Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

グループ&クラス全体のディスカッションで事例を検討することで、その後の講義で理論を深く理解できる仕組み

2022年度春学期ティーチングアワード
総長賞受賞

対象科目:人材・組織(夜間主)

受賞者:竹内 規彦


大学院経営管理研究科の必修コア科目である「人材・組織(夜間主)」。授業では、組織行動と人材マネジメントを学ぶ。担当する竹内規彦教授は、6年前にも同じ科目でティーチングアワード総長賞を受賞している。当時から評価されていた数々の取り組みに加えて、2022年度には新たな試みも導入し、2022年度夏クォーターで再び総長賞を受賞した。学生たちが授業に積極的に参加し、理論を深く学ぶためのさまざまな工夫について聞いた。

ディスカッション⇒講義の順で学ぶことで、具体的なケースと結びつけて理論を理解できる

「人材・組織(夜間主)」を学ぶ学生は30~50代のビジネスパーソンが中心で、2022年度夏クォーターは22名が履修した。竹内教授は、「この科目は、人事や総務に限らず組織に属していれば誰にとっても関わりのあるテーマを取り上げています。そのため、学生が自分ごととして捉えやすく、学んだことを職場などで活かしやすいという特徴があります」と語る。

クォーター科目のため、授業は2コマ(90分×2)連続で行う。2コマの授業をどのように組み立てるか、そこに1つ目の工夫がある。竹内教授は、1コマ目をディスカッション、そしてディスカッションを受けて2コマ目で講義という構成にしている。ディスカッションの題材は、ハーバード・ビジネス・スクールを始めとするビジネススクールなどで使われているさまざまなケース(事例)だ。

まず理論を学んでからそれについて話し合うという考え方もあるが、この科目では先にディスカッションをすることに意味があるという竹内教授。「講義部分は専門用語や聞き慣れない言葉もあり、理論だけ聞いてもイメージしづらいし、頭に残りにくい可能性もあります。先に具体的なケースの課題や解決法などをディスカッションすることで、講義を聞いたときに『話し合った内容は、こういう理論で説明できるのか』とつながりやすく、高い学習効果が得られると考えています」。

議論をより深め参加意識を高めるために、2022年度からグループディスカッションを導入

ディスカッションは、学生たちが自分なりに考えてきた内容を活発に意見交換してこそ有意義なものになる。そのため、各回の授業の前には事前設問を用意し、設問への回答とその回のケース教材の精読を強く求めているという。しかし、事前設問への回答を提出させることはない。ディスカッションをすれば、きちんと読んで考えてきたかどうかはすぐにわかるからだ。

この科目で扱うケース教材は、1回分がA4用紙20~30ページ程度とかなりボリュームがあるが、働きながらビジネススクールに通うという、もともとモチベーションの高い学生が揃っているため、全員しっかり準備して参加しているそうだ。「ただし、設問の回答を用意しておくだけでは不十分です。その内容をディスカッションの場で発言して学生同士で共有し、意見交換できる水準まで準備してくることが事前準備だと思います」。

「ディスカッション⇒講義」という流れは以前から変わらないが、2022年度の授業では新たな試みを導入した。クラス全体でディスカッションをする前に、4~5名のグループでディスカッションをすることにしたのだ。「ここ何年かで、複数の学生から『グループディスカッションがあればもっと議論が深まるのではないか』と言われて、だったら一度やってみようと思ったのがきっかけです」。

グループディスカッションを25~30分ほど実施して、その後、クラス全体で話し合うことにした。全体でのディスカッションでは、まず各グループの意見を集約して取りまとめ役が話し、それ以外の意見があれば個人として発表してもらうようにしたという。グループディスカッションの導入で、これまで以上に参加意識が高まり活発に意見が出るようになったと竹内教授。「4~5人のグループでは、発言しないわけにはいかないからです。現時点では、グループディスカッションを取り入れてよかったと考えています」。

成績評価の50%は平常点で、「発言」も評価の対象とすることで活発な議論を促す

「人材・組織(夜間主)」ではテストは実施せず、成績は「平常点」と「レポート」を各50%で評価する。平常点については、出席点のほか授業への貢献度、言い換えるとディスカッションでの積極的な発言やその内容などを見て加点するという。「ディスカッション中は、私とTA(ティーチング・アシスタント)が学生の発言内容をチェックしています」。

2022年度に導入したグループディスカッションに関しては、グループごとに話し合うため、すべての発言を竹内教授とTAで直接確認することは難しい。そこで、グループごとに「印象に残った」「気づきがあった」といった基準で選んだ発言を、個人名共に挙げてもらっている。このように、竹内教授やTAのチェック、そして学生からの他者評価で発言が選ばれた学生は、平常点が加算される。発言が成績評価の対象になることは、学生がディスカッションにより真剣に参加して議論が活発化するという効果も期待できるそうだ。

こうしたさまざまな授業の工夫が学生から支持されていることは、ティーチングアワードの学生授業アンケートの結果からもよくわかる。たとえば、「総合的に見てこの授業は有意義でしたか」と「この授業をよく理解できましたか」の2項目についていずれも6点満点中5.9点という高い評価を得ている。今後に関しては、2022年度に導入したグループディスカッションをしばらく続けていく考えだ。「ティーチングアワード総長賞という一定の評価もいただけたので、このやり方を続けていって、もし課題が見つかったらまたそのときに対応を考えたいと思っています」。

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