Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

講義に続いて「できるまで演習」で、着実に理解させる

2021年度春学期ティーチングアワード総長賞受賞
対象科目:信頼性工学
受賞者:立野 繁之

立野教授が担当する授業は、基本的にすべて6限目に設定されている。

その理由は次の授業がないために、何時まででも延長できるからだ。

講義の後に演習の時間を設け、正解するまで帰れないシステムで徹底した指導を行っている。

オンライン授業となった2021年度は、TAの協力を得てリアルタイム採点に対応した結果、

従来と変わらない学習効果を得られたという。

授業の後半半分は演習にあてる

北九州キャンパスの情報生産システム研究科に設置されているこの授業は、履修生の大半が主に中国からの留学生だ。日本語と英語のハイブリッド対応が基本となっており、資料も口頭の説明も、ほぼすべて両方の言語で提供している。

「基本的に落第はさせたくない」という思いから、非常に簡単な例題を用いるなど、説明のレベル自体は、かなり低い層に合わせているという。「概念の話についてはあまり専門的ではない言葉を選ぶようにしています。『信頼性』なら『ものの壊れにくさ』のような感じですね」。教員も学生も英語ネイティブではないことから、難解な英語を使うと分かりにくくなるというのも、なるべく一般的な単語でシンプルに説明するよう心がけた一因だ。

授業は前半45分ほどでレクチャーをした後、後半はたっぷり時間をとって演習を行う。基本的には計算問題で、正解できた学生から帰ってよいこととし、できない学生はできるまでリトライしなければならない。「最初のガイダンスのときにも、授業の終了時刻はエンドレスだとはっきり伝えています」。

今回はリアルタイム接続のオンライン授業として実施されたため、演習の採点はTAに協力を仰いだ。Moodleから入力された解答を即座にTAが採点し、間違っている場合はその旨を伝えてやり直させる。TAは自身の研究室に所属する博士課程の学生に依頼し、キャンパス内の研究室で対応している様子を、教員がチェックした。「20名ちょっとの履修生が一人ひとりランダムにアップロードしてくるので、TAはひたすら採点し続ける状況となりましたが、がんばって対応してくれました」。

演習に正解しないと授業が終わらないこともあって、特に予習を要求していないにも関わらず、学生は早めに資料をダウンロードし例題を解いてみるなど、準備をして臨んでいるようだった。

分からない点などはTAが演習時間中にチャットで対応することもあるが、時間的な余裕もあまりないため、次回の講義の冒頭で、教員から全体に対してのフィードバックを行っている。「解き方の解説のほか、ありがちな間違いも含めて、解説をしています」。

計算結果だけでなく、総合的に考え判断することも学んでほしい

同研究科は学部生がいないこともあり、情報系、機械系、化学系、さらには経済学系など出身学部はバラバラで、理解力にも差がある。学生同士での教え合いにも学習効果があると考えていることから、対面授業のときは早くできた学生ができない学生に教えることを奨励していた。「友人が多い学生はよいのですが、そうでない学生もいるので、『あの人の分も見てあげて』とこちらから他の学生に声をかけたこともありました」。

オンラインではそうした教え合いが難しいため、分からない学生をどうフォローするかが課題だった。結果的には、学生同士が自発的にウィーチャットなどスマホのアプリを使い、教え合っていたようだったという。「ただし、答えだけを簡単に共有してしまっては意味がないので、途中の式も書かせるようにしました」。

演習を重視しているのは、概念だけを説明しても分かりづらいため、自分の手で計算することを通して理解してもらうためだ。「一方で、計算は手段であって、目的は出てきた数字を何に使うかなので、そこをしっかり考えることも伝えています。たとえば、電卓で出てきた数字を何も考えずにそのまま書くのではなく、答えは何桁まで書くべきなのかを考えるというようなことです」。

「信頼性工学」とは装置やシステムの信頼性を計算して分析する学問だが、この授業を通じて学生に伝えたいのは、「モノづくりは、コストや寿命などいろいろな要素のバランスを考えるのが大事」ということだ。「計算で出した答えがベストとは限らず、何が大事なのかを自分で考えたうえで、最終的な結論を出す必要がある。それをわかってほしいのです」。

学んだ内容をすぐに演習で試すことに効果がある

加えて、「知識をつめこむよりも記憶に残ったほうが後々役に立つ」との考えもある。「この学問は、実務経験を積まないと講義の意義をつかみづらいところがあります。演習をたくさんやらせることによって、将来モノ作りの分野に進んだ学生が、『昔こういう計算を毎週毎週やったな』と記憶に残ればいいなと思っています」。

講義の直後にたっぷり演習を行うスタイルは、自分自身が学生時代に好きだった授業の手法を踏襲したものだ。「ちゃんと聞いていないと問題が解けなくなるので、聴講のモチベーションも上がります。演習で自分がちゃんと理解できたことを自覚できるのも、とてもうれしかったですね」。

この方法は、講義で習った内容をすぐに演習で試して自分の理解度が判断できる点が、非常に有効だと考えている。「オンラインでの演習対応はかなり大変でした。人数が多い場合はそれなりの人数のTAを用意して、学生番号でどの学生を担当するか決めてしまう必要があるでしょう。もしくは、グループ単位にしてアップロードする人数を制御するという手もありますね。この授業でも、来年度はグループ制にして、ZOOMのブレイクアウトルームで話し合ってもらって代表に解答させるような形を考えています」。

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