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水分補給、疲労軽減、運動後の回復のためのスポーツ飲料/Sports Drinks for Rehydration, Amelioration of Fatigue, and Recovery from Exertion

水分補給、疲労軽減、運動後の回復のためのスポーツ飲料/Sports Drinks for Rehydration, Amelioration of Fatigue, and Recovery from Exertion
Posted
Tue, 18 Aug 2026

概要/Abstract

 スポーツドリンクは、運動による発汗で体内から失われる水分や電解質を効率良く補給でき、エネルギー源となる糖質も含まれる飲料です。運動能力を高めるために代謝促進物質等を加えたり(エルゴジェニックエイド)、運動による筋損傷や炎症、疲労、免疫低下などの体調不良を予防し回復を早めるために機能性食品成分を加えた飲料もあります。 

 これまでの研究で分かっていたことResearch Background

 長時間の運動時には、多量の発汗により水分や電解質が喪失し、筋肉や肝臓ではグリコーゲンが減少し血糖値も低下するため運動できなくなります。そのため、水分のみならず電解質や糖分も補う必要がありますが、これらを速やかに補充する手段としてスポーツドリンクは有用です。1998年の村岡の総説によれば、「スポーツドリンクとは糖質と電解質を含む溶液である」と定義されましたが、その後、スポーツドリンクに関する定義は見られないまま、この四半世紀の間にさまざまな成分を含む飲料が登場し、さらに用途も多様化していることから定義づけが困難となってきました。しかし、スポーツドリンクを摂取する目的から考察すると「運動による脱水や疲労などの体調不良を予防し、運動能力を維持ないし向上させ、あるいは回復を早めるための飲料」と定義することができます。本論文では、スポーツドリンクの特長や有用性、問題点について先行文献を調査し、解説することにしました。 

 今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと/Findings 

 スポーツドリンクは、浸透圧(osmolality)の違いからアイソトニックisotonic:等張)飲料とハイポトニック(hypotonic:低張)飲料に大別されます。アイソトニック飲料は、浸透圧が血液などの細胞外液に近いため、水分・糖分・塩分がバランスよく吸収され、糖質が約4〜6%と比較的多く含まれるため運動中のエネルギー補給の観点から優れ市販されているスポーツドリンクの多くはアイソトニック飲料で。一方、ハイポトニック飲料は、ナトリウムや糖質の濃度が低めで細胞外液よりも低い浸透圧で、含有される糖質が2%前後であることから判別できます。運動による発汗で体液が失われている状況では、水分が腸管で素速く吸収されるため、特に運動中の水分補給に適します 

そのために新しく開発した手法/Methods developed

 運動を行うと筋活動で熱産生が起きますが、特に高温多湿環境下では発汗による熱の放散が追い付かないと体温が上昇し、運動パフォーマンスが低下し熱中症に至ることもあります。運動が高強度あるいは長時間になると血流の再分布により内臓が虚血となり、特に腸管の粘膜上皮が傷害されて腸内細菌が血中に侵入し敗血症となり、細菌毒素のエンドトキシンやサイトカイン等の炎症関連物質が血液循環を通じで全身に波及し(全身性炎症)、複数の臓器に機能障害をもたらします。

 骨格筋であれば脱力や痙攣、腎臓であれば急性腎不全や横紋筋融解症、脳では意識障害のように熱中症は多臓器不全を引き起こし死に至ることもある危険な疾患です。その予防のためには、冷却した飲料の摂取が脱水や体温上昇を防ぐ上でも効果的で、近年では身体冷却の新たな方法としてアイススラリー※2が注目されています。また、脱水の所見として口腔内の乾燥状態をチェックしますが、最近では口腔内の湿潤度で脱水を評価する装置も使用されており、その普及は脱水や熱中症の予防にも有用と考えられます。

研究の波及効果や社会的影響/Research implications to the society

 激しい運動やトレーニングは脱水や熱中症のみならず、筋損傷や内臓傷害、免疫低下、全身性炎症、酸化ストレス、疲労などの体調不良を引き起こすため、それらの予防や早期回復に寄与しうる機能性食品やスポーツ飲料の開発や評価に関する研究が進められています。例えば、前述のハイポトニック飲料は男性自転車選手での持久性運動で血中インターロイキン6(IL-6)の分泌抑制作用を認め、水分補給により運動時の炎症反応が軽減する可能性を示しました。さらに、女性の月経周期に着目した橋本らの研究では、黄体期の基礎体温が上昇するタイミングで暑熱環境下における運動負荷時に血中白血球数の上昇を認めましたが、ハイポトニック飲料の摂取でその上昇を抑制することができました。
 また、激しい運動を行うと乳酸、遊離脂肪酸やケトン体の血中濃度が上昇し血液の酸性化(アシドーシス)が生じますが、アルカリ性水は酸塩基平衡の緩衝能を高め、運動による代謝性アシドーシスを予防するのに有用と考えられ、これに腸管保護作用や免疫低下の予防作用があるグルタミンを組み合わせた検討が行われました。ボクシング練習後の唾液中のαアミラーゼ活性とテストステロン※1濃度が上昇し、両者には抗炎症作用もあるため相乗効果が発現されたものと考えられました。
 グルタミン以外にもロイシン、イソロイシン、バリンは分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid:BCAA)と総称されますが、骨格筋で代謝されエネルギー源にもなり、経口摂取の15分後には血中濃度が上昇する吸収性のよい必須アミノ酸です。実際にBCAA含有飲料は、運動誘発性筋損傷の予防や筋痛、疲労感の軽減にも有効であったと報告されています。さらに、BCAAを継続的に摂取すると、BCAAをエネルギー源として効率的に利用できるようになり、乳酸の産生を抑制し持久性運動能力も高まる可能性があります。最近、ケトン食やケトン体ドリンクが注目されているが、ケトン食を長期継続してケト適応を誘導することで、運動中に骨格筋がケトン体や脂質をエネルギー源として優先的に利用できるようになり、持久力の向上につながる可能性が検証されています。

今後の課題/Future issues

 スポーツドリンクの摂取には、飲みやすさや味も重要な側面です。スポーツの現場では甘味を嫌い茶類を摂取する人もいますが、茶にはカテキンなどの抗炎症作用や抗酸化作用のある成分が含まれ、運動能力にも影響するため、糖質を加えた飲料でアスリートの運動能力や全身性炎症、酸化ストレスに及ぼす影響が検討された結果、これらに影響は認められなかったものの運動後の血中リンパ球数やテストステロン濃度の低下を防ぐ効果が認められ、コンディショニングに有用と考えられました。なお、この研究で用いた緑茶には、カフェインが含まれていましたが、少なくとも自転車選手のスプリントパフォーマンスには影響が認められませんでした。運動パフォーマンスを高める物質をスポーツドリンクに添加するエルゴジェニックエイドの研究も行われていますが、カフェインなどドーピングに抵触する物質もあるため、使用に当たっては注意が必要です。

研究者のコメント/Researcher’s Comment

 スポーツドリンクは脱水や熱中症を予防するのみならず、運動能力を高めたり、筋損傷や内臓傷害、免疫低下、炎症反応や酸化ストレスを予防するのにも有用なものがありますが、飲料の組成や量、摂取タイミングなどの条件により効果に差が出る可能性もあるため、さらに効果を高めるための研究を進める必要があります。また、効果には個人差が大きいことから、運動前、運動中、回復期やトレーニング期別に応じたスポーツドリンクの最適化および個別化も課題として考えられます。

用語解説/Terminology

※1 テストステロンは骨格筋の同化のみならずオーバートレーニング症候群では低値を示すことも知られています。

※2 アイススラリーは細かな氷の粒が混じったシャーベット状の飲料であり、糖質、電解質などの補給も同時に行うことができます。

論文情報/Journal Information

雑誌名/Journal:Nutrients
執筆者名・所属機関名/Authors and Affiliated Organisation:Katsuhiko Suzuki, Faculty of Sport, Sciences, Waseda University
Publishment Date(Local Time):5月25日
Publishment Date(Japan Time):5月25日
(オンライン掲載/For online publication)
URL:https://www.mdpi.com/2072-6643/18/11/1687
DOI:https://doi.org/10.3390/nu18111687