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- リカバリーウェアが睡眠を安定させる可能性を実証― 脳波・深部体温・心拍変動を用いた客観的評価 ―
リカバリーウェアが睡眠を安定させる可能性を実証― 脳波・深部体温・心拍変動を用いた客観的評価 ―
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- Wed, 27 May 2026
概要
西多昌規・早稲田大学スポーツ科学学術院 教授の研究室は、遠赤外線(Far Infrared:FIR)を放射するリカバリーウェアが、睡眠中の体温調節や睡眠構造、自律神経活動に及ぼす影響について、複数の生理指標を同時に測定することで検証しました。その結果、リカバリーウェアの着用により、睡眠時間や睡眠効率を変化させることなく、入眠過程および睡眠中の深部体温動態や睡眠段階の構成に変化が認められました。本研究成果は、国際学術誌 Sensors に掲載されました。
これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)
睡眠の質は、脳機能だけでなく、体温調節や自律神経活動と密接に関連しています。特に、入眠に先立つ深部体温の低下や、睡眠中における安定した体温制御は、睡眠の維持や睡眠段階の安定に重要な役割を果たします。これまで、寝具や室温といった睡眠環境要因に関する研究は数多く行われてきましたが、皮膚に直接接触する「睡眠時の衣類」が睡眠生理に及ぼす影響については、客観的指標を用いた検証は限定的でした。
今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
- リカバリーウェア着用時、入眠過程において深部体温(鼓膜温)の低下が促進され、その低値が睡眠中を通して安定して維持された
- 総睡眠時間や睡眠効率は変化しない一方、REM睡眠の割合が増加し、睡眠構造の再配分が示唆された
- 脳波、深部体温、発汗量、心拍変動を同時に測定するウェアラブルセンサーを用いることで、主観評価に依らない客観的な生理評価を行った。
そのために新しく開発した手法
解析の結果、リカバリーウェア着用時には、入眠過程において深部体温の低下が促進され、その後の睡眠中も深部体温が相対的に低い状態で安定して推移することが確認されました。これに伴い、睡眠中盤では発汗量の低下が認められ、体温調節負荷が軽減された可能性が示されました。
また、総睡眠時間や睡眠効率に有意な変化はみられなかった一方で、REM睡眠の割合が増加しており、睡眠構造の分布に変化が生じていました。自律神経活動については、睡眠初期に一過性の調整反応が認められたものの、睡眠を妨げるような過度の交感神経活性化は確認されませんでした。
研究の波及効果や社会的影響
本研究では、健康な若年成人男性を対象に、遠赤外線を放射するリカバリーウェアと、外観や厚みが同等の対照ウェアを用いた無作為化二重盲検クロスオーバー試験を実施しました。被験者は一定の温湿度条件下で2晩の睡眠実験に参加し、それぞれ異なるウェアを着用しました。
睡眠中には、脳波による睡眠段階評価、鼓膜温による深部体温の連続測定、発汗量・皮膚温・皮膚湿度の測定、心拍変動による自律神経活動評価を、複数のウェアラブルセンサーを用いて同時に行いました。
今後の課題
一晩だけの効果の検証ですので、持続的な使用が睡眠、ひいては疲労軽減、パフォーマンス向上につながる因果関係を示す研究が求められると考えます。
研究者のコメント
早稲田OB・OGも広告塔にもなっている昨今話題のリカバリーウェアですが、巷では「高いだけで意味が無い」というネガティブな意見も聞かれます。睡眠に大きく関連する深部体温に着目した実験でしたが、リカバリーウェア着用の場合、驚くほど深夜の低体温(=睡眠、リカバリーに好ましい)が維持されました。持続的効果を検証したわけではないのですが、可能性・発展性は示せたつもりです。
用語解説
※1 リカバリーウェア
リカバリーウェアとは、休息時や睡眠時に着用することで、身体の回復を補助することを目的とした衣類である。遠赤外線素材や適度な着圧設計などにより、血流促進や筋疲労の軽減、睡眠環境の向上などが期待される。
※2 FIR
FIR(Far-Infrared Radiation:遠赤外線)は、人体や物体から自然に放射される波長の長い赤外線で、主に熱として作用する。繊維や素材に組み込むことで、体表の保温や血流促進などを通じ、筋疲労の回復や睡眠時のリカバリーを補助する可能性がある。
論文情報
雑誌名:Sensors
論文名:Physiological Effects of Far Infrared–Emitting Garments on Sleep, Thermoregulation, and Autonomic Function Assessed Using Wearable Sensors
執筆者名・所属機関名:Masaki Nishida1,2,* Taku Nishii1,2 Shutaro Suyama1,2 Sumi Youn1,2
1. Faculty of Sport Sciences, Waseda University, 2-579-15 Mikajima, Tokorozawa 359-1192, Japan
2. Sleep Research Institute, Waseda University, 513 Waseda-Tsurumakicho, Shinjuku, Tokyo 162-0041, Japan
Author to whom correspondence should be addressed. Masaki Nishida
Publishment Date(Local Time):14 January 2026
Publishment Date(Japan Time):14 January 2026
(オンライン掲載の場合/For online publication)
URL:https://doi.org/10.3390/s26020550
DOI:https://doi.org/10.3390/s26020550
研究助成(外部資金による助成を受けた研究実施の場合)
研究費名:共同研究費
研究課題名:リカバリースリープウェアが睡眠構造に与える影響についての生理学的研究
研究代表者名・所属機関名:西多昌規 早稲田大学スポーツ科学学術院 睡眠研究所
西多 昌規
研究者詳細 – 西多 昌規