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- 女性向けの余暇から都市の流行へ:中華民国期上海におけるバドミントンの普及
女性向けの余暇から都市の流行へ:中華民国期上海におけるバドミントンの普及
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- Tue, 28 Jul 2026
概要/Abstract
This article examines the gendered popularization of badminton in semicolonial and wartime Shanghai between 1912 and 1949. Drawing on newspapers and other primary archival sources, it traces how badminton moved from expatriate enclaves into Chinese urban society and became embedded in Republican-era civic and institutional contexts. Particular attention is given to the Flying Shuttles, a university-based Chinese team whose victories in the late 1930s promoted media recognition, institutional support, and the sport’s broader urban popularization. The article argues that women were visible from the beginning of this process, especially through mixed doubles and co-educational practices, which made male–female copresence in sport socially imaginable. Yet such inclusion remained limited by gendered routines and public conventions that often positioned women in auxiliary roles. By comparing Shanghai with British and settler-colonial badminton traditions, this study reveals how badminton became a contested space for negotiating gender, propriety, nationalism, and modernity in modern China.
上海のバドミントンは外国人居留地から中国社会へ広がりました。本研究では、1930年代後半の学生団体の活躍を契機に、同競技が都市的な大衆スポーツへ転化し、その過程で女性参加と混合スポーツの意味が再編されたことを明らかにしました。
図1 学生団体「飛梭隊」
これまでの研究で分かっていたこと/Research Background
これまでの近代中国スポーツ史研究では、西洋スポーツが租界※1を通じて中国に導入され、その後、学校教育や都市文化の中で受容されたことが指摘されてきました。また、近代中国における「新女性」※2や女子スポーツは、身体、近代性、ジェンダー規範の変化を考える上で重要な対象とされてきました。しかし、従来の研究は主に「男性スポーツ」または「女子スポーツ」を個別に扱う傾向があり、男女が同じ競技空間に参加する混合スポーツ※3の歴史的意味については十分に検討されてきませんでした。特に、バドミントンが上海においてどのように外国人社会から中国社会へ広がり、ミックスダブルスを通じて、男女の共同参画がどのように形成・再編されたのかは、まだ明らかにされていませんでした。
今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと/Findings
本研究では、1912年から1949年までの上海におけるバドミントンの発展過程を、中国語・英語新聞などの一次史料に基づいて体系的に再構成しました。特に、1930年代後半に大学生を中心として結成された中国人チーム「飛梭隊」の活躍が、バドミントンを都市的な大衆スポーツへと転化させる重要な契機であったことを明らかにしました。また、同競技は男女が共に参加できる近代的で進歩的なスポーツとして表象された一方で、実際には女性が補助的役割に置かれる場面も多く、平等の象徴とジェンダー秩序の維持が併存していたことを示しました。
そのために新しく開発した手法/Methods developed
本研究では、断片的に残された多数の新聞記事、試合記録、学校・団体に関する史料を収集し、それらを時系列的に整理することで、上海におけるバドミントン普及の全体像を復元しました。さらに、上海の事例をイギリスおよびニュージーランドにおけるバドミントンの発展と比較することで、半植民地中国における西洋スポーツの受容とローカル化の特徴を分析しました。加えて、スポーツ史、ジェンダー史、都市社会史を横断的に結びつけることで、スポーツの普及過程を単なるスポーツの発展史ではなく、近代中国社会におけるジェンダー、階級、ナショナリズムの交錯として捉える分析方法を用いました。
研究の波及効果や社会的影響/Research implications to the society
本研究は、これまで十分に研究されてこなかったバドミントンの歴史を明らかにすることで、中国スポーツ史および女子スポーツ史の研究領域を広げるものです。また、上海の事例を通じて、西洋スポーツが単に輸入されたのではなく、植民地的規範、都市文化、学校教育、ナショナリズム、ジェンダー観念の中で再解釈され、地域社会に根づいていった過程を示しました。これにより、スポーツが社会の近代化や国民意識の形成、女性の身体表象と深く関わる文化的実践であったことを示し、現代社会におけるスポーツとジェンダー平等を考える上でも示唆を与える研究となります。
今後の課題/Future issues
本研究は主に中国語・英語新聞に依拠しているため、都市エリート層や新聞に取り上げられやすい競技者の経験が中心となっています。今後は、学校記録、競技団体資料、写真、回想録などを用いて、一般参加者や女性選手の日常的な経験をより詳しく検討する必要があります。また、上海以外の都市との比較を通じて、中国におけるバドミントン普及と男女混合スポーツの展開をより広い視野から明らかにすることが課題です。
研究者のコメント/Researcher’s Comment
バドミントンが中国に入ってきたとき、イギリスのクラブ文化にあった階級意識や男女関係の考え方も一緒に持ち込まれたという点です。中国では、民族意識を背景にその階級性に対抗し、バドミントンを大衆的な都市スポーツへ広げていきました。しかし、男女関係については当初の特徴が残り、ミックスダブルスの役割分担などを通じて現在にもつながっています。この歴史は、今のバドミントン文化を理解する手がかりになると思います。
用語解説/Terminology
※1租界
中国の開港都市において、外国人がその居留地区の警察・行政権を掌握した組織および地域です。1845年、イギリスが上海に設けて以来、一時は8か国27か所に及んだが、第二次大戦中にすべて返還されました。一国が管轄する専管租界と複数国による共同租界ともありました。
※2 新女性
20世紀前半の中国でよく使われた言葉です。特に五四運動(1919年)以後、教育を受け、新しい考え方を持ち、社会に出ようとする女性を指す言葉として広まりました。ただし、これは単に「新しい女性」という意味ではなく、当時の人々が「女性はどう生きるべきか」をめぐって議論する中で作られたイメージでもありました。
※3 混合スポーツ
(mixed-gender sports)男女が同じ競技空間で一緒に参加するスポーツのことです。バドミントンのミックスダブルスのように、男性と女性がペアを組んで試合をする形式が代表的です。
論文情報/Journal Information
雑誌名/Journal:Frontiers in Sports and Active Living
論文名/Title:From feminine leisure to urban craze: the popularization of badminton in Republican Shanghai
執筆者名・所属機関名/Authors and Affiliated Organisation:
Zhuomiao Zhao1*, Chang Liu2 and Kohei Kawashima3
1Graduate School of Sport Sciences, Waseda University, Tokyo, Japan,
2Faculty of Physical Education, International Budo University, Chiba, Japan,
3Faculty of Sport Sciences, Waseda University, Tokyo, Japan
Publishment Date(Local Time):18 May 2026
Publishment Date(Japan Time):18 May 2026
(オンライン掲載/For online publication)
URL:https://www.frontiersin.org/journals/sports-and-active-living/articles/10.3389/fspor.2026.1717411/full
DOI: https://doi.org/10.3389/fspor.2026.1717411