早稲田大学次世代ジャーナリズム・メディア研究所/NHK放送文化研究所/報道実務家フォーラム 共催
次世代ジャーナリズム講座「もう待ったなし!気候変動をどう毎日のニュースにするか」
開催概要
日時:2025年4月26日(土) 午後3:10~4:30
会場:早稲田大学 国際会議場・井深ホール
主催:報道実務家フォーラム・次世代ジャーナリズム講座
講師:オードレ・セルドン(フランステレビジョン気候変動報道責任者)
堅達京子(日本環境ジャーナリストの会 副会長
NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー)
司会:青木紀美子(NHK放送文化研究所 研究主幹)
プレゼン資料・動画配信申し込み先
https://forms.gle/Y3CffDZ8tZvAMeXx5
発表要旨
オードレ・セルドン氏はフランステレビジョンで気候変動報道を主導してきた経験にもとづき、気候変動の問題は、ときどき伝えるだけでは報道機関の責任が果たせないこと、また、あらゆるニュースの分野、あらゆる報道番組に気候変動の視点を取り入れて継続的に伝えることが必要であり、そのためには常日頃からの備えと科学者をはじめ気候変動の影響について知見を持つ専門家との連携が欠かせないことを強調した。また、視聴者から質問を募り、その疑問や関心事を出発点にすることで、ともすると遠く感じられる気候変動を身近に引き寄せ、科学的に意味があるだけでなく、わかりやすく面白い解説ができ、耳を傾けてもらうことにもつながるというフランステレビジョンでの実績を共有した。そのうえで、気候変動はいま直面する重大な問題であるだけでなく、興味深い掘り下げや展開ができるテーマであり、取材力を磨くものでもあると、気候変動の視点を持った取材に挑戦することを参加者によびかけた。
堅達京子氏も、世界経済フォーラムの「グローバルリスクリポート」が今後10年で最も深刻なリスクとなりうるとした上位4項目が異常気象や生物多様性の喪失など気候変動にかかわる問題であることなどを説明し、気候変動はどんなジャーナリストにとっても避けて通れない問題になっていることを強調した。また、ニュースに生かせる知識として、熱波などの異常気象の背景に気候変動の影響があることを科学的に分析する「イベント・アトリビューション」の研究が進んでいること、地域における再生可能エネルギーの導入が非常時の対策やコスト削減になるなど一石二鳥ともいえる事例が多いことを紹介し、気候変動への関心を高めるためにも身近な問題に関わる動きを入り口にした取材を試みるよう促した。
講師略歴
オードレ・セルドン:フランスの公共放送フランステレビジョン(France Télévisions)で2020年~2022年にオンラインニュースfranceinfoの編集長をつとめ、その後、気候科学者とジャーナリストの橋渡しをする非営利組織Expertises Climatの設立に参加。2023年にフランステレビジョンに戻り、毎日の天気予報を気象と気候の番組に見直し、部局横断的に気候変動の報道を主導する役割を担う。
堅達京子:気候変動やSDGsをテーマにNHKスペシャルなど多数の番組を20年近くにわたり取材・制作してきたプロデューサーで、日本環境ジャーナリストの会(JFEJ)の副会長を務める。2022年から毎年、NHKと民放の6局連動特番『1.5℃の約束 いますぐ動こう、気温上昇を止めるために』を企画し、気候変動への関心を高めるメディア連携を進める。『脱プラスチックへの挑戦』『脱炭素革命への挑戦』をNHK取材班と共著。
本講座について
早稲田大学次世代ジャーナリズム・メディア研究所とNHK放送文化研究所が共催。報道への信頼低下や読者・視聴者離れ、多様性欠如の表面化など、伝統メディアは今さまざまな危機に直面するなかで、海外の報道の現場で新たな挑戦をしている実践者やこれを支える研究者を招き、多様な試みの背景にある問題意識、実績や課題などについて話を聞き、交流する機会を設けている。