.waseda.jp/
e-mail address: operaken-uketsuke[at]list.waseda.jp ([at] = @)
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<発表者プロフィール>

慶應義塾大学商学部准教授。広島大学、テュービンゲン大学、ウィーン大学でドイツ文学と演劇学を専攻。2009年から2013年まで、ドイツ学術交流会の給付留学生としてベルリン自由大学にて演劇学を専攻、同大学でPh.D.取得。博士論文は„Versuch über Kundry – Facetten einer Figur“(Peter Lang, 2015)として出版。専門領域は演出美学、特にワーグナー以降のオペラ/音楽劇研究。近年は現代音楽劇における沈黙、静寂、間など不在性の諸相にフォーカスしている。